5 市場拡大のための方向性
タイにおける沿岸輸送サービスの拡大のための最も大きなビジネスチャンスは、南部及び西部地域間並びにバンコク及び東部地域間の貨物輸送である。同市場を、本章全体を通じた「目標市場」として検討する。
これらの地域間では、沿岸輸送航路は陸上路線よりも距離が短く、コスト面で沿岸輸送の方が有利である。さらに、積み替え時間というデメリットを縮小する(あるいは積み替え時間をゼロにする)ことも可能である。
運輸交通政策計画局の発行したデータによると、目標市場の貨物総量は年間約5,250万トンである。この貨物の流れは、北行きの貨物量は3,400万トンあり、南行きの総量(1,800万トン)を約90%超過しており、不均衡な状態となっている。
SEATECの社内データベースに基づいた目標市場内での貨物の流通に関するより詳細な分析によると、公表されている統計が示すよりも、バンコク地域は貨物の発送地及び発着地としてより重要であるということがわかる。表13のデータは、西部及び南部の県から(及び向け)の一般貨物トラック輸送の詳細調査に基づいている。このデータは全貨物の70%超の移動量が大バンコク地域3から(又は向け)であることがわかる。
3バンコク、サムットサコーン、サムットプラカーン、ナコンパトム、パトゥムターニー、ノンタブリと定義する。
これは、以下の3つの面で、沿岸輸送サービスにとって有利であるといえる。
海上輸送の輸送単位が陸上輸送よりもかなり大きいため、貨物の流通が狭い地峡のような地形に集中している方が広範囲に分散されている地形よりも海上輸送に適している。タイ南部の地形は細長い地峡になっているため、貨物路線の南の終点の地域内に貨物が集中することになる。また、航路の北の終点は、バンコク大都市圏の経済的重要性が非常に高いため、ここに貨物が集中している。
上記の点により、貨物の発着地点も港湾設備に近接することになる。海上輸送の大多数が補助的な陸上輸送を必要とする一方、海上距離の割合が陸上距離より大幅に多ければ、海上輸送のメリットも大きくなる。
チュンポーン南からのバンコク及び沿岸地域間の海上ルートは、陸上ルートと比較して距離が非常に短くなる。また、費用、輸送時間も短縮できるため、沿岸輸送の相対的な優位性は高い。
地域 |
着地別 |
発地別 |
南部(チュンポーンからナラティワート) |
2% |
2% |
ブラチュアッブキリカン、ペッチャブリー |
4% |
5% |
サムットソンクラーム、ラーチャブリー |
3% |
1% |
カンチャブリー、スファンブリー |
3% |
3% |
タイ北部 |
1% |
1% |
タイ北東部 |
1% |
2% |
ラヨン、チャンタブリー、トラート |
4% |
4% |
ナコーンナヨック、プラチーンブリ、スラカエウ |
0% |
0% |
チャチョエンサオ |
0% |
0% |
レムチャバン |
0% |
0% |
ロッブリー、サラブリー |
2% |
4% |
サムットサコーン |
17% |
6% |
ナコンパトム、ノンタブリー、パトゥムターニー |
7% |
7% |
サムットプラカーン |
4% |
2% |
バンコク−チャオプラヤー西岸 |
19% |
29% |
バンコク−チャオプラヤー東岸 |
19% |
31% |
クロンテイ |
13% |
3% |
|
しかしながら、同表はバンコクの重要性を幾分誇張している可能性もある。調査データの内訳は、レムチャバン港の輸送活動が比較的不活発であった1995年からのデータに基づいている。同港及び同港付近の工業地帯はその後の大きな成長を遂げており、経済活動の中心をある程度シフトした可能性はある。このことは、運輸交通政策計画局が報告したタイ東部、南部、西部間で輸送される大量の貨物が示唆している。
沿岸輸送サービスにシフトする可能性がある貨物総量の確実な推定値を算出するには、更なる調査及び本調査の範囲を大幅に超えた分析が必要である。
しかし、沿岸輸送貨物の潜在市場規模については、前回調査の「タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査」にて予備的な試算を行った。
その際の考察は、主要な目標市場の中から、6つの仮定海上航路をモデルとして行った。これらは、チュンポーン(プラチュアッブキリカンの南部を含む)、スラータニー及びソンクラーと、バシコク、レムチャバンを結ぶ航路である。これらの6路線は、新しい沿岸輸送サービスの主要な潜在市場をほぼカバーしていると考えられる。
沿岸輸送サービスの総市場を、まずバラ積み貨物市場と一般貨物市場の2つの市場に分類した。図5に記されたそれぞれの品目は下記の表14の様に2分類した。
(拡大画面:12KB) |
 |
商品 |
小項目 |
商品 |
小項目 |
米、とうもろこし、タピオカ |
バラ積み貨物 |
シーフード |
一般貨物 |
ココナツ及びココナツ製品 |
一般貨物 |
その他の農業製品 |
一般貨物 |
ヤシ及びヤシ製品 |
バラ積み貨物 |
加工食品及び飲料 |
一般貨物 |
ゴム |
一般貨物 |
一般貨物 |
一般貨物 |
木材及びゴムの木 |
一般貨物 |
鉱石、砂、砂利 |
バラ積み貨物 |
液体燃料 |
バラ積み貨物 |
その他の商品 |
一般貨物 |
肥料 |
バラ積み貨物 |
化学品 |
バラ積み貨物 |
セメントを含む建設資材 |
バラ積み貨物 |
金属製品 |
一般貨物 |
|
結果として、目標市場で現在道路輸送されている貨物の約22%がバラ積み貨物に分類され、78%が一般貨物に分類された。外洋航行用の引船とバージによる運航は、バラ積貨物については競争力があるとし、一方RO−RO船は一般貨物の輸送において主要な位置を占めることになると仮定した。
まず、総目標市場を上記の比率を使用してバラ積み貨物及び一般貨物に分類した。それぞれの海上輸送サービスの目標市場の規模を、表15に示される通り計算した。
サービス |
サービス目標市場 |
チュンポーン〜バンコク RO−RO船サービス |
西部県〜バンコク及びその周辺地域間の一般貨物の道路輸送の50% |
スラータニー〜バンコク RO−RO船サービス |
南部県〜バンコク及びその周辺地域間の一般貨物の道路輸送の50% |
ソンクラー〜バンコク RO−RO船サービス |
南部県〜バンコク及びその周辺地域間の一般貨物の道路輸送の50% |
チュンポーン〜東部沿岸地域 RO−RO船サービス |
西部県〜東部県間の一般貨物の道路輸送の50% |
スラータニー〜東部沿岸地域 RO−RO船サービス |
南部県〜東部県間の一般貨物の道路輸送の50% |
ソンクラー〜東部沿岸地域 RO−RO船サービス |
南部県〜東部県間の一般貨物の道路輸送の50% |
|
|