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情報誌「さぁ、言おう」 2002年5月号

 事業名 高齢者のためのボランティア普及啓発活動
 団体名 さわやか福祉財団 注目度注目度5


グループホームの窓辺で
いろいろな人がいて当然・・・
 
 さわやか福祉財団が提唱しているふれあい型グループホーム。これは元気なうちから共に暮らすというもので、数年来、次第に関心が強くなり、財団への問い合わせも増えている。そこで、今月からは、グループホームに焦点を当てた記事を新連載。ぜひみんなで新しい住まい方の選択肢を考えてみませんか?
 
自ら選んで入居 初めての土地を楽しむMさん
 「ほんの出来心で決めてしったのよ」
 やわらかい日差しが差し込むリビングルームで、Mさん(78歳)はそう言って笑った。大阪に生まれ、ずっと関西圏で暮らしてきたMさんが、縁もゆかりもない関東のとあるグループホームに入居したのは4年前のことだ。
 「面白そうなホームができたわよ、と友達から聞いて、どんな所かしら、ちょっと見学だけでもさせてもらおうと来てみたら、海は近いし自然に恵まれた環境で、いっぺんで気に入ってしまって」
 それまでは兵庫県のケアハウスで暮らしていた。週に1度は繁華衛に出てデパートをはしごするのが楽しみだったMさんが、関東の海辺のホームに転居すると聞いた友人たちは、「あの人がデパートもない田舎で暮らせるはずがない。半年もすればきっと戻ってくる」と噂したという。「それが、ここに来たら、デパートなんてもうどうでもよくなっちゃって。野の花の一つ一つに目が止まって、自然って何て素晴らしいんだろうと、この年になって感動することばかり。それで友人たちの期待を裏切って(笑)もう4年になります」
 Mさんのホームは女性6人、男性2人、それに経営者夫婦の10人世帯だ。このほか看護師の資格を持つパートタイマーの女性が食事づくりに通ってくる。
 「3度の食事はみんなで一緒にいただきます。あとは自分の部屋で読みたい本を読んだり、お天気がよければ庭に出て花の手入れをしたり。欲しい物があれば町のスーパーで車で送ってもらって買い物もできるし、そうね、ぜいたくな老後だと思いますよ」
老後計画「70歳でホームへ」
 Mさんは「一人暮らしは70歳まで」と早くから決めていた。若くして夫と死別し、50歳まで私立学校に勤めたのち、いのちの電話や朗読のボランティアを20年余り。「老後の安心を求めて70歳を区切りにケアハウスに入りました。でも、そこにじっとしていられなかったのは、まだエネルギーが余っていたんでしょうね。今はもうここが終の住みか。もし叶うなら、全国にグループホームをチェーン展開していて、3年〜4年ごとにあちこちに移り住めたらいいなあと思うんです」
 Mさんがここを終の住みかと考える大きな要素は、経営者夫妻に全幅の信頼を寄せていること、偶然にもMさんを間接的に知っている入居者Aさんがいたことだ。夫妻はオーナーであり共に暮す管理人でありながら入居者一人ひとりへの気配りを欠かさないし、Aさんとはボランティア活動を接点に何でも話せる一番の友人になった。
 「8人の入居者が全員仲良く互いにお付き合いしているわけではないんですよ。中にはアルツハイマーになって全然コミュニケーションがとれない方もいるし、何年一緒に暮らしててもご挨拶程度の方もいる。でも、いろんな方がいて当然だとうし、互いの接し方は自然と決まってくるものですね。そういう点では、ケアハウスもグループホームも同じだなあと。そりゃあ一人暮らしならそういう煩わしさはないけれど、それも元気なうち。やっぱり人間一人では生きていけないものよ」
家族の希望で入居したNさん 救急車騒ぎに一人暮らしを思う
 Mさんの話に耳を傾けていると、経営者の奥さんが草餅とお茶を持って来てくださった。そして「Nさんが高い熱でね、今、救急車呼んだの」と言った。Nさんは91歳。昨年、家族の強い希望でここに入居してきた。
 「数か月前にも1度、救急車で市民病院に運ばれたことがあったわね」とMさんが言うと、「今日はちょうど娘さんが泊まりに来てるから、一緒に病院に行っていただくわ」と奥さん。そのやりとりを聞きながら、これが一人暮らしだったらどうしていただろう、とふと考えた。自分で救急車が呼べればいいけれど、それができないときは・・・。やっぱり高齢者の一人暮らしは危険がいっぱいだ。
 ホームには家族や友人が泊まれる和室のゲストルームがあって、Nさんの娘さんは毎月訪ねて来るそうだ。娘さんが来ると自室に2人分の食事を運んでもらい、母娘でおしゃべりしながら食べるのを楽しみにしているという。
 日が落ちるまでホームにお邪魔しての帰途、駅でNさんの娘さんに出会った。病院にNさんを送って、これから帰宅するところだという。一緒に電車を待っていると、「母は1日に何度も私のところに電話をかけてくるんです。未だに家族から無理やりホームに入れられたという意識があるみたいで。とても良くしていただいて家族は感謝しているのだけれど、母自身がそう思っていないのが残念なんです」と言う。
 自らの意思でホームを選んだMさんと家族の希望で入居したNさん。同じ環境の中で暮らしながらも、二人の思いはそれぞれに分かれる。Mさんはもちろん、Nさんだって、周囲から見れば恵まれた老後と思う人も多いだろう。しかし、ふれあい型のグループホームで生き生きと暮らす最大のポイントを考えたとき、やはりまず「自らの意思で決める」「自ら納得する」、これが一番なのだろうと改めて思う。
 Nさんの心の寂しさが、周囲の仲間や地域の人との交流で何とか薄らいでいってくれるといいのだけれど・・・、腰掛けた電車の窓の向こうを流れ行く景色を見ながら、ふっとそんな思いに駆られた。
ふれあい型グループホームは誰でも入居できる?
 元気なうちから共に暮らすふれあい型グループホーム。介護保険の対象となっている痴呆対応型グループホームと違って、自分たちが好きにつくるものだから基本的には入居条件もばらばら。
 一般的には「65歳くらい以上で、身の回りのことができる人」が多いが、それほど年齢にもこだわりはない。ただし、伝染性の疾病がある人、すでに要介護の状況にある人は難しいようだ。
 構成人数は家庭的なふれあいを実現するために、10人もしくは5世帯程度以下くらいが目安。夫婦、きょうだい、友人が一緒に入居することもできるが、いずれにしても、初めての人たちと集団で暮らすことになるので、多少なりとも我慢は必要だ。ただし「だいたいは、皆さん分別のある大人なので、実際に生活していく中で自然に付き合い方はできてくるもの」(グループホーム関係者)と、必要以上に構えることもない。
 入居を考えている人が、グループホームを選択する際にチェックしたい点として、主に以下の点を挙げてもらった。
(1)苦情の申し立てができる、入居者の話し合いの場が保証されているなど、民主的は運営がなされているかどうか。
(2)病気や怪我などの緊急時に対応してもらえる医療機関が近くにあるかどうか。
 また、(3)として事業体の経営者の主張や個性が強過ぎると、入居者との間に民主的な関係が築きにくいため、事前に経営者の考え方や人間性を知る機会をもつことも大切だという。
 そのほか、生活支援としてどのようなサービスが受けられるのか、介護が必要になったときはどのように対応してもらえるのか、共同生活を営む上でどのような生活のルールがあるのか、なども確認しておくとよいだろう。







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