4 潜在的な新市場
タイは、長大な海岸線を有する国としては、例外的に道路輸送が貨物輸送を独占している。表6は、運輸通信省(MOTC)のデータによるものであるが、総貨物の約90%(トンベース)は現在道路で輸送されていることがわかる2。沿岸輸送は5%、内水路は4%であるのに対し、鉄道の占める割合は2%と極めて低い。航空貨物の占める割合は、量的には取るに足りない程度である。
2同データは積載トンで表されている。貨物輸送のモード別比率を測定するためによく使用されるトン・キロベースでは、道路輸送の平均輸送距離は通常他の手段よりも短いため、道路輸送の比率が低くなる。
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1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
道路 |
90.32% |
88.94% |
89.49% |
88.93% |
88.98% |
87.32% |
鉄道 |
1.80% |
1.89% |
1.83% |
1.78% |
2.10% |
2.01% |
内水路 |
3.17% |
4.07% |
3.82% |
4.30% |
3.93% |
5.54% |
沿岸輸送 |
4.70% |
5.10% |
4.85% |
4.98% |
4.98% |
5.12% |
航空 |
0.02% |
0.01% |
0.01% |
0.01% |
0.01% |
0.01% |
合計 |
100.00% |
100.00% |
100.00% |
100.00% |
100.00% |
100.00% |
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表6からは、近年の輸送手段割合における系統的な変化を考察することはできない。同期間中に変動があったが、それは不規則で、誤差による可能性もある。しかしながら、「輸送マスタープラン1999〜2006」は、より長期間でみた場合、道路輸送比率が増加していると言及している。
・道路輸送は、鉄道や水上輸送といった、よりエネルギー効率が良く安全で環境に優しい輸送手段と比較してかなりの増加が見られる。(MOTC,1999)
車両登録統計をみると、タイの国内貨物輸送における道路分野の独占状態が顕著であることがわかる。1991年から2000年間のタイにおけるトラック登録数は、1991年の30万台強から2000年の60万台強へと100%以上の割合で増加している。1997年のアジア経済危機により急速な成長は止まったが、これは一時的な現象にすぎないとみられる(図1参照)。
登録車両数の増加と共にトラックの平均サイズもわずかに大きくなっていることがわかる。図2は1996年に登録されたトラックと2000年に登録されたトラックのサイズの分布を比較している。2000年の分布線は常に1996年の分布線の右側を通っていることから、中間及び平均の車両サイズが増加していることがわかる。変化は大きくはないが、トラックサイズの平均値は、同期間中に5.7トンから約6.5トンヘと大きくなっている。
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トラックサイズの変化よりも重要な事は、指定車両積載限度の厳守の問題である。公式には、5車軸セミトレーラーは21トンまで運搬できるのに対し、10車輪トラックの積載荷重は13トンに限られている。しかし、本調査の過程で、調査員は幾度も粗織的な積載超過が行われているとの主張を聞いており、実際に積載超過を目撃したケースもあった。積載超過が日常行われていることによる経済的影響も多くの資料で指摘されている。トラック自体及び他の道路利用者の安全に対する影響以外に、道路保全に対しても膨大な影響がある。車軸当たりの積載量が設計上の基準を超過した場合、道路の損傷は一軸積載量の約4倍に増加する。従って、トラックの積載超過は運送料に反映されない非常に重大な外的費用を伴っている。これは輸送モード比率を大きく歪曲させる可能性がある。
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