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(座長 Dr. Chua)皆様おはようございます。本日行う南沙諸島の問題は非常にデリケートな問題ですし、また政治的にもあまり歓迎されないトピックスかもしれません。それはこうした国際機関に係わるものとしては非常に難しい問題ではないかと考えたからです。ですから私は最初はこのフォーラムの座長役にノーとお答えしました。しかし今日のこの南沙諸島の環境問題は非常に興味深いテーマだと考えています。このテーマによって一堂に集い非常に興味深い、また有意義なディスカッションができることを期待しています。これから講演者の方々にプレゼンテーションをお願いする前に、南沙諸島の問題について地理的なところからご紹介します。ある島では3m2の大きさしかないものもあります。また干潮の時にだけ一部が干出する干潮地帯もあります。この南沙諸島は政治的な問題も含まれていますが、今回のディスカッションにはそうした政治的な問題は焦点の中には入れて欲しくないと考えています。われわれは環境問題そして海洋学上でこの問題を話しあいたいと考えています。その点について同じく座長を務めるクロスビー先生も同意して頂けると思います。ここで改めて申し上げたいのは、南沙諸島は非常に戦略的に重要な場所にあるため、いわゆるナビゲーションの点からも非常に重要な場所なのです。各国がこの南沙諸島を保護するべきだという意味ではコンセンサスを得ています。これからは、このフォーラムの中で各国が同意できる分野を増やしていきたいと考えていますし、石油とガスが今後将来のディスカッションのテーマになると考えています。また、漁業の問題も何年も話し合われてきました。ですから今日は、いわゆるエコロジーの面から南沙諸島について話し合いたいと思います。今日のプレゼンとその後のディスカッションにおいても、環境問題での相互関連性を培うような形でのディスカッションをしたいと思います。いわゆる生態系、そして漁業問題での同意が得られるような形、またこうした生態系の相互関連性の中で何らかの着地点を見つけることができれば大きな飛躍になると考えています。政治的、生物学的にどのような問題が、そしてどのような関連性があるかはまだ明確ではありません。しかしこの中で生物多様性、この地域での漁業、またフィリピン、中国等の漁業に関連性があるのか、各国政府も漁業問題での同意に至ろうという意味で前進があったのではないかと思います。生物学的な解決策、そしてどのような形で解決できるのかということ、そうした点を今日のディスカッションでハイライトとし、相互関連性を強調してお話ししていただきたいと思います。併せて、午後には何らかの提言に至るようなディスカッションをして頂きたいと思います。これは今朝のプレゼンに基づいて行われるものです。今日午前中は4人のプレゼンテーションが予定されています。最初はクロスビー先生にお願いします。その後にイン・ワン先生、ジャン・ジャオミン先生、ホー・ション先生にお願いします。その後にパネルディスカッションを予定しています。パネルディスカッションではフィリピン出身のラファエル・ゲレロ先生が参加される予定です。また、ベトナムのブイ・ホン・ロング先生もこのパネルディスカッションに参加される予定です。ですから南沙諸島を取り囲む各国がこのディスカッションに参加します。残念ながらタイの先生はこの討論には参加しないということです。タイご出身の先生は南沙諸島を訪問されたことがあるということですが、タイはこの南沙諸島には関心がないということからディスカッションには参加されません。また、インドネシアからの参加者もいらっしゃいますので、各国の代表の方で必要な情報があれば、その都度皆さんにお聞きしたいと考えています。では最初のスピーカーのクロスビー先生に南沙諸島の環境問題のイントロダクションということでスピーチをお願いします。
 
(Dr. Crosby)おはようございます。最初にこのテーマの討論を企画された堀田先生、サクセナ先生に感謝したいと思います。この非常に重要なフォーラムに参加できたことは、大変喜ばしいことです。また、この南沙諸島の環境問題という特別なフォーラムにチュア先生と共に座長を務めることができて非常に感謝します。今朝は学際的な協力的なリサーチについて話をしたいと思います。特に南沙諸島での、いわゆる国境を超えた協力関係について一つの示唆になるのではないかと考えています。また、南沙諸島の非常に特異な環境的特徴についても紹介したいと思います。この件については他の方のプレゼンテーションも非常に有益だと考えていますし、ディスカッションもこのあと予定されているようです。最初に、昨日私が紅海におけるマリンピースパークリサーチについて紹介しましたが、その前にこのプログラムを見るためにより広範な視点に立った説明をしたいと思います。
 イスラエルとヨルダンは、北東部で41キロの沿岸部分を共有しています。ここはウォーターフロントプロジェクト、経済特区等さまざまな開発のインフラ等が行われて急成長している地域です。エーラトとアカバは50年代は非常に人里離れた場所でしたが、この20年間に急成長しています。観光シーズンのピークには人口が2倍にまでなります。またアカバ湾はヨルダンにとってはいわゆる唯一の港ですし、エーラトはイスラエルにとっては紅海そしてインド洋に繋がる唯一の港で、今後10年間でここを利用する船の数は2倍になるとみられています。沿岸開発、産業そして商業活動はこのアカバ湾で活発に行われています。石油、水産資源そして天然資源等の輸出等が行われています。紅海と死海をつなぐ運河も作られています。こうした活動というものが非常に重要な経済的な発展の機会を両国にもたらしています。しかしこれがこのアカバ湾のサンゴ礁の生態系に大きな影響を与えるのではないかと考えています。そしてそれが将来的には観光収入の激減に繋がるのではないかと心配しています。ですからこの中でアカバ湾と南沙諸島、特に南シナ海のこの生態系の影響について申し上げたいと思います。
 アカバ湾のサンゴ礁等の海洋資源に対しては、いわゆる統合的なデータマネージメント、包括的な科学的な評価といえるものがまだ行われていません。これに対するマネージメントアクションもありません。このような統合的、科学的研究がないということが問題となっていますし、これに対しての政策対応もとられていません。またマネージャーと科学者に伝えたいのですが、これは中東だけの問題ではありません。私の個人的な経験、アメリカの経験から見ても申し上げたいのは、こうした問題はいわゆるマネージャーと科学者が相互に協力しあっていないため、問題が起こることを私の経験から申し上げたいと思います。このようないわゆる科学者と科学、政府の対応の間で差があること、これは非常に科学的な問題として重要だと考えています。ここにダイヤグラムの形で出ていますが、これまで伝統的、科学的な研究で、いわゆる科学的な研究はこうしたメソッドに基づいて行われています。しかしこの中で、例えば天然資源の管理、一般大衆への啓蒙活動という形での関連はあるのでしょうか。ここにはありません。しかしここで申し上げたいのは、新しい知識を今後広めていきたいと考えていることです。例えばアカバ湾の管理、そして政策方針の決定をいわゆる学際的な科学、マネージメント、教育そして啓蒙活動に基づいて発展させていきたいと考えています。こちらにフローチャートがありますが、フリオロジカルエコロジストということでこうしたチャートを使っています。こうすることによって私は頭の中で考えを概念化させることができるので、このチャートを使わせていただきます。こちらが伝統的、科学的研究で、いわゆる客観的な科学に基づいて研究が行われます。政治や一般大衆の意見に左右されないのがこの科学的な研究です。しかし赤い箱に示されているのは新しいパラダイムです。つまり科学のアウトプットで、この中で新たに知識、情報の伝授、伝播が行われます。それによって新しい政策が決定されるということです。一般大衆への啓蒙活動が非常に重要です。というのは、政治家は一般大衆の意見に左右されることが大きいからです。またこうした啓蒙活動をすることによって、政策にも前向きな影響があるのではないかと考えられています。マネージャーと科学者が協力することによって問題を特定し、いわゆる社会経済学的な問題に対応することが必要だと書いています。併せて必要なプログラム計画を樹立させるべきだと書いています。こうした新しいパラダイムの実行を、紅海のマリンピースパークコーポレイティブリサーチという我々の研究で使いました。このゴールはイスラエルとヨルダンの天然資源の運営管理に対して科学的な理解と知識を伝えることです。物理的科学的生物学的なプロセスがこのアカバ湾におけるプロセスヘの理解を深めていくことによって天然資源、そして政策決定の管理に前向きな影響を与えて欲しいのです。
