2.15 EUプレスリリース(2002年11月13日)
第6次造船市場報告書
本レポートは、EU産業閣僚理事会向けに作られた欧州委員会の第6次造船市場報告書である。概要は以下のとおり
序章
2002年9月30日までに2国間協議が成立しなかったため、欧州委員会(EC)は韓国の不公正慣行に関してWTO提訴と暫定造船助成の再開に踏み切った。11月末にWTO協議が予定されている。2002年の市場データは2003年第1四半期末まで待たねばならないことから、本報告書においては主要市場の2002年前半における展開のみを扱う。
市場分析
過去の過剰発注等で世界の造船市場は打撃を受け、2000年の新造ブームを経て、2002年には受注が激減している。特にクルーズ船受注の欠如でEUの手持工事量は急激に縮小し、2002年前半の受注率は2000年のピーク時と比較して6割減となり、1992年以来の最低レベル。EU造船所に対する発注も2000年と比較して77%ダウンしている。船価も2001年と比較して平均15%減となっている。
プロダクトタンカー部門は(エリカ号事件を受けて)EU規制によるリプレースのため安定した需要であり、コンテナ船部門では2000年、2001年の大量発注を受けて今後船腹量が更に増え、運賃低下が起こり、新造が手控えられる。クルーズ船部門では、9/11のテロの影響が残っており、船腹増強よりも旅客獲得が問題。大手クルーズ船社合併問題が長引いているのも新しい投資を手控える要因となる。石油タンカー部門では、運賃が低迷。また中東での軍事行動とテロ攻撃が予想され、石油価格上昇、貨物需要の減少、パイプラインや代替エネルギー利用増加が懸念される。保険料高騰でコスト増となり、この状況下では新造投資は望めない。
一方、特定サイズのドライバルク船需要は増えている。LNG船部門は予測を大きく下回った。需要に対して2割から3割過剰な建造能力は問題として残り、船価低迷の原因となる。
船価の展開
2001年半ばからほぼ全船種に関して船価が約15%減となっている。3500TEU級コンテナ船の例が最悪で(2001年6月から2002年6月比で2割減)、大型バルクキャリア(17%減)、大型タンカー(15%減)と続く。高付加価値船も同様(LNG船9%減、小型コンテナ船9%減)。打撃を受けた部門は韓国が焦点を当てていた部門と一致する。1987年を100とする新造船価指数では、2001年の船価の一時的な回復が維持されず、船価が10年来の最低レベルとなっている。
市場展開への対応
欧州
EU造船所は、韓国の低船価に対抗不可能なため、付加価値船(客船、特殊・小型船舶)に焦点を当てたが、客船市場の停滞で独、伊、蘭、スウェーデン、ノルウェー、ポーランドでは造船所が破産し、デンマーク、独、フィンランド、蘭、英、ポーランドでは人員削減となった。研究開発の増強、製品・工程の改革、アウトソーシング、リストラ、船体調達などで競争力増強を図っているが、市場停滞で時間の余裕がなくなっている。
韓国
韓国は、需要減少にも拘らず同じ慣行を繰り返している。コスト増(労務費は6%増、原材料費は5%、インフレ率は8%、ウォンは対ドル8%高)にも拘らず低船価を提示して新市場に参入(ガスキャリア、オフショア関連、クルーズ船部門)を試む一方で、タンカー、コンテナ船の得意部門で新たな受注獲得を試みている。このため造船所の数社は破産に追い込まれかけている。政府も造船所も、建造能力削減は念頭にない。
日本
日本造船業は今、抜本的リストラに入っており、大手の合併が続いている。この結果、(特にバルクキャリア連続建造で)競争力を維持できるが、発注の5割は日本国内需要であり、外国造船所には入り込めない市場となっている。
中国
中国は低い労務費でコストを抑えているが、組織的問題、技術不足、引渡遅れなどに悩む。比較的単純な船種に関して市場シェアを伸ばし続けてきたが、上記問題が解決すれば、主要造船国の一員となることが可能。ただし過剰投資が懸念され、ECではOECD造船部会と国間協議の枠組み内で、過剰投資を避けるよう説得してゆく予定。
コスト調査
第1次・第2次報告書に示す方法で行ったコスト調査をアップデートした。受注から引渡までの間にコストが変化する場合があるため、常に微調整を加えている。第5次報告書提出後、新コスト調査が実施されている。韓国造船所はコストを割る低船価で受注し続けており、平均して受注船価とコストのギャップは18%となっている。
結論
2002年前半における受注停滞で世界の造船業は危機に陥っている。国内需要で日本のバルクキャリア受注だけが安定しているのみ。2000年と比較して世界的に受注は3分の2と減っているが、特にEUでは5分の4と落ち込んでいる。コンテナ船、クルーズ船部門が最も影響を受けているが、タンカー、LNG船も需要が減少。プロダクトタンカーとバルクキャリアのみ需要が安定している。欧州では造船所の破産や人員整理を余儀なくされている。船価は更に下がり、ここ十年で最低レベル。韓国造船所はコスト増に反して更に低船価を提示している。ECのコスト調査で、韓国造船所がコストを割る船価で受注されている事実が証明された。調査結果が示すように、コストと船価とのギャップは更に広がっている。
WTO助成および補償措置委員会
韓国からEUとその加盟国に対する助成補償措置(SCM)合意に基づく要請
以下の2002年12月6日付文書を韓国WTO代表団より受領した。
WTO韓国代表団は本国から、SCM合意に基づいて、EUとその加盟国に対して、EU造船業に対する助成制度に関する以下の質問状に対する回答を提供するよう要請するよう指示を受けた。2003年1月15日までにSCM合意に沿った回答を受領することを期待する。
1. |
EU域内の造船部門に対する助成枠組みに関する一般質問
EU閣僚理事会規則(EC)No1540/98、EC1540/98、No1177/2002に沿って助成が行なわれているのか?(規則違反に該当する特別助成例があるのでは?) |
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2. |
EU域内助成例に関する質問(1998年から2002年12月現在までの全事例提供要請) |
