日本財団 図書館


〈海技試験及び再教育機関としての機能〉
 首相府海運省の管轄の下、海技試験を年4回実施している。併せて、船員の再教育を年2回行うことにより昇進のための資格試験の受験教育及び船員の能力向上に寄与している。海技試験は78年STCW条約など国際海事基準を十分に満足させるものでなければならず、同海事学部は海技免状制度の改正に向けて新しい海技免状制度の起案作業を委託されている。
 
〈海事安全訓練センター〉
 同海事学部内に海事安全訓練センターを設立して以下の3つの訓練に関する業務を行い、資格証明の発給を行っている。
(1)Survival at Sea and Personal Safety
(2)Marine Fire Fighting Techniques
(3)Operation of Marine Survival Craft and Maritime General Safety
 
 UNDPの資金協力もあり管理棟、屋内プール、救命艇訓練設備等が完成している。また、消火訓練はTUZLAキャンパス地域の環境保全問題のため、別の場所で実施し、Marine Fire Fighting Techniquesの資格証書の発行はその他の資格証書と同様に同センターで行うこととなる。
 
〈短期大学の併設について〉
 船舶職員の需要に対し、船員教育施設はいまだ十分整備が進んでおらず、既存の3校だけではその需要を十分に満たすことができない。イスタンブール工科大学・海事学部の開設に加えて船舶職員の短期養成コースの設立が強く望まれており、1994年中に開校する予定で準備中というが、施設整備が間に合わず当分の間、同海事学部の施設を利用することになる。2年制短期大学で航海学科と機関学科を置き、卒業生はCLASS II航海士・機関士の海技免状が与えられる。
 卒業後三航士・三機士で1年、試験合格後二航士・二機士で1年乗船し、その後スクーリングと受験を1年間、さらに一航士・一機士で2年間乗船して船長・機関長の海技試験を受験することにより、乗船経験とスクーリングを繰り返し、併せて最短7年で船長・機関長に昇進出来る短期養成のモデルコースが設定されている。
 
〈教育設備及び機材〉
 旧Merchant Marine Academyの教育設備及び機材を引き継いでいるが、その整備は十分に達成されているとはいえず、国際基準を完全に満足させる教育訓練を実施するためには更なる教育設備及び機材の充実が図られなければならない。
 
 一方、JICAプロジェクト方式技術協力(PTTC)による機材の整備が2000年から開始され、Engine room simulatorは仮建屋で稼働中。Ship maneuvering simulator(SMS)の建屋はまもなく完成予定で、SMSは学生及び卒業生の希望者の訓練に使用する予定である。
 
〈教育設備及び機材の現状〉
a)ARPA-Radar Simulator
(2-own Perry Radar, Sindlel Ownship/Console)
 視界再現装置付。
 シガー(イタリア)製。視界は前方だけでなくモード切替えによりサイド/後方も表示できる。実習室に教室が隣接し担当教官指導の下に、4名ずつ計8名が役割分担の上、実習訓練ができる設備を備えている。
 シミュレータ訓練はボスポラス海峡に黒海側とマルマラ海側からの入港操船に関するレーダーシミュレーションが可能であり、航海学部の学生の教育訓練には極めて有効で78年STCW条約に規定する国際船員教育訓練の基準を満たしている。
 
b)航海学部のその他の教育設備及び機材
Liquid Cargo Handling Simulator
 PC type 1:6, Gas liquid cargoのシミュレーションも可能。PC typeは一度に何人も教育でき、一度に別々の訓練内容のものもできる。
 
GMDSS Simulator
2-own ship type
 
その他
 航海学実験室と気象観測実験室があり、旧式航海計器等の表本が展示されているとともに、ARPA−Radarをはじめ電子航海計器は一式揃っている。
 航海実習は専用桟橋に小型練習艇一隻と舟艇類が揃っており、TUZULA湾で実習が可能である。
 
Lifeboat and Davit
 Enclosed type、Boatなどは解体船の物を譲り受けて使用している。
 
Survival Training Poo1
 33m(L)×20m(W)×l.8/3.0/4.0m(D)温水プール 造波装置付
 飛び込み台、Life raft davit付。プールの建屋には、小教室・教官室計4−5部屋程度ある。
 
c)機関学部の教育設備及び機材
Engine Room Simulator(JICA)
 Instructor room, Control room, Graphic panelroom, PC roomに分かれている。
 PC型シミュレータは6台でERSの事前Briefing等に使用している。
 
 実習・実験室としては舶用機関(Marine Engine)、発動機(Motor)及び蒸気タービンそれぞれが独立した棟屋が3棟ある。模型や展示品は種々揃っているが、駆動可能なディーゼルエンジンはなく、近代化船に装備される機器類はほとんど揃っていない。
 
d)その他
・体育館:トレーニングジムも併設
・小教室:20名程度の教室5−6室
・図書館:蔵書が少ない
・Workshop:簡単な修理ができる
・実験室及び実習室
−物理学実験室
−化学実験室
−語学教室
−コンピュータ実習室
−溶接実習室
−機関部工作実習室
 
・Training vessel
 Training vesselはキャンパス沖合に停泊している。7,800GT、2軸の古い貨客船である。保安のため発電機だけは運転しており、消防関連機器も備え付けられている。発電機は2台新設し計6台。700 litters/dayのバンカーが必要。これが、運航費用の大部分を占めるようであるが、新しい練習船を導入しても乗組員と運航予算がつかなければ本船と同じ運命になる。Main engine(Man製)、Steering gearは運転可能な状態である。
 本船を利用しての訓練は、係船操作、甲板補機のメンテナンス程度。本船を現在のルールにあわせて改造し走れるようにするには巨額の費用が必要。
 
〈教育機材整備のための対応策〉
 教育設備及び機材の整備について、現学部長Oskan Kamil Sag氏はあらゆる手段を求めて努力している。国の予算に加え、卒業生からの寄付や船主協会などの協力を求め、トルコ船員教育基金の設立によりその後盾を得ているが十分ではなく、整備計画の第一段階として日本の国際協力事業団に対してプロジェクト方式技術協力を依頼した。
 
 一方ITU・MFは、東欧地区を中心とした海事教育の中心となるべく機材の整備及び船員育成プログラムの充実を図ろうとしている。学部長は、現施設を利用し学内に新たに国際海事学部の設立によりその目的を達成しようと考えている。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION