(座長 Dr.Guerrero)第2セッションにいらしていただきありがとうございます。午前中は日本の方に発表していただきました。午後はブイ・ホン・ロング先生に、そして2番目のスピーカーはウィリアムズ先生です。ではベトナム国立海洋学研究所のブイ・ホン・ロング博士にご発表をお願いします。
(Dr.Long)今日の発表タイトルは漁業資源およびベトナムにおける養殖漁業と漁業の特性です。6つのパートからなっています。まず、ベトナムにおける漁業資源の調査、2番目はベトナムの地形と海洋環境の特性、3番目は海洋資源と養殖の状況、4番目に労働と社会、5番目は漁獲及びその養殖における困難と課題、6番目はその方向性を探るというものです。
それではまずベトナムにおける漁業資源の調査について紹介します。ベトナムの漁業資源の調査はこれまで何度も行われています。これは海洋生物資源のうち主なものに漁業があるためです。この調査はベトナム南部の海域などにおいて行われています。
2番目は皆さんに手短にベトナムの地形及び海洋環境の特性について説明します。まず海洋環境特性ですが、漁業に関連する部分のみに限らせていただきます。地形上の特性では、べトナムは北部のトンキン湾とそれ以外の南部に分かれます。まず面積ですが、海洋及び植物プランクトンがどのくらいに配分されているかについてです。3番目はベトナム沿海部では底生動物がどのようになっているかという点です。そしてベトナム東部及び南東部、南西部における配分です。全体的な漁業資源は、ベトナム沿海部においておよそ75万9,000tです。生態的なバランスは年間14万tぐらいです。そして18万tくらいの資源量です。ベトナムの大陸棚の水深200mあたりはトンキン湾の半分くらいにあたります。そしてベトナム南西部で30m以浅の部分では漁業資源が292万400tです。どれだけ漁獲されているかというと53万5,000tです。この限定されている地域の沿岸部からの漁業資源は190万tです。そして漁獲高はわずか39万9,000トンです。これらの漁獲の状況は一部の専門家が調査しました。調査に基づいて推定されている数字はその沿海漁業は浮魚資源です。深海魚などを含まない浮魚の漁獲高は170万tです。その内最大漁獲量は、69万tです。深海部分を除いた漁獲は125万tです。その密度は平均して2t/km2で、漁獲資源は1万tですが、これらは1991年のデータです。漁獲の可能性は2,500tです。ほとんどが浮魚でベトナム海域におけるものです。漁業資源は299万tです。その漁獲可能性のあるものは110万tで、この漁業資源と漁業可能資源が一番高いのは、東部ベトナムの海域で41%です。中部ベトナムにおいては20%で、南西ベトナムでは19%です。トンキン湾では16%程度となっています。1995年の漁獲高は900tです。この漁獲高はトンキン湾では減少しています。しかし、1994年と比べて全部の部分では4%ほど増えています。遠洋漁業では45万6,000tで、これは33%ほどの構成割合となっています。この後で統計値をご紹介しますが、ベトナム海域の外国籍の船舶の漁獲高が30〜50万tぐらいあるということをご紹介します。今は水深50mの中深海部で漁獲が行われていますが、ここでは86%の割合となっています。そして馬力によってどれくらいの違いがあるかということでは、最近は増加傾向にあります。次は養殖ですが、面積は37万5,000haです。34万2,500haの海域で行われていますが、それが海洋の養殖に適しているとされています。近年においてはその沿海部で養殖が行われています。2001年に行われている部分は22万haで、この養殖で漁獲高が上がりました。2001年のエビはおよそ16万tの漁獲がありました。現在養殖が行われているのは海水域においてのみで、2001年のエビ養殖の漁獲高は2000年と比べ1.5倍です。この生産高が160億匹以上のエビの稚仔を養殖によってかえしたものですが、それがおよそ4,000tに上っています。この漁獲高による輸出額は2001年にはアメリカドルで17億ドルに上っています。さてベトナムの養殖はエビ、カニ及びロブスター等です。25の沿海部の礁で養殖が行われています。ベトナムでは社会経済的な問題点、中部ベトナムの沿海部ラグーンにおける問題点があります。沿海部におけるどのような問題かというと、沿岸部でどのように管理していくかという点です。