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II−9 その他の連邦機関の助成プロジェクト
 これまで述べてきた連邦政府機関以外で定期的に造船関係の研究開発助成を実施している機関としては米国科学財団(NSF)、環境保護庁(EPA)、エネルギー省(DOE)、米国海洋大気局(NOAA)等がある。
 
米国科学財団(NSF)
 NSFデータベースの中に下記8つの造船関連プロジェクトが助成により実施されたとの記述があるが期間や助成金額等は不明である。
 
<1>可変棒性プラズマ・アーク溶接における溶接形成の安定性コントロール(Stability Control of Weld Formation in Variable Polarity Arc Welding)
<2>新技術の普及と産業構造の発展:1789年以来の北米海事産業(The Diffusion of New Technology and the Evaluation of Industry Structure:The North American Maritime Industries Since 1789)
<3>高分子膜燃料電池システムの先進材料(Advanced Material for PEM−Based Fuel Cell Systems)
<4>コンピューターによる造船所の材料流れ制御適用に関するワークショップ:ルイジアナ州ニューオリンズ、1991年8月
<5>NSF−CGP科学フェローシップ・プログラム:ワークボート船体周りの自由表面流れの研究のために東京大学が開発した修正マーカー及びセルプログラム(Tummac)の適用(NSF−CGP Science Fellowship Program:Adaptation of Tokyo University Modified marker and Cell Program(Tummac)for Investigation of Free Surface Flow Around Work Boat Hulls)
<6>米国/中国研究協力:幾何学的モデリング(U.S.−China Cooperative Research: Cooperative Geometric Modeling)
<7>ITR/AP:ダイナミックで且つ相互影響的建造オペレーションの視覚化のための情報技術(ITR/AP:Information Technology for Enabling Dynamic Immersive and Interactive Visualization of Construction Operation)
<8>エンジニアリング研究機器助成基金:構造研究のためのワークステーションシステム(Engineering Research Equipment Grant:Workstation System for Structural Research)
 
環境保護庁(EPA)
 EPAは環境問題について国家の一次的方針を立案する立場にあり、例えば侵入種に付いてUSCG、NOAA、FWS、ANSタスク・フォース侵入種委員会等と緊密な協力をとりながら研究開発を進めている。今後バラスト水中の侵入種問題についてEPAの方針が定まり、USCGが施行細則を作る段階で船舶の設計も大いに影響を受けるものと思われる。EPAはEPA内部及び研究助成により侵入種に対する新技術の開発を進めると同時に、部外者の教育訓練も実施している。参考文献11はEPAで発行された米国造船業及び船舶修理業の環境問題のプロフィールを述べたものである。制度として造船業も利用出来るプロジェクトを下記の通り紹介しているが、あまり造船業で利用された形跡はない。
 
<9>33/50プログラム(33/50 Program)
 沿岸工場から有害化学物質の流失と17種の化学物質の移動を減らすプログラムを実施。1992年には1988年水準の33%、95年には50%の流失と移動減少が報告された。造船所関連ではアボンデール、ニューポートニューズ等7つの会社の15事業所が参加した。
 
<10>環境リーダーシップ・プログラム(Environmental Leadership Program)
 本プログラムはEPAが設立した国家イニシアティブで環境マネージメント・システム、基準適合確認、第三者証明、公的責任、汚染防止、コミュニテイーの参加及び指導者等の問題につきEPAが各企業、機関に入り込んで技術助成を与え国家全体の環境を向上させるプロジェクト。1995〜97年パイロット・プロジェクト、1997年以降フル・スケールのプロジェクトとして発足。
 
<11>プロジェクトXL(Project XL)
 本プロジェクトは1995年クリントン大統領の環境法規再創造イニシアティブの一部として発足したもので参加企業はEPAと話し合ってプロジェクト対象項目を定め、EPAはその関連規則の解釈を和らげ技術助成を与える。参加企業には自社にコスト的に有利な技術の採用を許されるが、結果は法規の解釈を厳格に実施した場合を上回るものでなければならない。
 
