4.3 航海・通信計器(2001年11月/国際船艇)
国際船艇11月号は、航海・無線設備について、中国市場での各社シェアを調査した結果を掲載している。調査は、中国の12造船所という限られた中での調査結果ではあるが、一般に言われているように他の舶用部品と比べたとき、日本のメーカー各社が大きなシェアを持っていること、中国のメーカーが育っていないこと、日欧メーカーが厳しい競争を繰り広げていることが、特徴といえそうである。
<調査結果>
中国における航海・通信計器は、日米欧が中心であり、徐々に途上国にメーカーが移りつつある主機・補機とは異なる。2000年から始めた中国の12造船所のサンプル調査結果でも日米欧の少数のメーカーの名前が上がった。10ケ国、39社の名前があがった中で、JRC、古野電気、LITTON、SPERRYが、中心メーカーである。
1 通信システム
通信システムは、船外に向けての無線・衛星システムと有線・無線の船内電話等がある。
1)無線システム
無線局、送受信呼出し装置等からなる。表1からわかるように中国市場は日米欧のメーカーの争いとなっている。日本のメーカー2社が70%のシェアを持ち、主導権を取っている。特に中国で建造される中大型船の無線システムは、輸入品である。中国製の無線システムは、出力が小さく沿岸・河川を航行する小型船舶に使われている。
表1 船舶用無線システムの中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
FURUNO |
日本 |
17 |
38.64% |
2 |
JRC |
日本 |
14 |
31.82% |
3 |
SKANTI |
デンマーク |
5 |
11.36% |
4 |
KNC |
ノルウェー |
2 |
4.55% |
5 |
LITTON |
アメリカ |
2 |
4.55% |
6 |
その他 |
|
4 |
9.09% |
合計 |
|
|
44 |
100.00% |
|
2)衛星通信システム
1970年代から設置が始まった衛星通信システムは静止衛星によるINMARSATシステムにより世界中で利用可能なこと、及びその対候性から現在はB局・C局が外航船に備えられている。無線システム同様日米欧のメーカーの争いとなっており、JRCがトップに立っている。
表2 船舶用衛星通信システムの中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
JRC |
日本 |
13 |
46.43% |
2 |
FURUNO |
日本 |
5 |
17.86% |
3 |
SPERRY |
アメリカ |
2 |
7.14% |
4 |
その他 |
|
8 |
28.57% |
合計 |
|
|
28 |
100.00% |
|
3)船内電話・船内通信
船内電話は、プログラム制御の小型電話交換機、音声電話、超高周波無線電話、インターコム、TVシステム等からなっている。これらの設備には、ローテクの機器が、含まれているため、中国国内メーカーと海外メーカーの間に一定の競争がある。輸入品の中では、JRC・古野電気といった日本メーカーが、56%のシェアを持っている。
表3 船内電話・船内通信の中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
JRC |
日本 |
22 |
31.43% |
2 |
FURUNO |
日本 |
17 |
24.29% |
3 |
OKI |
日本 |
10 |
14.29% |
4 |
VINGTOR |
ノルウェー |
7 |
10.00% |
5 |
NAVICO |
ノルウェー |
3 |
4.29% |
6 |
GITIESSE CIOO LCENICA |
イタリア |
2 |
2.86% |
7 |
NHE |
日本 |
2 |
2.86% |
8 |
SPERRY |
アメリカ |
2 |
2.86% |
9 |
TKC |
日本 |
2 |
2.86% |
10 |
その他 |
|
3 |
4.29% |
合計 |
|
|
70 |
100.00% |
|
4)アンテナ系統
調査した9セットのアンテナのうち、5セットはノルウェーのNAVICO、3セットが日本の古野電気、1セットがデンマークのAPSであった。
2 航海計器
IMOは、すべての外航船に、航海計器を要求しており、磁力、慣性力、無線、衛星等の方法に分類される。
1)レーダー
下記の表によると、レーダーは、日米の争いとなっている。米国の2社からは、24台、日本の3社からは、22台とほぼ同数である。LITTON、SPERRY、JRC、古野電気はいずれも世界的に有名なメーカーである。トランスポンダーは調査した11のうち6がJRC、4が古野電気、1がフランスのIESMであった。
表4 船舶用レーダーシステムの中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
LITTON |
アメリカ |
18 |
36.73% |
2 |
JRC |
日本 |
13 |
26.53% |
3 |
FURUNO |
日本 |
6 |
12.24% |
4 |
SPERRY |
アメリカ |
6 |
12.24% |
5 |
TKC |
日本 |
3 |
6.12% |
6 |
ANSCHUTZ |
