3.4 分類項目等からみる小学校と中学校の教育内容の比較
(1)小学校と中学校の共通内容
表16は小学校と中学校の共通内容を示したものである。これより、小学校よりも中学校のほうが詳しい教育内容(表中○印)は、小学校では17件(38.6%)、中学校では31件(46.3%)あり、「歴史上の貿易」から「南蛮貿易・朱印船貿易などの貿易」など、より詳細な内容となっている。
また、小・中学校で同様の教育内容は(表中□印)、小学校では44件中8件(18.2%)、中学校では67件中9件(13.4%)みられ、『社会』では「栽培漁業や養殖漁業など資源の管理をする漁法」、「四大公害病などの海の汚染による公害」など小学校で6件、中学校では8件みられた。このように、同じレベルで小・中学校にわたって繰り返される教育内容は重要性が高い事項であるといえよう。
『理科』については、3者共通の教育内容が小学校では3分類項目10件あったが中学校では1分類項目1件にとどまった。この中で、小・中学校で同様の教育内容は海水から食塩を精製する掲載のみ1件であった。
表17は小学校と中学校における独自の内容について示したものである。小学校の教科書のみにみられた教育内容としては、『社会』における「漁師の後継者不足など漁業の問題点」「宗谷岬・天神崎などの地域環境の様子」など、日本国内の身近な地域や問題点に関する掲載がみられた。また、中学校の教科書のみにみられた教育内容としては『社会』の中で「アメリカ・中国などの国の沿岸部」「世界6大陸3大洋の位置関係」など、世界を捉える教育内容がみられた。
表16 小学校と中学校の共通内容
|
教科 |
分類項目 |
教育内容 |
対応 |
掲載数 |
小学校
(190) |
社会
(186) |
水産業
(68) |
栽培漁業や養殖漁業など資源の管理をする漁法 |
1 |
□ |
27 |
日本の主な港の漁業生産量や漁業の特徴 |
2 |
○ |
15 |
大陸棚や200海里などの漁業水域とよい漁場の条件 |
3 |
○ |
11 |
沿岸漁業・遠洋漁業・沖合漁業の特徴 |
4 |
○ |
10 |
水産物の運送などの取り組み |
5 |
△ |
5 |
歴史
(56) |
歴史上の航路・航海・船 |
6 |
□ |
15 |
元寇など歴史上の海戦 |
7 |
○ |
9 |
出島や伊能忠敬の日本地図など鎖国時の産物 |
8 |
○ |
7 |
歴史上の貿易 |
9 |
○ |
6 |
ペリーが軍艦を率いて浦賀沖に現れた黒船来航 |
10 |
□ |
5 |
歴史上の漁業・漁法 |
11 |
○ |
4 |
鎌倉などの海岸の町並みや様子 |
12 |
○ |
4 |
鑑真や遣唐使など文化交易 |
13 |
○ |
3 |
条約改正のきっかけであるノルマントン号事件 |
14 |
□ |
3 |
環境
(25) |
海洋汚染・保全・対策 |
15 |
○ |
14 |
四大公害病などの海の汚染による公害 |
16 |
□ |
9 |
暖流や寒流などの海からの影響による気候の交化 |
17 |
○ |
2 |
生活
(6) |
港など海の環境保全 |
15 |
○ |
4 |
暮らしを支える瀬戸内海の橋 |
18 |
□ |
2 |
国土
(18) |
日本の範囲・四方が海に囲まれている |
19 |
○ |
12 |
宗谷岬などの海岸 |
20 |
○ |
4 |
暖流や寒流などの海からの影響による気候の変化 |
17 |
○ |
2 |
産業
(13) |
埋立地や工業施設など港の利用状況 |
21 |
○ |
8 |
臨海工業 |
21 |
○ |
5 |
理科
(4) |
物質
(4) |
海水から水・食塩をつくる方法 |
22 |
□ |
3 |
海水は食塩を含む |
22 |
□ |
1 |
中学校
(227) |
社会地理
(107) |
産業
(45) |
世界と日本の漁業の漁獲量などの比較 |
2 |
○ |
19 |
太平洋ベルトなど臨海部の工業地帯 |
21 |
○ |
14 |
養殖漁業・栽培漁業の特徴 |
1 |
□ |
4 |
水産物の運搬 |
5 |
△ |
4 |
遠洋漁業から沖合漁業へ変わるなどの漁業変化 |