<12>クライメート・ワイズ・プログラム(Climate Wise Program)
 本プロジェクトは全産業を対象にエネルギー効率と汚染防止を目的として、クリントン大統領の風潮変化アクション・プランに基づいて発足したエネルギー省(DOE)とEPAの共同プロジェクトである。対象は何でもよい。参加会社の例ではプロセス改良、ボイラー及び蒸気システムの最適化、エア・コンプレッサー・システムの改良、燃料代替、コジェネレーション、廃熱回収等でDOE及びEPAから完全な技術援助が得られる。
 
<13>エネルギー・スター・ビルディング・プログラム(Energy Star Building Program)
 本プロジェクトは商業用、産業用の建造物のエネルギー効率を高めるために1995年に発足した。もしこのプロジェクトが全米の建造物に実施されると250億ドルの節約、C02排出の35%減少に繋がる。EPAは技術援助と共にソフトウエア、ワークショップ、マニュアル、コミュニケーション・ツール、情報ホットラインを供与して援助する。
 
<14>グリーンライト・プログラム(Green Light Program)
 本プロジェクトはエネルギー効率の良い照明を使って汚染を減らそうとするプロジェクトで、1992年に発足し、2,345社が参加した。1997年におけるプログラムの成果は2億8,900万ドルと見積られている。EPAからの参加各社に対する援助は上記エネルギー・スター・ビルディング・プログラムと同じ。
 
<15>廃棄物処理プログラム(Waste Wise Program)
 本プロジェクトは1994年にEPAの固形廃棄物局及び非常対応局により設立されたもので、汚染防止やリサイクル等により都市固形廃棄物を減らすのが目的である。1997年の参加企業は500社に及ぶ。EPAは参加企業に対し技術援助、出版物、ネットワークの機会供与等の助成を与える。
 
<16>環境設計プロジェクト(DfE)
 本プロジェクトはEPAが産業界の実施しようとしている方式について、EPAの所有する豊富な技術資料でその性能、コスト、汚染防止利得、人間及び環境に対するリスク等を算出し、既存あるいは代替技術と比較するプロジェクトである。
エネルギー省(DOE)
 DOEはガス研究所、運輸省等と共同出資で高速道路の一部として環境に優しい天然ガス推進フェリーを組み込む研究を進めている他、サンデイア研究所、オークリッジ研究所で中小企業の技術助成に取り組んでいる。その他下記NICEプロジェクトも造船業に適用可能である。
 
<17>NICE(National Industrial Competitiveness through Energy, Environment)
 本プログラムでは廃棄物を最小とする努力を通じて、よりエネルギー効率の高い、コスト競争力のある製品を製作するプロジェクトに対して全プロジェクトコストの45%が助成される。本助成金を受けた会社は新しいシステムや機器を設計、製造、テストし、その汚染減少度及びエネルギー効率の上昇度を確認しなければならない。
 
米国海洋大気局(NOAA)
 NOAAの役目は地球環境の変化を予測して沿岸及び海洋資源を保存し、賢明な方法で管理するためにリアルタイムで正確な情報を提供することである。NOAAの国立大洋サービス(NOS:National Ocean Service)では航海チャートの製作と更新、米国沿岸と水路の測量、リアルタイムの水位観測、潮位・海流予測、海洋物理リアルタイム・システムの構築等が実施されているが、海洋が活動の主舞台となるためMarAdやUSCGとの結びつきが強い。
 
<18>米国漁業振興助成プログラム(Salton−Kennedy Program)
 2001年に380万ドルが助成されているが、漁船自体の助成プロジェクトは見当たらない。本プログラムの期間は18ヶ月、総費用の10%は参加企業のコストシェア(現金あるいは現物出資)が求められている。
 
<19>NOAAシー・グラント・プログラム(Sea Grant Program)
 造船業に対する最近の助成例としてはII−8<3>連邦バラスト水技術デモンストレーション・プロジェクトがある。







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