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5. 保安関連ビジネス
 
 保安関連企業は港湾・海上部門に関心を示している。1月のUSCG一般ワークショップでは保安装置やサービス提供関係約50社が参加した。参加者には、3Uテクノロジーズ、レイション、SAIC、Thales Geosolutions、Titan Systems、TRWといった防衛テクノロジー企業も含まれていた。また、Kongsberg Simrad、Boston Whalerといった舶用機器メーカー、Haight Gardnerや、Dyer Ellisのような海事法律事務所、George SharpやMoffat&Nicholのようなエンジニアリング会社も顔を見せた。
 
5.1 保安サービス
 9月11日以来のニーズに応えて、多くの老舗及び新参企業が港湾及び海洋部門における保安強化サービスを売り込んでいる。以下に例をいくつか挙げる。
 
港湾保安
 テキサス州ヒューストンの株式非公開会社であるHarbor Watch社は、元USCG将官により、港湾パトロールを民間警備サービスとして提供するために設立された。同社は、28フィートの巡視艇の船隊を購入し、最新鋭の監視・通信機器を搭載し、コスト・シェアで港湾内の企業にサービスを提供する計画である。本質的に、同社は「民営USCGサービス」を提供するものである。巡視艇には元軍人か警察業務経験者を配乗する。同社は、2002年の第2四半期にサービスを開始し、USCGや地元の警察機関の競争相手ではなくパートナーとなるつもりだとしている。Harbor Watch社の創立者によれば、港湾保安活動を維持するだけの公共のリソースが不足するため、将来USCGと地元の警察機関の警備能力を民間部門が補うことが求められる、としている。同氏は、「米国の主要な資産を守る責任の矢面に立つのは連邦政府ではなく民間であり、テロ攻撃のターゲットとなる可能性があるものが営利事業の一部であるならば、21世紀の世界におけるコストの全部ではないとしても、そのほとんどを企業が負担する必要があると確信している」という国土安全保障局長の発言を引用した。
 Hvide Corporationの子会社であるシーバルク・インターナショナル社は、別の選択肢を提示した。シーバルク社はUSCGの港湾、沿岸パトロール支援にオフショア・クルーポート及びタグボートの利用を促進している。同社は「わが社のクルーボート船隊の船舶は、比較的手ごろなコスト、新船建造よりも大幅に低いコストで港湾任務に提供することができる」、とし、「政府が本気で迅速に海上保安措置を実施する気ならば、既存の船舶を雇い、武器を携帯したシーマーシャルを乗せることも可能である」と付け加えた。
 
保安監査
 Global Marine Security System(GMSS)社は船主、港湾、マリン・ターミナル向けの保安監査サービスを提供するために設立されたものである。同社は、Hart Group(海洋危機管理)、Tufton Oceanic(マーチャント・バンク)、Energy Transportation Group(LNG輸送)により創設された。GMSSは港湾保安、乗員検査、国際航路計画等の分野でアドバイスを提供する。GMSSによれば、保安監査には10〜50万ドルがかかり、4〜6週間の期間にわたり3〜5人の専門家が必要となる。GMSSは、監査のコストを考えれば、このサービスは大型船隊を保有する企業向けであり、「2、3隻を所有する小さな不定期貨物船船主」向けではない、としている。GMSSは、保安監査のコストは保険料が低くなることで回収できるとしている。
 
脆弱性評価
 ABSの一部門であるABSコンサルティングは、船主、港湾、マリン・ターミナル向けの脆弱性及びリスク査定能力を売り込んでいる。査定において、ABSはターミナルの保安区域の信頼性、乗員・乗客スクリーニング、保安上の脅威に対処する能力を評価する。この情報を使い、ABSは保安リスク管理を改善する措置を推薦する。同組織は最近、LNG施設の脆弱性・リスク査定を実施した。これにはLNG船に対する故意の攻撃による結果の分析が含まれており、テロ警戒が厳重になっている現状で、彼らがより大きな市場に目をつけたのは明らかである。
 
保安訓練
 メリーランドのMaritime Institute of Technologyは、Masters、Mates&Pilots労組の関連機関であり、船舶職員の海洋保安訓練プログラムを開設した。かなり以前から、同機関は船舶安全プログラムを提供していたが、保安訓練の導入は同時多発テロに応えたものである。提案されている訓練プログラムは、全ての乗員がアウェアネス訓練1日コースを受講し、保安担当官は5日間の戦術訓練を、警備チームは4日から5日の小火器訓練を、一般乗員は1日、保安担当官は7日間の化学/生物訓練を受けるものである。
 