 この点についてもっと詳しく申し上げたいと思います。このピースパークは、94年のイスラエルとヨルダンの和平協定の後に作られました。これはイスラエルのサンゴ礁で、またアカバマリンパークはヨルダンにありますが、そこにあるサンゴ礁を保護することが目的とされ、その2年後に白書が発表されました。この中で、いわゆる紅海のマリンピースパークコーポレイティブリサーチが作られました。そしてそのあとワークショップが作られたのです。ここでは科学的に何を優先させることが必要かが話し合われました。そしてその問題が特定され、長期的な協力関係においてサンゴ礁管理や両国の研究において必要な問題点に気付くことが必要だと判断されたのです。ここでは41kmの沿岸部を共有しています。27kmがヨルダン側で、イスラエル側に14kmの海岸線があります。そしてこの中でいわゆる海洋資源を共有するということ、また、チュア先生がさきほどおっしゃいましたが、いわゆる相互関連性もまた海洋環境においては重要性が指摘されました。この中の海洋生物は受動態であれ能動態であれお互いに関連しあっているものです。またサーキュレーションはお互いに関連しあっています。ですからお互いの海洋資源において関連性があります。海洋資源には国境が存在しません。また今日のディスカッションで重要なのは、政治的な側面は脇に置いて、純粋に科学的環境論に徹した話し合いをして欲しいと考えています。またアカバ湾周辺の環境および南シナ海の環境をみていただければ分かると思いますが、お互いに正しいかたちで監視を行い、この重要なサンゴ礁を維持していくことが必要だと考えています。これまでヨルダンとイスラエルもそうだったのですが、独自に活動するということは非常に断片的な側面しか研究できません。ですから協力することが必要なのです。このため、このレッドシーマリンパークピースコーポレイティブリサーチがヨルダンとイスラエルの協力関係のもとに行われました。国境を越えていわゆる環境保護、海洋資源の持続的な利用を目的としたのです。それによって観光資源の増加に繋がることが期待されています。ここで重要なのは、このようプロジェクトがいわゆるフルパートナーシップという形で始まったことです。これは科学関係の技術資本だけでなく、天然資源の管理資本等も加わって行われたものです。またアカバ湾には経済特区もあります。イスラエルの国立公園では天然資源の管理そして2つのリサーチエージェンシーとエーラトの大学の研究所そしてアカバのマリンサイエンスステーションが協力している、3つの優先課題があります。最初は小さな目標からはじめようと考えています。重要な情報を得ることによって3つの優先順位を決めました。最初は海流の研究です。サンゴ礁の状況、いわゆる分布図を作ることと監視プログラムを作り、適当な形でマネージメントを行うということです。このパラダイムの成功は、アカバ湾であっても南シナ海であっても重要なのは科学とマネージメントが協力するということなのです。またこのプロジェクトのもとヨルダンとイスラエルが協力し、それぞれのメソードを活用し、プロトコールを利用し、統合的なデータマネージメントを利用しないと、アカバ湾の状況をきちんと分析することはできません。またこのプロジェクトはこの海洋公園の資源を研究し、それとお互いの両国における規制に関してもその価値判断に基づくものになっています。またこの国境側では漁業をしてはいけないといいながら、その向こう側では漁業をするということになったら環境は破壊されます。ですからこういう形で協力して、お互いに漁業を禁止することが必要なのです。コミュニケーションの重要性についてあらためて紹介したいと思います。強調というコーディネーションの重要性についても紹介したいと思います。国境を越えた研究、監視プログラムはお互いのデータベースの共有が必要ですし、このジョイントデータベースも非常に重要です。いわゆるリサーチとモニタリングのデータを共有することが必要なのです。皆さんは専門家ですからご存じだとは思いますが、この発表会が評価されれば例えば給与が増えたり、データを発表する事によって評価されることに繋がります。しかしその中でこうしたデータを発表する場合、それぞれ個人の成果というふうに評価されたいと考えています。しかしこれにはお互いのデータベースを共有することが必要です。お互いに自由にワークショップを開き参加することが必要ですし、協力して出版物を共同で出版するコミュニケーションテクノロジーが必要です。私はもしこうしたことが中東でできるとしたら、そして中東の2国間で科学を一つの原動力として協力関係を維持することができれば、これは世界でも可能だと思います。こうした国境を越えた海洋環境の研究、監視というものの具体例としては、カリブ海の東部でも行われています。