4 |
○ |
3 |
大陸周辺の大陸棚など世界の好漁場 |
3 |
○ |
1 |
地形
(26) |
リアス式海岸などの海岸の分類・利用 |
20 |
○ |
14 |
日本各地の様々な海岸形態 |
20 |
○ |
6 |
日本や臨海工業地帯の海岸線 |
21 |
○ |
4 |
水深平均が約200mである大陸棚や干拓と埋め立て |
3 |
○ |
2 |
環境
(16) |
干潟の保全など環境保全 |
15 |
○ |
7 |
赤潮・タンカー事故・リゾート開発などによる汚染 |
15 |
○ |
6 |
水質汚濁が原因の水俣病などの四大公害 |
16 |
□ |
3 |
地域
(4) |
地域を活性化する瀬戸大橋 |
18 |
□ |
4 |
気候
(8) |
海の影響による気候の違い |
17 |
○ |
4 |
地中海や沿岸域の気候特性 |
17 |
○ |
2 |
気候による地域の分け方 |
17 |
○ |
2 |
領域
(8) |
日本の領域・領海・200海里などの経済水域 |
3 |
○ |
8 |
社会歴史
(109) |
外交
(47) |
南蛮貿易や朱印船貿易などの貿易 |
9 |
○ |
13 |
出島やキリスト教の禁止など鎖国時の産物 |
8 |
○ |
12 |
渡来人・遣唐使・遣隋使などの文化交流 |
13 |
○ |
12 |
ペリーが軍艦を率いて浦賀沖に現れた黒船来航 |
10 |
□ |
7 |
条約改正のきっかけであるノルマントン号事件 |
14 |
□ |
3 |
戦争
(28) |
太平洋を舞台にした太平洋戦争や真珠湾攻撃 |
7 |
○ |
7 |
艦隊による海戦が起こった日清・日露戦争 |
7 |
○ |
7 |
大野城の水域や自然の要塞である鎌倉の防衛施設 |
12 |
○ |
5 |
元が軍船で九州北部に攻めよせた元寇 |
7 |
○ |
5 |
イギリスの軍艦と清の帆船が戦ったアヘン戦争 |
7 |
○ |
4 |
生活
(7) |
アイヌ民族のサケ漁 |
11 |
○ |
4 |
原始時代に始まった漁業 |
11 |
○ |
3 |
日本列島
(8) |
伊能忠敬の日本地図や地図の移り変わり |
8 |
○ |
8 |
交通
(9) |
歴史上の航路・海の輸送路 |
6 |
□ |
9 |
産業
(10) |
足尾鉱毒事件など近代の工業発達と公害問題 |
16 |
□ |
4 |
いわし漁やくじら漁など近代・江戸時代の漁業 |
11 |
○ |
4 |
第二次世界大戦後の北洋漁業 |
11 |
○ |
1 |
廃棄物の処理に無関心のため起こった海洋汚染 |
15 |
○ |
1 |
社会公民
(8) |
公害
(6) |
四大公害や土壌汚染・騒音・地盤沈下など産業公害 |
16 |
□ |
4 |
タンカー事故による石油の流出 |
15 |
○ |
1 |
瀬戸内海のゴミの不法投棄 |
15 |
○ |
1 |
法
(2) |
領海の範囲は海岸から12海里などの取り決め |
19 |
○ |
2 |
1
(3) |
水溶液
(3) |
海水の性質・海水から食塩を生成できること |
22 |
□ |
3 |
|
|
「□」は小中学校での同等の教育内容。 |
「○」は中学校の教育内容のほうが詳しく、「△」は小学校の教育内容のほうが詳しい。 |
表17 小学校と中学校の独自内容
|
教科 |
分類項目 |
教育内容 |
掲載数 |
小学校
(275) |
社会
(46) |
水産業
(20) |
漁師の後継者不足など漁業の問題点 |
7 |
水産業の移り変わり・今後の対策 |
7 |
水源林を活用するなどの海洋資源保全 |
6 |
環境
(9) |
水源林などの自然環境 |
4 |
宗谷岬・天神崎などの地域環境の様子 |
3 |
海岸の清掃などによる海岸保全 |
2 |
生活
(14) |
大漁旗や祭など海辺の暮らし |
7 |
海水から真水を生成するなど水の循環 |
4 |
昔の海辺の暮らし |
3 |
産業
(3) |
沿岸の地形を活かした産業 |
3 |
理科
(39) |
地層
(23) |
海水の働きでできた地層 |
14 |
沿岸や海底における地層の形成 |
6 |
