8−1−6 CO2改質触媒再生試験
これまでに実施した試験で著しく炭素析出し、劣化した触媒についてCO2、H2O又はAir通気による再生条件の把握を目的に触媒再生試験を実施した。なお、炭素析出したサンプル触媒が少ないため、同一サンプルでCO2、H2O、Air再生試験を一連で実施した。
(1)供試験触媒
これまでに実施した試験により著しく炭素が析出したサンプル
A−9: |
10wt%Ni−5wt%Ru−3wt%MgO−10wt%CeO2/Al2O3(炭素析出量 0.78g17.8wt%) |
A−8: |
10wt%Ni−3wt%Ru−3wt%MgO−10wt%CeO2/Al2O3(炭素析出量 0.13g3.8wt%) |
(2)試験条件
表8−5に触媒再生試験条件を示す。各供試触媒においてRun1〜5まで適宜サンプル評価を行いながら一連で実施した。再生試験温度は、活性評価条件と同様の700℃である。
表8−5 再生試験条件
Run No |
1 |
2 |
3 |
4 |
再生条件 |
CO2再生 |
H2O再生 |
Air再生 |
再生用ガスの組成 |
CO2 |
H2O:N2=80:20 |
N2:H2O:Air=20:79:1 |
N2:H2O:Air=20:76:4 |
供給ガス量
(Nml/min) |
CO2 |
1047 |
− |
− |
− |
H2O |
− |
838 |
827 |
796 |
N2 |
− |
209 |
209 |
209 |
Air |
− |
− |
10 |
42 |
再生時間(h) |
0.5 |
0.5 |
0.3 |
− |
|
(3)測定項目及び測定方法
A. CO、CO2連続計により出口CO、CO2濃度を連続計測した。
(Run1についてはCO計、その他RunについてはCO2計を使用した。)
B. 各試験条件後、触媒性能を把握するためCH4、CO、CO2、H2を各試験条件後にサンプリングした。活性評価条件を表8−6に示す。
表8−6 活性評価条件
温度: |
700℃ |
圧力: |
1.2kg/cm2−G |
CH4:CO2=30:70 |
SV: |
10000h−1 |
触媒量: |
6.28cc(φ20mm×10mm×2段) |
ガス量: |
1.0471Nl/min |
|
|
C. 再生条件終了後の触媒重量を計測した。
(4)CO2改質触媒再生試験結果
図8−19、8−20に触媒再生時のCO、CO2濃度の経時変化を示す。また、図8−21、図8−22に各サンプルの再生試験条件終了後のCH4転化率を示す。
図8−19 触媒再生時のCO,CO2経時変化(触媒:A−9)
図8−20 触媒再生時のCO,CO2経時変化(触媒:A−8)
図8−21 再生試験条件終了後のCH4転化率(触媒:A−9)
図8−22 CO2改質触媒再生後のCH4転化率変化(触媒:A−8)
図8−19よりRun1:CO2再生、Run2:H2O再生ではデコーキングするものの完全ではなく、Run3:Air再生により完全に析出炭素が除去されるのを確認した。試験後、取り出したサンプルは、触ると緑色の粉体がボロボロと触媒から落下する状態であった。これは、Ni上に析出したカーボンが表面拡散し、Ni金属粒子と担体との間に形成されているカーボンが除去されたことにより、Ni触媒粒子が脱落したためだと考えられる。
また、図8−21よりRun1:CO2再生では、炭素析出時における活性と比較して変化は無く、Run2:H2O再生より、活性が低下(約CH4転化率39%→35%)した。活性が低下した原因は、H2OによりNi粒子が酸化されたためと考えられる。
図8−20よりRun1:CO2 再生でほぼ析出炭素を除去することができ、Run3:Air 再生条件にしてもCO2濃度変化がないことから、Run2:H2O再生により完全に析出炭素を除去できると考えられる。二回目のRun2:H2O再生及びRun3:Air再生においてわずかにCO2を検知しているが、これは今回使用したサンプルが非常にコーキングしやすい触媒であったため、再生後の活性評価条件下でわずかにコーキングしたためだと考えられる。
図8−22よりRun1:CO2再生では、炭素析出時における活性と比較して若干向上(約CH4転化率37%→39% 初期活性約45%)し、Run2:H2O再生では、活性が低下(約CH4転化率39%→35%)した。H2Oにより、Ni金属が酸化されたことにより活性が低下したと考えられる。また、Air再生後の還元処理でも性能回復は見られなかった。還元処理後性能回復しなかった理由は、デコーキングにより触媒活性成分が脱落したこと及び活性評価条件において再び炭素が析出したこと等が考えられる。
c. まとめ
・CO2再生及びH2O再生ではされるが、Air再生でデコーキングすることが確実であると考えられる。
・ただし、今回のサンプルのように炭素析出量が多いものはAir再生後還元処理しても性能回復せず、炭素析出量が少ない段階で再生を行う必要があるものと考えられる。
8−1−7 まとめ
メタル多孔体型改質触媒を試作し、CO2及びH2O改質に高活性な触媒組成を見出した。それら高活性触媒を用いて、性能評価を行った結果以下の知見を得た。
(1) |
CO2及びH2O改質に高活性かつ炭素析出抑制した下記触媒組成が適正であると考えられる。
・CO2 改質触媒
A−10触媒:1wt%Ni−3wt%Ru−3wt%MgO−10wt%CeO2−Al2O3
・H2O改質触媒
A−7触媒:5wt%Ru−3wt%MgO−10wt%CeO2−Al2O3 |
(2) |
total(CO2+H2O)改質率:80%という本研究目標に対しては、SV=3200h−1に設定すれば開発したCO2及びH2O改質触媒を組み合わせてtotal(CO2+H2O)転化率:80%を達成できると考えられる。ただし、この結果は理想的なH2O改質条件下での結果であり、連続改質器、つまりCO2改質の出口ガス組成(CH4、CO2、H2O、H2、CO)でH2O改質を行う試験を実施し、検証する必要がある。 |
(3) |
上記触媒を用いた約80時間の試験では、CO2改質において若干の性能変動が見られたことから、わずかではあるがカーボンが析出していると考えられる。従って、本触媒については長期的な耐久性を確認する必要があるが、再生により対応できると考えられる。H2O改質条件では約80時間の試験を行ったが、活性に変化はなく、安定であることが確認された。 |
(4) |
炭素析出量が多いサンプルを用いて再生試験を行った結果、CO2再生及びH2O再生でデコーキングするものの必ずしも十分ではなく、Air再生で完全にデコーキングすることから再生法としてはAir再生が確実であると考えられる。また、今回のサンプルのように炭素析出量が多いものはAir再生後還元処理しても性能回復せず、炭素析出量が少ない段階で再生を行う必要があるものと考えられる。 |
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