パレスチナ、ヨルダン、イスラエルの協力関係について話すのは今はとても適切な時とはいえないかもしれませんが、将来的にはそうした協力関係も可能かもしれません。この中で情報の共有、研究協力を行うことも可能かもしれません。またパキスタンとインドの協力関係も考えられるでしょう。アドリア海の旧ユーゴスラビア諸国も協力関係ができるかもしれません。キプロスをめぐるギリシャとトルコの共同研究も必要かもしれません。南沙諸島という南シナ海でのこうした島々の共同作業も可能だと考えています。東アジアの保護地区に関する第4回会議では、公式にマリンセッションの中で決議が採択されました。こちらに書いてありますが非常に重要な意義があると思いますのでご紹介させていただきます。この決議の中には次のように書いてあります。紅海マリンピースパークリサーチ・モニタリングマネージメントプログラムが示すように、APECも同じような形で国際的な研究協力や監視プログラムを作ることが必要だと書いています。これは南沙諸島の環境を巡って、そして海洋資源の保護のために必要だと書いています。これはこの3月に行われた会議で採択された決議案です。このことを念頭に置いて簡単にこの地域の状況を説明したいと思います。この後のスピーカーが非常に詳細な報告をされると思いますが、一般的な概要だけ説明します。
 データによって異なりますが南沙諸島には主な島が51あります。また100から230の非常に小さな島があります。サンゴ礁なども多数あります。海域の面積は25万km2、地表の面積は5km2しかありません。非公式な発表ですが、177億トンの石油天然ガスが埋蔵されていると言われています。しかしこれらは未確認の情報です。比べてクエートには130億トンの石油天然ガスしかありません。ですから南沙諸島が世界で第4番目の含有量かもしれません。海抜で一番高いところでも4mしかありません。この地域はまだ大半が開発されていませんし、ここに住んでいる住人はいません。南沙諸島のサンゴ礁の状況は、比較的よいという言葉をあえて使わせていただきたいと思います。西沙諸島を入れると、こちらの方はサンゴ礁海域の面積は5, 752km2となっています。またスーパータンカーを見ていただければ分りますが、平均的に年200回スーパータンカーの通行があります。このスーパータンカーの航路は南沙諸島の近くを4億5, 000万トンの原油を積んで移動しています。ですからもしここで石油タンカーの事故があったとしたら、その影響は非常に甚大なものになると考えています。またチュア先生も先ほど紹介しましたが、先ほど国際会議で採択された決議案について説明しました。このフォーラムで提起したいのは、どのような形で提言を出すことができるかということです。この特定の保護区に関して、例えば専門家でない方もいらっしゃいますが、その中で統合された科学プログラムが設立できればと考えています。またPACONが積極的にこうした決議案の提起をしていければと思います。しかしこの件に関してはパネリストの皆さんにお任せしたいと思います。ありがとうございました。
 
(座長 Dr.Chua)非常に興味深いプレゼンテーションをクロスビー先生に行っていただきましてありがとうございました。もしこの中で何か明確にして欲しいというご質問があればお願いします。ここでの提案ですが、定義に関してのディスカッションはこのあとのパネルディスカッションに任せたいと思います。それでは次は中国南京大学のイン・ワン先生にお願いしたいと思います。この地域については、中国でも非常によく知られた研究所に在籍され、以前から研究を重ねていらっしゃる方ですので、これ以上のご紹介は必要ないと思います。ではワン先生お願いいたします。
 
(Dr. Yien Wang)ご紹介ありがとうございました。お二人の座長の先生、そして今回の事務局の先生方、今回招待いただきましてお話しする機会を得たことは本当に嬉しいことだと思っています。この問題について、最近はあまり大きな仕事を集中的にやっているわけではありませんが、いろいろな問題のある地域ですので、この南シナ海における地質学的観点から、南シナ海の海底地形の話をしたいと思います。科学者の話ということでお聞き下さい。