海洋生物の化石を含む地層 |
3 |
環境
(14) |
珊瑚礁や熱帯魚などの生物環境 |
5 |
水質を保つ水源林など海の資源の保全 |
4 |
干潟や浅瀬から生物と自然環境の関わり |
3 |
人が水に与える影響 |
2 |
物質
(2) |
海水の塩分濃度・水量 |
2 |
中学校
(119) |
社会地理
(63) |
産業
(5) |
港湾都市の変化 |
5 |
地形
(4) |
海溝の分布の様子 |
3 |
宇宙から見た海の形 |
1 |
環境
(10) |
自然海岸などの海岸・海流の分類・現状 |
7 |
ゴミ問題による港の埋め立て |
3 |
地域
(18) |
臨海副都心などの海に面している地域の特色 |
13 |
アメリカ・中国などの国の沿岸部 |
5 |
大陸と海洋
(12) |
地球の表面の陸と海の割合・広さ |
5 |
海底の様子・海溝の分布 |
3 |
世界6大陸3大洋の位置関係 |
3 |
太平洋を取りまくように連なった環太平洋造山帯 |
1 |
資源
(7) |
沿岸部に多い鉱産資源の豊富な地域 |
4 |
石油資源・深海底の探査など海洋開発 |
3 |
自然災害
(7) |
津波・高潮などの自然災害 |
7 |
社会歴史
(39) |
外交
(16) |
日本に鉄砲やキリスト教などが伝来した大航海時代 |
10 |
貿易活動の傍ら略奪を行った倭寇 |
6 |
戦争
(3) |
第五福竜丸など漁船が「死の灰」をあびた水爆実験 |
3 |
生活
(6) |
自然崇拝や海産物を生み出した神々の日本神話 |
6 |
日本列島
(5) |
大陸と陸続きのころの日本列島と日本列島の誕生 |
4 |
原始時代の推定海岸線 |
1 |
交通
(3) |
日本の海運業や造船業の発展 |
3 |
産業
(2) |
近代の大阪港・神戸港における産業 |
2 |
文化
(4) |
瀬戸内海を航海する人々の守り神である厳島神社 |
3 |
樺太沿岸や千島列島地域に栄えたオホーツク文化 |
1 |
社会公民
(3) |
法
(3) |
国際法の中の公海の自由 |
3 |
美術
(14) |
自然
(14) |
海をモチーフとした絵や写真 |
14 |
|
■小学校『社会』
東京書籍:新しい社会3・4年上 新しい社会3・4年下 新しい社会5年上 新しい社会5年下 新しい社会6年上 新しい社会6年下
教育出版:小学社会3・4上 小学社会3・4下 小学社会5上 小学社会5下 小学社会6上 小学社会6下
大阪書籍:小学社会3・4年上 小学社会3・4年下 小学社会5年上 小学社会5年下 小学社会6年上 小学社会6年下
■小学校『理科』
大日本図書:たのしい理科3年 たのしい理科4年上 たのしい理科4年下 たのしい理科5年上 たのしい理科5年下 たのしい理科6年上 たのしい理科6年下
啓林館:理科3年 理科4年上 理科4年下 理科5年上 理科5年下 理科6年上 理科6年下
東京書籍:新しい理科3 新しい理科4上 新しい理科4下 新しい理科5上 新しい理科5下 新しい理科6上 新しい理科6下
■小学校『生活』
東京書籍:あたらしいせいかつ1・2上 あたらしいせいかつ1・2下
啓林館:せいかつ上 わくわくせいかつ せいかつ下いきいきせいかつ
教育出版:せいかつ上 そよかぜ せいかつ下ひだまり
■中学校『社会』
東京書籍:新しい社会地理 新しい社会歴史 新しい社会公民
帝国書院:中学社会地理
大阪書籍:中学社会地理的分野 中学社会歴史的分野 中学社会公民的分野
教育出版:中学社会歴史未来をみつめて 中学社会公民ともに生きる
■中学校『理科』
東京書籍:新しい科学1分野上 新しい科学1分野下 新しい科学2分野上 新しい科学2分野下
大日本図書:中学校理科1分野上 中学校理科1分野下 中学校理科2分野上 中学校理科2分野下
啓林館:理科1分野上 理科1分野下 理科2分野上 理科2分野下
■中学校『美術』
日本文教:美術1 美術2・3上 美術2・3下
開隆堂出版:美術1 美術2・3上 美術2・3下
光村図書:美術1 美術2・3上 美術2・3下
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