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a) |
助成カテゴリーの明確化(中央政府、連邦政府、地方政府、地方自治体を問わず) |
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b) |
法的条件規定(助成対象条件、助成認可・供与手順) |
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c) |
運営助成(助成金、公債、債務保証、公債注入、優遇税制、認可機関、対象船舶・造船所、助成総額と船舶引渡し価格の比率、年度別・加盟国別の助成総額、EU内外船主別船舶数) |
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d) |
リストラ・閉鎖助成(助成形式、助成額、助成供与条件、認可機関、対象造船所、船型、CGT、リストラ助成のリストラ計画詳細、年度別・国別の助成総額) |
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e) |
株主所有権注入(投資・助成対象造船所、認可機関、助成総額、認可決定方法詳細、政府により確保された民間セクターからの投資に関する状況詳細、合意書など) |
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f) |
輸出信用保証(短期公債、長期公債、債務保証、輸出信用保証に関する詳細) |
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g) |
優遇税制(優遇税制の詳細、対象会社使用のサンプル税額計算方法、優遇税制効果、関連税制条件・規定、納税延期の場合は当該加盟国の平均短期金利) |
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h) |
その他関連事項(船型別・国別のEU造船所総売上高、国別・造船所別・船型別実績建造高CGT、今後3年間におけるEU域内造船所生産制限計画) |
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i) |
特別助成の統計データ(MTW−Schiffswert造船所、Volkswerft造船所、Bremer Vulkan Marine Schiffbau社、独KG制度、伊特別税制、Appledore造船所、Chantiers de 1'Atlantique造船所、IZAR造船グループ創立、Hellenic造船所、Meyer Werftほか) |
WTO助成および補償措置委員会
EUから韓国に対する助成補償措置(SCM)合意に基づく要請の回答
以下の2003年2月14日付文書を欧州連合WTO代表団より受領した。
EUは、韓国からの質問状に対し、限られた時間内で可能な限り情報を収集し、以下に回答を提供するが、企業秘密は除外されている。
3. |
EU域内の造船部門に対する助成枠組みに関する一般質問 回答:EU閣僚理事会規則(EC)No1540/98、EC1540/98、No1177/2002に沿って助成が行なわれている。 |
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4. |
EU域内助成例に関する質問(1998年から2002年12月現在までの全事例提供要請) |
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a) |
助成カテゴリーの明確化とb)法的条件規定は以下を参照のこと。 |
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c) |
運営助成23件(参照EU文書の詳細を併記) |
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d) |
リストラ助成2件・閉鎖助成4件(参照EU文書の詳細を併記)地方投資助成13件、研究開発助成6件、開発助成22件(参照EU文書の詳細を併記) |
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e) |
株主所有権注入(株主所有権に関しては、助成扱いされているため、上記参照) |
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f) |
輸出信用保証(これも助成扱いされているため、上記参照。OECD規定を遵守。) |
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g) |
優遇税制(これも助成扱いされているため、上記参照。) |
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h) |
その他関連事項 旧東独域内の生産制限は2005年末まで継続の可能性あり。スペイン商船造船では5造船所に関して制限が設定された。ギリシャHellenic造船所に関しては、2002年5月6日から10年間、生産制限が設定されている。 |
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i) |
特別助成の統計データ(全般的に上記参照。質問状の誤りに関してのみ、詳細な回答あり。Bremer Vulkan Marine社に関しては、EC条約92・93項ではなく、223項(1)(b)に該当。1999年発表の伊造船基金に関しては、現在まで融資保証を行っていない。1999年スペイン助成制度と2000年仏助成制度に関しては、運営助成以外は個別にECの認可が必要。Koninklijke Schelde Groepに関しては、商船造船助成が認可されず、その他の助成のみ供与。英SS Marketing Service社に関しては、公的資金17.6万ポンドの制限あり。以下、添付資料。) |
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