沿岸漁業は小型の船で漁業をしているということがあるので、これを限定しないと破壊的な漁業になってしまい、禁止を厳しくしていくべきであるのです。そしてこの資源を守っていくためにはこういった小型漁船による漁獲を制限していくべきであると考えています。特にその海洋生物の産卵地域では制限すべきだと思います。またどのような海洋資源があるのか、どういう漁業方法がとられているかということを調査すべきだと思っています。ベトナムでは新たな漁業を開発していきたいと考えていますが、1990年から今までのこの漁場と漁業の方法や技術と沖合漁業について定義していきたいと思います。そしてこれも沖合漁業についてですが、200馬力、400馬力、600馬力のエンジンのついた船舶を用意していくべきだと考えていますし、どういうような漁獲方法をとるかというモデルを実験すべきだと思います。現在のベトナムでは、沿岸漁業では過剰漁獲が問題となっているので、その点について政府は沖合漁業も開発していきたいと考えています。今朝は松田先生が日本の状況をお話くださいました。ベトナムもやはりこの沖合漁業を開発していきたいと考えています。今非常に複雑な問題がベトナムではあるのですが、それは伝統的な沖合漁業の方法を持っているということです。そこで、第一に漁場がどうなっているのか、どのような漁獲方法がとられているのかを調査すべきだと考えています。この漁場がどうなっていくのかという方法論を定義しなくてはならないのです。それで様々な調査が現在行われています。この報告の中には全部の調査結果を盛り込むことはできませんでしたし、1990年以降のものは入れることが出来ませんでした。
次に養殖についてですが、沿岸部の漁業をこれからおさえていきたいということで、水産養殖に力を入れていきたいと考えています。またベトナムからの海産物の輸出は、2001年にかけて増えてきていますが増えているのはその養殖部分のみです。養殖では調査、計画、開発が必要です。どの部分で養殖をするかを重点地域について調査すべきです。またそういったモデルを他の地域にも適用していくべきであると考えています。水産養殖をベトナムの中でも考えていますが、資源上の競合があります。どの部分を農業に使い、どの部分を水産物の養殖に使うかで沿海部の競合状況となります。例えば環境、水上交通や産業用に使うものとの競合があります。ですから統合された経営管理モデルが必要です。その沿海部においては水産モデルの開発が必要です。それからマングローブの再生及び海洋植物の開発が必要です。こういったことが急速に今立ち上げられています。ベトナムの農業生産物のためにマングローブ林が破壊されてしまったということがありましたが、これの再生が現在進められています。これまで10年間、マングローブは減る一方でした。10年間で大きく減少しましたが、養殖を行う上では開発が必要であると考えています。それは食糧生産と加工及び水産物の保全、貯蓄のために必要です。干潟でもそれを行っていき、ロブスター養殖、二枚貝養殖に重要な技術の開発が必要です。そうすると漁業に頼らなくてもすむと考えています。それから環境上の問題ですが、監視システムを設定していくべきだと考えています。これは水質及び水質管理をしていくためです。ベトナムにおいては現在までのところ毎年何件か沿海部で赤潮が起きています。赤潮が発生するということは毎年水質についての管理が必要であることを意味しています。沿海部における赤潮の害があるかを管理していき監視システム制度を作ることが大切なことですし、これは環境保全のためです。また加工業及び輸出では、水産加工物と輸出の技術を高めることが必要です。これは輸出の基準に達するものを作るためです。その機械的な計画やロジスティックス(運輸)及びサービスに対する投資を行っていくこと、管理メカニズム、政策、特に沿海部の漁業及び地域についてそういったものを完成させることが必要です。また漁業の資源保全と国全体の資源保護との間で協調し、地域を作ることが必要です。その保全管理及び希少海洋資源、今絶滅の危機に瀕しているものを再生するような施設が設定されることが必要です。また人材開発・訓練が必要で、全ての段階における経営と、漁業者に訓練を施すことが必要です。特にべトナム沿海部において中核となる人材を育てていく共同管理を進めることです。モデルが沿岸部の県において今設定されていますが、カンホア県において初めて設定されました。我が機関もそこに設置されています。このベトナムの漁業及び漁獲についてのお話をこれで終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