 この南シナ海は、菱形の形をした海洋の中央盆地、海盆という形を成しています。これが中国における一番の地質学的な断層です。南シナ海を含んでもう一つ南北のものがあります。地質学的な構造として、二つの構造が合わさって南シナ海を構成しています。一番深いところをセントラルベイス中央海盆と呼んでいます。これは海底火山の噴火によってできたものです。ここが非常に応力のかかった応力断層でここの玄武岩が真ん中に蓄積してこのような形を構成しています。火山脈の一つは北東から、もう一つが南から北へと走っています。ここには北東・南西軸が広がっています。長さ500km、幅800kmということで、これが東西のものです。中央の水深は3, 400mです。これは北の方です。しかし南の方へ行くと4, 200mにも達しています。そしていくつか非常に深いところが海盆の中にありますが、こちらは4, 400m以上にもなっています。中央海盆の海底は非常にフラットです。0. 3〜0. 34%位の非常に穏やかな勾配です。そして非常に深い谷部分がこの断層の応力によってできています。北東から南西軸のこれは3, 000m以上あります。ここには27くらいの海底火山が海底から1, 000mくらいのところにあります。いくつかの海底火山は海底から3, 400から3, 900m程度の高さがあります。火山性のもので、玄武岩でできています。そして海底に20以上小さな丘状のものがあり、これらの高さは400mから1, 000mです。そして堆積物、サンゴ礁がこのような海底火山の上に蓄積しています。ですからこの深さ、あるいは厚さはサンゴ礁が1, 000m以上になっていると思います。ということはつまり、海底が沈下するに連れてその上にサンゴが重なっていったということです。しかし水没したまま海中のままというものもあります。
 次は大陸斜面についてです。香港あたりから始まっている斜面は、海中の大地のように見えますが、これでも非常に勾配がきついところがあります。断層の地域となっているところもあります。そしてこの深い海溝、ここが中央海盆と呼んでいるところです。こちらが南沙諸島です。大陸斜面のこの部分に島があります。マーチン大陸棚、そして勾配があります。そして2つ目にこの大陸斜面についてお話したいと思いますが、この中央海盆の両方の側にブロックされているような状態になっています。階段状の形状の大陸斜面があります。これらは平行した断層の沈下によって形成されたものです。これが南シナ海全体の面積の49%を占めています。つまり大陸斜面が非常に重要だということです。南シナ海全体の中でもまた南沙諸島でも西沙諸島もこのタイプに属しているということです。水深1, 500から3, 500mのところが北西部にあります。南シナ海では非常に深い海盆が、大陸斜面前部にあります。そして3, 800から4, 000mの水深があるのが大陸斜面の反対側です。つまり南部の方が深いことになります。ここが海南島ですが、これが大陸から西沙諸島につながります。英語ではパラセルアイランドといっています。この大陸斜面はここが深い海盆で、そしてこちらがフィリピン諸島になります。ここは階段状の大陸斜面になります。この斜面は大陸棚のドロップオフということでできたのですが、平行断層プロセスによってできあがりました。この勾配のベットロックといわれる基盤のところは花崗岩と変成岩からなっています。これはアジア大陸の隣接したところと同じで、アジアの大陸と連結していたのですがそれが離れてしまったのです。しかし基盤となるベットロックは同じだということです。海底のこの台地部分が海底から数千mのところで、そしてこちらが西沙諸島です。そして東沙諸島もあります。この東沙諸島はプラタスアイランドという名前ですが、これがパラセル大陸斜面が中央海盆の北西部に位置しています。ブロックパターンの沈下というのが北東を走る断層ゾーンから来ています。東沙諸島から台湾の方へ、そしてポンフー諸島へつながっているということです。水深は900から1, 100mですが、このようなベットロックの上に環礁があり、環状のサンゴ礁となっています。水深は200m以下のもので火山島がいくつかあります。つまり花崗岩と変成岩とがあり、その上に火山質の地層があるということです。1, 100m水深の海溝が西沙諸島と東沙諸島の間にあるのです。そしてトラフもあります。これが1, 500mから3, 400mの水深です。その幅は8〜10kmとなっています。長さは420kmとたいへん長く、崖のような部分が勾配がきつくなっていて、最近中国ではフレミングボーアイスというものが発見されています。非常に深い海溝ですが、トラフが非常に深く冷たい水で圧力が高いため、800万tの氷状になっているようだというのです。南そして中央の南部、そして南東部は南沙諸島と呼んでいます。英語ではスプラトリーアイランドと呼んでいます。そしてこれがやはり大陸斜面に属しています。相対的な高さは海底から2, 400mあります。