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付録19B TBR第1次報告書(仮訳)
(2001年5月)
 
TBR調査報告書
 
理事会規則(EC)No.3286/94に基づく、韓国により維持され商業用船舶の取引に影響を及ぼしている商慣行による貿易障壁に関する調査手続き
 
提訴主体:欧州造船業協会(CESA)
 
概要
A. 序論
 2000年10月24日、CESAは理事会規則3286/94(貿易障壁規則(TBR))第3条及び第4条に基づき、韓国造船事業者が政府助成を供与され、WTO補助金及び相殺措置に関する協定(ASCM)第3条及び第5条に抵触しているとして、提訴した。欧州委員会は、TBR委員会を開催した後、同年12月2日に調査を開始した。
 
 欧州委員会は域内の製造者、韓国造船所、韓国金融機関、他の第三者(船舶仲介業者、船主)からの情報及びコメントを収集した。さらに、域内と韓国に調査訪問を行っている。
 
 提訴は、バルクキャリア、コンテナ船、オイルタンカー、プロダクト/ケミカルタンカー、旅客RoRoフェリー及び他の非貨物船(海洋構造物を含む)及びクルーズ船を含む商業用船舶の国際取引に関するものである。
 
 韓国政府の助成金による利益を得たと主張されている韓国造船事業者には、漢拏重工(現在の三湖重工)、大東造船、大宇重工(現在の大宇造船)、現代重工、現代尾浦、三星重工及び韓進重工が含まれている。
 
B. 申し立てられている慣行
−政府保有銀行又は政府系銀行による負債免除、出資転換、利子軽減及び韓国政府による特別な租税軽減措置
 銀行が効率的に、関連する企業の負債再建を計画したことが立証された。金融機関は、(i)自身の再建過程にあり、(ii)財政的に脆弱で、(iii)部分的に又は全体的に韓国政府に所有され、(iv)将来の流動性を本質的に韓国政府に依存している。このような状況の下、韓国の金融機関は企業再建プロセスヘの参加に関する決定を行わなければならなかった。企業再建プロセスは、金融危機管理に対する韓国政府の政策上の基本方針である。ワークアウト/リストラ合意が理論上「自発的」だとしても、韓国政府による金融危機対策のパッケージは銀行部門の(金融監督院の監督の下での)強制的な再建と組み合わせられており、銀行への魅力的な助成パッケージは事実上銀行にとって、枠組みへの参加を強いられるものである。
 
 3造船所(大宇、漢拏/三湖、大東1)は、韓国政府の下で操業している再建過程下の金融機関の支援により利益を受けていることが立証された。利益は、大宇:22億6千万ドル、三湖:15億ドル、大東4830万ドルと見積もられている。
 
 現代重工、現代尾浦、三星及び韓進にはこの企業再建プロセスにおいて助成が行われていない。
 
−租税措置
 大宇はワークアウトに関連した2つの租税措置により利益を得たことが立証された。この枠組みによる利益は、780億ウォンと見積もられている。
 
−政府保有の韓国輸出入銀行による前受金返還保証及び輸出信用金融
 韓国輸出入銀行及び造船所は、ローンやプレミアム料率、特にリスクプレミアム評価に関する情報の提供を拒否した。入手できる事実情報によれば、韓国政府は韓国輸出入銀行のスキームを通じ、禁止されている輸出補助金を韓国造船所に供与している。
 
C. 悪影響及び損害
 調査により、商業用船舶市場は世界市場であることが分かっている。従って、調査対象期間、すなわち、1997年から2000年11月までの間において、域内企業が域内市場において被った損害と第三国市場において被った悪影響は区別できない。
 
 証拠によれば、調査対象期間において、域内企業は、ASCM第5条(a)の損害の形、すなわち、著しい低船価販売、マーケットシェアにおける悪影響、設備稼働率、利益、販売価格、雇用、投資及びASCM第5条(c)の著しい害の形、すなわち、著しい低船価販売、船価下落、販売喪失により、ASCM第5条及びTBR第2条(3)、(4)に規定される悪影響を被っている。
 
 船種別では、コンテナ船、プロダクト/ケミカルタンカーにおいて、大きな損害及び著しい害があることが判明した。損害及び著しい害は、より小さい規模ではあるが、バルクキャリア、オイルタンカー及び旅客RoRoフェリーの分野においても存在し、他の船種では損害又は著しい害は見られなかった。最終的に、クルーズ船については、損害又は著しい害の恐れは立証されなかった。
 
D. 偶然の関連(Casual Link、因果関係Causationの誤りか?)
 上記によれば、韓国造船所による建造量及びシェアの本質的な拡大は、船価の著しい低下及び低船価での販売とともに、調査対象期間中において、域内企業が損害及び著しい害を被った時期と合致していると結論付けられる。悪影響を及ぼしたこどが判明した他の要素については、政府助成と域内企業が被った悪影響との間の関連の偶然性を破るものではなかった。
 
E. 欧州共同体の関心
 域内の造船事業者は、造船所への直接雇用又は下請け業者・部品供給者への間接雇用の面において経済活動の重要な分野を担っている。利用可能な情報によれば、韓国が助成行為を中止していれば、域内産業は少なくとも失ったマーケットシェアを回復し、利益を改善できるだとうということを予測することは合理的である。
 
F. 結論
 以上より、結論及び提案される措置は以下の通りとなる。
 
 利用可能な証拠から、韓国輸出入銀行のプログラムがASCM第1条に規定される補助金の供与を韓国造船事業者に対して行っているという結論が導かれる。
 
 さらに、調査の結果、韓国は企業再建を通じてASCM第1条に規定される補助金を以下の造船所に供与していたことが判明した。
 
―漢拏重工(現在の三湖重工)
―大東造船
―大宇重工(現在の大宇造船)
 
 大宇に対しては、租税措置を通じた政府助成も供与された。
 
 韓国輸出入銀行の助成は、それ自体でASCM第3条に規定される輸出を行っていることによるものであり、従って、第2条3により特定性が認められる。
 
 企業再建及び租税措置による政府助成はASCM第3条に規定される輸出を行っていることによるものであり、ASCM第2条3により、特定性が認められる。それらはいかなる場合でもASCM第2条1に規定される特定性を有している。
 
 政府助成が域内企業にASCM第5条に規定される悪影響を及ぼしている証拠があり、従って、相殺措置が可能である。
 
 欧州委員会は、さらなる情報、特に輸出補助金に関する情報を得るため、調査を継続する。
 
 欧州委員会は、政府助成の廃止又は悪影響の除去のため、早急に韓国当局にこの問題を追及する。この問題の解決が2〜3週間以内に友好的に達成できなければ、WTO紛争解決了解の枠組みによる手続きの開始、特に、ASCMの該当条文による追求が要求される。

1 大東からの手続きへの協力は得られなかった。しかしながら、大東が再建計画により利益を得たことについては証拠がある。







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