(座長 Dr.Guerrero)ありがとうございました。ロング博士にベトナムの情報についてお話いただきました。ここではモデルやどういうプロジェクトがあるかについてお話いただきました。
(質問)なぜベトナムがこれから共同管理をしていきたいのか。漁業管理について共同運営を進めていきたいというのは主にどういう理由でしょうか。
(Dr.Long)これは非常に興味深い問題ですが、ベトナムでは現在対立があります。それは様々な沿岸部に対する多様な目的があるということです。まず地元の人達が沿岸部を利用したいと考えています。そして2つ目の理由は、政府の当局者が沿岸部を利用、開発したいという対立があります。沿岸部はもともと地元の漁民が漁業活動をしていた場所だったのですが、非常に需要が高いという状況でした。沿岸部は環境や資源といったことも考えずにどんどん開発したいということもあったのですが、もはや沿岸部の乱獲が進んでしまったということから政府及び政府の当局が発言するようになりました。問題解決のためにそうなると政府及び地元地域社会との間で共同運営、共同管理をしていかなければならないと考えているのです。現在の資源状況を理解して乱獲からの問題を対処していくということです。政府当局者だけの問題ではないというわけで、住民参加型の管理へ移行していくべきだと考えています。
(質問)今お話なさったその内水面養殖に興味があるのですが、これは世界ではよく知られている点だと思います。その排水を内水面養殖に使われているという事ですが現在どのような状況になっていますか。内水面の養殖の排水利用についてです。
(Dr.Long)内水面養殖ですが、淡水養殖は私の話には入っていません。その点について私はあまりデータを持っていません。
(質問)2つ質問があります。1つは共同管理ということではなく、エビ養殖についてです。まず、共同管理とその住民参加型の経営ということです。先程ベトナムの人々はマルチ目的の沿海利用に興味があるとおっしゃっていました。その時には漁業の立場はどういう位置づけになるのでしょうか。こういった沿岸部は一年間を通じて年間を通じて漁民が使えるということなのでしょうか。それとも他の利用目的の、例えば一年を通じて行えるものなのかについてです。日本の例で申しあげると、例えば暫定的な利用です。漁業関係者が使っているのは年間を通して使っていくことが出来るだけではなく、毎年毎年使っていけるということです。ですから漁業関係者の立場は大勢の中に1人という立場ではないのではないかと思います。もしその漁業関係者が何かイニシアチブを取って、アプローチを統合管理することが出来るのであれば非常に良いと思いますが、時にはそれほどうまくいきません。大勢の中の無勢ということになってしまうと非常に大きな対立が起きるのではないかということで、ベトナムの状況に対する疑問がこの点です。それからエビ養殖についてですが、台湾、フィリピン、インドネシア、タイといった多くの場所では非常に深刻なエビの病気の被害がありました。マングローブが伐採されたからということもありましたが、ベトナムの戦略はどのように考えているのでしょうか。こういった教訓が他の国からあったことを受けたからですか。
(Dr.Long)非常に興味深いご質問ありがとうございます。ベトナムは養殖を台湾、タイや他の国から学んでこのエビ養殖事業を開発しています。現在のところベトナムのエビ養殖はそれほど強く進められているものではありません。沿岸部に面して25州がありますがどの州でも規制や規則があります。このエビの養殖についてそれを中央政府がどうやってこれを管理できるか非常に難しい状況にあります。それぞれの州が勝手に規則や法制を決めているからです。またマングローブの森林がある地域は、非常に高いポテンシャルのある地域です。エビ養殖にはじゃまだとして、多くの地域でみんながマングローブの森林を伐採してしまう問題があります。中央政府は何とかしてこういった組織上の規制を導入しようとしています。ベトナム沿岸部において、このような状況を次に皆さんとお話できる時には減っているとご報告できればいいと思います。