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刊行によせて
 当財団では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施しております。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しております。
 
 本書は、(社)日本舶用工業会及び日本貿易振興会が共同で運営しているジェトロ・ニューヨーク・センター舶用機械部のご協力を得て実施した「米国における船舶のクリーン推進システム開発プロジェクトに関する調査」の調査結果をとりまとめたものです。
 関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
 
2003年3月
財団法人 シップ・アンド・オーシャン財団
 
はじめに
 船舶、特に外航船は、その環境負荷の大きさ及び移動性ゆえに、大気汚染防止の分野においても国際的な取り組みが求められており、IMOにおいても舶用ディーゼル機関に対する排ガス規制が1997年にMARPOL条約附属書VIという形で取り纏められたところです。このMARPOL条約附属書VIについては、現在米国国務省が、その批准をブッシュ大統領に対して求め、また、批准に関する上院の同意を得るための提出書類の作成を進めています。しかしながら、MARPOL条約附属書VIの内容は、現在確実に実現可能な最低限度の基準への適合(現在市場に出回っている新型のディーゼル機関の多くは、この基準を満たしている)を求めているに過ぎません。このため、米国環境庁では、このMARPOL条約附属書VIの基準の国内実施に加え、附属書VIが採択された1997年以降に開発された排ガス浄化技術により今後さらに排ガス浄化が進む可能性を考慮し、第2段階のアプローチとしてNOx排出量に関する附属書VIの規制強化、さらにはブルークルーズプログラムによるボランタリーベースでの大幅な排出ガスの浄化等を目指しています。
 
 また、舶用推進機関におけるエネルギー使用の効率化は、地球温暖化防止への応分の貢献という観点のみならず、化石燃料の輸入超過の現状と政情不安定な中近東等の海外エネルギーへの依存度が益々増加することに対するエネルギー安全保障の確保、老朽船の市場退出を促進し効率的な海上交通体系の構築を目指すMTS;Marine Transport Systemの構築(これは、安全性や海洋汚染防止性能の劣るサブスタンダード船の市場からの排除のほか、造船業の仕事量確保等様々なメリットを有する)の推進等の観点から、その重要性が認識されています。
 
 以上の状況の下、米国舶用工業界は、特定の高度な技術力を有する企業が、米海軍や運輸省海事局からの支援を得つつ連携し、高効率、低環境負荷の舶用推進システムの開発を進めており、地球環境問題の動向如何では、これらが将来的には商業船舶の推進システムに大きな影響を与える可能性があります。そこで、現在米国で進められているクリーン推進システム関連の各種技術開発に関し、その技術動向を取り纏めました。これらの情報が、わが国メーカーがクリーン推進システムに関する技術開発を今後進める上での一助としてお役に立てば幸いです。
 
ジェトロ・ニューヨーク・センター 舶用機械部
Director 吉田 正彦
Assistant Researcher 上野 まな美
 
用語解説
ANS Aquatic Nuisance Species 水中有害生物種
ANWR Arctic National Wildlife Refuge 北極国立野生生物保護区
ASC American Superconductor Corporation アメリカ超伝導社
CAA Clean Air Act 大気浄化法
CAAA Clean Air Act Amendments of 1990 CAA1990年改正法
CARB California Air Resources Board カリフォルニア大気資源局
CCAP Climate Change Action Plan 気候変動アクション・プラン
CCF Capital Construction Fund 資本建造基金
CDM Clean Development Mechanism クリーン開発メカニズム
CNG Compressed Natural Gas 圧縮天然ガス
COGES Combined Gas Turbine and Steam Turbine Integrated Electric Drive System コンバインド・サイクル・エンジン発電・電気推進システム
COP Conference of the Parties 締約国会議
CWA Clean Water Act 水質浄化法
DOD Department of Defense 国防総省
DOE Department of Energy エネルギー省
DOT Department of Transportation 運輸省
EB Electric Boat ジェネラル・ダイナミックス社エレクトリック・ボート造船所
EPA Environmental Protection Agency 環境庁
EPACT Energy Policy Act of 1992 エネルギー方針法
ETV Environmental Technology Verification 環境技術確認プログラム
FHA Federal Highway Administration 連邦高速道路局
FIP Federal Implementation Plan 連邦実施計画
FTA Federal Transit Administration 連邦運輸(短距離交通)局
GTL Gas To Liquid ガス液化合成燃料
HTS High Temperature Superconductor 高温超伝導材
ICR Inter-cooled Recuperated Gas Turbine 中間冷却復熱式ガスタービン
IPCC International Panel on Climate Change 気侯変動に関する政府間パネル
IPS Integrated Power System 全電動システム
LEVP Low-Emission Vehicle Program 低排出車プログラム
LNG Liquified Natural Gas 液化天然ガス
LTS Low Temperature Superconductor 低温超伝導材
MARAD Maritime Administration 運輸省海事局
MCFC Molten Carbonate Fuel Cell 溶融炭酸塩型燃料電池
MTS Marine Transportation System 水上交通システム
NAECA National Appliance Energy Conservation Act of 1987 1987年国家器具エネルギー保存法
NEPA National Environmental Policy Act of 1969 国家環境基本法
NEPP National Energy Policy Plan 国家エネルギー政策プラン
NPRM Notice of Proposed Rule Making 規則提案
NSWCCD Naval Surface Warfare Center,Carderock Division 海軍海上戦闘センター・カルデロック・デイビジョン
OFP Oxygenerated Fuels Program 酸化剤燃料プログラム
ONR Office of Naval Research 海軍研究局
PAFC Phosphoric Acid Fuel Cell 燐酸型燃料電池
PEMFC Proton Exchange Membrane Fuel cell 高分子膜型燃料電池
RFG Reformulated Gasoline Program ガソリン改質プログラム
SOFC Solid Oxide Fuel Cell 固体酸化物燃料電池
UNFCCC United Nations Framework Convention on Climate Change 気候変動に関する国際連合枠組条約
USCG United States Coast Guard 沿岸警備隊
WTA Water Transit Authority サンフランシスコ湾水上交通局







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