ごあいさつ
本報告書は、競艇公益資金による日本財団の平成14年度助成事業として実施した「天然ガス改質舶用セラミックスエンジンの研究開発」事業の成果をとりまとめたものです。
人類の大きな課題である地球環境問題解決のためには、石油資源から排出される地球温暖化起因物質でもあるCO2(二酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)、PM(微粒子物質)等の生物に有害な物質の削減が喫緊の問題となっております。これらの問題を解決するための一方策として、地球埋蔵量が石油の数倍以上はあると言われている天然ガスの利用は、人類にとって石油に代替し得る可能性を秘めております。この考えを、海洋利用のほとんどを占める船舶や陸上における発電機等の第1次エネルギーの利用に対して具現化するため、エンジンシステムの技術開発によって天然ガスを電気エネルギーに高効率に変換し、CO2やNOx等の排出ガス等を飛躍的に低減するとともに、従来船舶のような大型エンジン採用による集中大型化から、複数のエンジンによる分散化を計り、新たな船舶の可能性を大きく開くことを目途とするものであります。このようなエンジンの開発は、ひいては、陸上においても、石油から天然ガスへの変換を促し、中国や発展途上国の経済発展に伴うエネルギー不足を補い、クリーンな地球とし得る可能性を有するものであります。
このような背景の中で、当財団では、平成10年度より日本財団からの補助金を受けて、天然ガスを原燃料とし、これに排気ガス中のCO2を加え、触媒によってH2(水素)とCO(一酸化炭素)を作り出して燃料の発熱量を約3割高めることができる画期的な舶用天然ガスエンジンシステムの研究開発を開始いたしました。本研究開発では、このエンジンシステムの重要な要素技術である燃料改質触媒とCO2吸着剤の研究開発から始め、昨年には本エンジンシステム技術の基盤となり、燃料改質のために必要な高温排気ガスを得られる遮熱単気筒エンジンを試作するまでに至っております。
平成14年度は、本エンジンシステムの実用化を進めるため、試作した遮熱単気筒エンジンの試験と改良を実施し、EGR(排気再循環)量や燃焼タイミングの適切な制御方法を得てほぼ目標のエンジン単体性能を達成することができました。また、排気ガスから熱エネルギーを得るための高効率でコンパクトな熱交換器の開発を行うとともに、メタンとCO2による改質及びメタンと水による改質を組み合わせた新しい実用燃料改質装置の研究開発を行いました。さらに、排気ガスからCO2を吸着する装置については、温度の違いによりCO2の吸着と脱離をコントロールできる新しい物質を用いた装置の調査検討を行い、CO2の吸着・脱離から燃料改質までを連続的に行うことのできる連続式改質装置の詳細を設計いたしました。
このように、実用化に必要な多くの貴重な新技術を開発し、さらに実現に近づいて来ましたが、今後は、これら新技術を集約してプロトタイプを製作し、従来エンジンに対して熱効率で約2倍、かつCO2やNOxの排出量を大幅に削減できる革新的なこのエンジンシステムの開発を進め、商品化へ発展させたいと願っております。
本研究開発は、神本武征東海大学工学部動力機械工学科教授を委員長とする「天然ガス改質舶用セラミックスエンジンに関する研究開発委員会」各委員の方々の熱心なご審議とご指導、河村英男氏による本研究開発でのご尽力、並びに日本財団のご理解とご支援、その他関係各位の多大なるご尽力、ご協力によるものでありましてここに厚くお礼申し上げます。
平成15年3月
財団法人シップ・アンド・オーシャン財団
天然ガス改質舶用セラミックスエンジンの研究開発委員会名簿
(順不同、敬称略)
委員長 |
神本 武征 |
東海大学工学部 動力機械工学科 教授 |
委員 |
持田 勲 |
九州大学 機能物質科学研究所 教授 |
〃 |
飯田 訓正 |
慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン学科 教授 |
〃 |
森吉 泰生 |
千葉大学工学部 電子機械工学科 助教授 |
〃 |
河村 英男 |
フジセラテック(株) 代表取締役 |
旧委員 |
越後 亮三 |
芝浦工業大学 副学長 工学部 機械工学科 教授 |
関係者 |
赤間 充 |
フジセラテック(株) エンジン開発 設計リーダー |
〃 |
舟越 浩 |
フジセラテック(株) エレクトロニクス開発 開発リーダー |
〃 |
今井 弘文 |
フジセラテック(株) 実験リーダー |
〃 |
加茂坂光伸 |
フジセラテック(株) エンジン開発 スタッフ |
〃 |
堀添 浩俊 |
三菱重工業(株) 横浜製作所 環境装置技術部 企画開発グループ 主席技師 |
〃 |
鈴木 匠 |
三菱重工業(株) 技術本部 横浜研究所 環境装置研究推進室 主任 |
〃 |
西澤 和樹 |
三菱重工業(株) 技術本部 横浜研究所 熱・化学研究室 |
〃 |
伊藤 邦憲 |
三菱重工業(株) 横浜研究所 次世代製品企画スタッフ チームリーダー |
〃 |
宮野 弥明 |
三菱重工業(株) 原動機事業本部 産業エネルギー部 顧問 |
事務局 |
柴崎 治生 |
(財)シップ・アンド・オーシャン財団 常務理事 |
〃 |
加藤 郷 |
(財)シップ・アンド・オーシャン財団 業務統括部長 |
〃 |
福井 義人 |
(財)シップ・アンド・オ一シャン財団 業務統括部長 |
〃 |
瀬部 充一 |
(財)シップ・アンド・オーシャン財団 業務統括部 調査役 兼海洋政策研究所 首席研究員 |
〃 |
三木憲次郎 |
(財)シップ・アンド・オーシャン財団 業務統括部 技術課 課長 |
〃 |
酒井 英次 |
(財)シップ・アンド・オーシャン財団 業務統括部 技術課 係長 兼 業務課 係長 |
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