ドイツ |
2 |
4.08% |
7 |
KNC |
ノルウェー |
1 |
2.04% |
合計 |
|
|
49 |
100.00% |
|
2)ジャイロコンパス
現在、中国で建造される外航船に設置されているジャイロコンパスは、全て輸入品である。中国メーカーの製品もあるが、市場シェアは高くない。輸入品市場は、日米独と3局化しており、TKC、古野、横河の日本メーカーが13セット、LITTON、SPERRYの米国メーカー2社が、10セットである。
表5 船舶用ジャイロコンパスの中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
LITTON |
アメリカ |
8 |
26.67% |
2 |
TKC |
日本 |
6 |
20.00% |
3 |
ANSCHUTZ |
ドイツ |
5 |
16.67% |
4 |
FURUNO |
日本 |
4 |
13.33% |
5 |
YOKOGAWA |
日本 |
3 |
10.00% |
6 |
SPERRY |
アメリカ |
2 |
6.67% |
7 |
その他 |
|
2 |
6.67% |
合計 |
|
|
30 |
100.00% |
|
3)オートパイロット
ジャイロコンパス同様、日米独との3局構造となっている。調査の中では、米日独の数は各々10、8、7となっている。
表6 船舶用オートパイロットの中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
LITTON |
アメリカ |
8 |
30.77% |
2 |
ANSCHUTZ |
ドイツ |
5 |
19.23% |
3 |
TKC |
日本 |
5 |
19.23% |
4 |
YOKOGAWA |
日本 |
3 |
11.54% |
5 |
SPERRY |
アメリカ |
2 |
7.69% |
6 |
C.PLTH |
ドイツ |
2 |
7.69% |
7 |
KNC |
ノルウェー |
1 |
3.85% |
合計 |
|
|
26 |
100.00% |
|
4)音響測深器
この市場では、日本のJRCと古野電気がそれぞれ12セット、11セットで1位、2位。米国のLITTONが6セット、SPERRYが2セット、ノルウェーのKNCが欧州では唯一1セットを提供している。
表7 船舶用音響測深器の中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
JRC |
日本 |
12 |
36.36% |
2 |
FURUNO |
日本 |
11 |
33.33% |
3 |
LITTON |
アメリカ |
6 |
18.18% |
4 |
SPERRY |
アメリカ |
2 |
6.06% |
5 |
ANSCHUTZ |
ドイツ |
1 |
3.03% |
6 |
KNC |
ノルウェー |
1 |
3.03% |
合計 |
|
|
33 |
100.00% |
|
5)方向探知機
37セット中、米国のLITTONと日本の古野電気が13セットで一位。日本のメーカーが合計で21セットで、15セットの米国をリードしている。
表8 船舶用方向探知機の中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
FURUNO |
日本 |
13 |
35.14% |
2 |
LITTON |
アメリカ |
13 |
35.14% |
3 |
JRC |
日本 |
5 |
13.51% |
4 |
YOKOGAWA |
日本 |
3 |
8.11% |
5 |
SPERRY |
アメリカ |
2 |
5.41% |
6 |
KNC |
ノルウェー |
1 |
2.70% |
合計 |
|
|
37 |
100.00% |
|
6)ログ
29セット中、JRCが11セットで第一位、古野電気、LITTONが各7セットで2位であり、日米のメーカーの争いとなっている。
表9 船舶用ログの中国への輸入状況
No |
会社名 |
国家 |
数量(台) |
シェア(%) |
1 |
JRC |
日本 |
11 |
37.93% |
2 |
FURUNO |
日本 |
7 |
24.14% |
3 |
LITTON |
アメリカ |
7 |
24.14% |
4 |
SPERRY |
アメリカ |
2 |
6.90% |
5 |
その他 |
|
2 |
6.90% |
合計 |
|
|
29 |
100.00% |
|
7)非常用位置指示システム
無線タイプと衛星タイプがあるが、25セット中、JRCが11セットで1位、古野電気が4セット、米国のNOVA MARINが、3セットである。
8)船舶用風向・風速計
調査した25セットは日・英・米・独、デンマーク、ノルウェーの9社で製造されており各社ほぼ同数を提供している。
9)その他の計器
16のクロノメーター、基準時計は、「セイコー」であった。40の汽笛は、19が日本の伊吹工業、18がスウェデンのKochum、3がドイツのZollenであった。13の旋回窓は、英国のWynnが9、Hepworthが1、韓国のJUVA-Aが2、シンガポールのBergflexが1であった。
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