ここでもやはり北東から北西へ走る断層帯があります。もうひとつ真ん中のところにもあり、南北方向にもあります。ということは南沙諸島は両方で分離されているということを意味しています。海底の台地という形状は西沙諸島と同じですが、西沙諸島とは中央海盆によってへだたれています。水深は約1, 800mでこれは南沙プレートと呼ばれていますが、これよりは1, 800m高く、谷状のところに海底火山もあります。そして200のサンゴの諸島があります。クロスビー先生が先ほど詳しくお話になりました。また浅瀬部分もありますし水没したサンゴ礁もこの北東方向に発展したものに沿ってあります。この南沙プレートのベットロックはやはり西沙諸島と同じように変成岩、花崗岩、変成岩という構成になっています。大陸棚だったものが分かれて沈下し、ステップのある階段状の大陸斜面になったものです。この中央海盆の北側、これもやはりステップ状の大陸斜面となっていてこれが東沙諸島です。この上の方の水深は700mで、勾配は3. 4%で他の部分より少し勾配がきついようです。そして一番勾配がきつい部分は27. 7%という勾配になっています。東沙諸島は大陸斜面の上にあり、あるエリアは台地状になっていて全体の面積が12, 000km2あります。水深は300から400mです。この中央海盆の東側のフィリピン側には、非常に狭い、勾配のきつい斜面があります。ここの端のスロープの幅は38海里です。勾配は170. 8%から119. 3%あり、非常に勾配がきつくなっています。そして穏やかな方の勾配は17. 7%で、パラワン諸島の沖合にあります。大陸棚は南側を構成していますが東側の方が島のところが大陸棚になっています。大陸棚の東がパールリバー(珠江)河口部分になっていて、大陸棚のほとんどが水深200mほどです。しかし西側になると379mにもなります。これがパールリバーと呼んでいるところです。大陸棚の幅は150海里で、中国本土に沿った形です。しかしこの島の周辺は狭くなっていて、対岸の東側では7. 5海里、海南島の南側では50海里になっています。この形でパールリバーの方に繋がっています。南シナ海の南側では沖合150mの水深で、幅は300kmです。そこにはたくさんのサンゴ礁があります。ヘイエスリーフや南ルカニア浅堆あるいはルリス浅堆、パーソンズ浅堆などがあります。そしてこの大陸棚の北側に位置している環礁地域サンゴ礁地域の水深は北の方は8mから9mくらいで10m以下です。深いところでも20から30mで、水没したままの環礁です。島の環礁の先端部の東部分はフィリピン諸島の端のところに沿った部分に分布していますが(ルソン島やミンドロ島、パラワン島など)、水深が150から300mです。そしてこの海峡がパラワントラフに沿った形で分断されています。今日の話の中では簡単に、海底の地質、地形について紹介しました。全体についてもこの地形を考えるのは非常に意味があると思います。この地域環境の保護のためにも重要だと思ったのでお話ししたのです。南シナ海海域のロケーションマップで1948年に中国政府が発行したものがあるのですが、歴史的、伝統的にこの海の行政でこうなっています。これは国際的な政府間の合意によっても認識され識別され承認されているものです。これは1945年、第2次大戦後のポツダム宣言の中でも言及されているものです。ありがとうございました。
 
(座長 Dr. Chua) ありがとうございました。ワン先生、大変包括的な海中の地形、地質についてお話をいただきましてありがとうございました。大変参考になりました。何か具体的にここがわからなかったので教えて欲しいというような質問はございますか。
 
(Dr. Hou) 高雄から参りました。東沙諸島等について先ほど地質学的なお話がありましたが、私は生態学の方の話をしたいと思います。最近この南沙、西沙諸島について、ウォーターフロントのレクレーションプランニングを考えていますが、すべての生態学的なシステムを南沙、東沙で全部守っていきたいと思っています。環境汚染のないこの素晴らしい地域を是非守っていきたいと思って調査をしています。私どもの運輸通信省の調査もありますし、環境保護庁の調査もあり、たくさんの保護計画をこの二つの諸島に対して考えています。非常に美しい島々なので、ワン先生がこのお話をして下さったのはとても嬉しいことと思いました。少し付け加えたいのですが、今のコメントにもお礼申し上げたいと思います。







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