5.2 保安装置
 様々な企業が港湾・海上保安向けに開発した特許を取得した装置やシステムを売り込んでいる。以下にその例を2、3挙げる。
 
アクセス制御
 フロリダを拠点とするSecurity Identifications Systems Corp(SISCO)社は、海事産業向けのデータベース管理、写真による身分証明、アクセス制御のソリューションを専門としている。SISCOはすでに、クルーズ船部門でアクセス制御装置を提供し、足場を固めている。同社のAutomated Personnel Assisted Security Screening System(A−PASS)アクセス制御システムは現在・カーニバル、RCCL、プリンセス・クルーズが利用しており、海事保安に対する関心が高まっているなか、同社はA−PASSを船舶アクセス保安のより一般的な用途に売り込んでいる。A−PASSは平均4秒で旅客が本人かどうかを確認する写真による身分証明システムであり、SISCOによれば、現在1,000万人のクルーズ客の顔写真を登録し、毎年9,300万回の照合を行っている。SISCOはまた、海事産業向けに多様なより高度なアクセス制御ソリューションを開発中である。
 
コンテナ追跡
 NACLSは、トゥルーズに本社を置く仏のCLS社の子会社であり、仏宇宙局(CNES)と米国海洋大気局により開発されたアルゴス衛星ベースのシステムを利用した船舶及びコンテナ追跡システムを提供している。日本の宇宙開発事業団も現在アルゴス・ベンチャーのパートナーとなっている。NACLSのシステムを使えば、船舶やコンテナは世界のどこにいても300メートル以内の精度で追跡可能である。同社はコンテナ追跡用に小型で自己保持機構の送信機を開発した。これらの送信機を使えば、コンテナ移動の保全性(インテグリティ)は、積み込み地点から最終目的地まで追跡することができ、安全確実なコンテナ輸送システムの確立に役立つとNACLSは主張している。
 
5.3 保安技術開発
 港湾及び海上保安を強化する多様なテクノロジー・コンセプトが開発、計画の様々な段階にある。いくつかの例を挙げる。
 
スマート・カード
 MarAdとShip Operations Cooperative Program(SOCP)の共催による試行プロジェクトであり、海事及び関連産業における「スマート・カード」利用を実証するために立ち上げられた。このカードは・保安上重要な区域で働く従業員を正確に照合するために顔、指紋または瞳孔のようなバイオ・アイデンティフィケーション(生物測定学的照合)を利用するものである。スマート・カードには32kbの情報を記録できるコンピューター・チップが組み込まれており、カードを携帯する人の情報が記録されている。この技術は、小売り、運輸部門で広く採用されており、現在米国海軍も利用している。この試行プロジェクトにおいて、第一段階はバイオ・アイデンティフィケーションに基づく船員の確実な人物照合提供に焦点を当てる。第二段階は、船員書類発行における不正行為の可能性を減じることに焦点を当てる。第三段階では、情報の精度の向上と必要なデータを取り出す時間の短縮に焦点を当てる。一般調達局がこのプロジェクトに協力している。
 
クレーン搭載コンテナ・スクリーニング装置
 「スマート・ボックス」プログラムの一環として、米国税関は放射線探知器やその他のスクリーニング装置をコンテナ・クレーンに搭載する可能性を研究している。コンテナ・クレーン搭載のスクリーニング装置、検査装置の利用は1月に開催された海洋保安一般ワークショップで最も熱心に議論されたアイデアのひとつであった。多くの参加者が、船倉からコンテナを吊上げ、岸壁に下ろす間の時間がコンテナのスクリーニングに最適の機会を提供すると考えた。クレーン―スパナーへの搭載の可能性が高い−に搭載可能なスクリーニング装置及び技術の開発に相当な努力が注入されることが予想できる。
 
インテリジェント・シール(知的封かん)
 マリン・ターミナルの効率を高めるため、現在コンテナにはマリン無線周波数照合(RFID)タグが使用されている。それぞれのタグはセキュアな着脱式のプログラム可能なチップを内蔵し、これにコンテナの内容物と状態についての情報を記録することができる。このような技術は、積み込み地点から最終目的地までの保安性の高いコンテナ封かんとして利用することができ、またこのようなコンセプトは、現在北西部幹線道路を通過するカナダ向け保税コンテナで試験的に利用されている。今年年央には、運輸省が運営する競争的補助金プログラムで、インテリジェント・シールの開発、実証に数件の補助金給付があると予想される。







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