先程最初の点で申しあげたことと関連しますが、ベトナムでは伝統的にその法規制が沿岸部でも共有であると、それぞれ違った地域の人達がここを共有して搾取が出来ると考える伝統があります。ということでこれは管理が難しい部分です。現在設定しようとしているのは漁業協会です。地元の漁業組合、協会のようなものを設定して水資源、水地域についての管理を行っていきたいと思っています。将来的には違う地域の人々やその地元の人々の違う目的のための対立というのが減ってきているかもしれません。こういった対立が非常に強くなって中央政府がそれに介入し、規制を行っていくことが考えられます。どのようにそれを使用していくのか、沿岸部の使用についての中央の規制が導入されることによってです。現在はそれがまだ充分に行き届いていないのです。
(座長 Dr.Guerrero)ロング先生どうもありがとうございました。次はスリランカのペレラ先生にお願いします。ペレラ先生はスリランカの国立水産資源研究開発庁にお勤めです。
(Dr.Perera)私は国立水産資源研究開発庁に勤めています。この水産資源研究開発庁(National
Aquatic Resources R&D Agency: NARA)は水産資源開発等の関係者に対して最新の科学・技術・テクノロジカルなアドバイスを与えているところです。私どもの部門は水産資源の推進にあたっていますが持続可能な発展をはかり、国民の利益のために資源の最大限の利用をはかっていくのが使命です。今日の私の話ですが、スリランカにおけるサンゴの白化及びサンゴ礁の破壊についてお話します。インドとモルディブに関しての情報はいろいろな発行物にありますが、今日はスリランカについていろいろな資料に基づいた発表をします。
このリポートはいわゆるサンゴの白化現象、そして東南アジアにおけるサンゴ礁その他の環境破壊における社会経済的な評価、影響評価についてです。スリランカ、インドそしてモルディブのサークと言われる地域は7つの国が、ありますがインド、パキスタン、バングラディシュ、スリランカそしてモルディブがこれに参加しています。アジア太平洋地域には世界の人口の半分が住んでいるといわれ、そのうち70%が沿岸地域に住んでいます。この地域全体に通じて社会経済的なリーフをベースとした主な産業は漁業と観光です。特にインド、スリランカでは漁業と観光が中心になっています。インド洋地域は世界の中では沿岸地域として最も人口密度が高いのです。このほとんどが貧しく、動物性タンパク質の摂取量が高く、しかも収入を漁業に頼っていると言われています。そして漁業が大きな脅威にすでにさらされると共にサンゴの白化が起こっています。インド、モルディブ、スリランカ等はすでにエルニーニョの問題のためにサンゴ礁の殆どが、いわゆる白化という現象を経て死んでしまうという被害を受けています。このサンゴ礁での漁業の重要性をスリランカ、インド、モルディブで見ていくと、これは雇用を喪失するという影響があります。
スリランカでは特に漁業に生計を得て、かつ食用の魚と輸出用の魚を得るということでロブスターなどの漁業に頼っている面が大変強いといわれています。スリランカのサンゴ礁での漁業の重要性は、食料と雇用を提供するという意味で非常に大きくなっています。
次にインドですが、サンゴ礁は沿岸の保護そして漁業のために重要です。そして観光業の発展のために特にポテンシャルがあります。アンダマン海のニコバル諸島では将来的にはラクシャトリープ環礁においても観光振興があります。インド全体ではサンゴ礁からの収入は今のところ重要ではないですが、これから経済的に重要になる可能性が高いといわれています。現在のところ全国のインドの漁業統計の中には沿岸漁業は入っていませんが、今後は重要性が増すものと思われています。
次にモルディブです。サンゴ礁が重要なのは観光業が1番大きく、次に漁業そして沿岸保護、水族館用の魚の取引となっています。そして現在は観光業が拡大していて98年にエルニーニョの問題がありましたが、それでも観光客は増えています。モルディブではサンゴ礁域の一部がエルニーニョの影響を受けました。漁業全体に対して占める役割はあまり大きくありませんが、総体的な割合としては重要度が上がっています。マグロ漁業のための餌となるような魚は環礁リーフで取れます。サンゴの白化の影響、そしてリーフでの漁業の破壊等、1998年のエルニーニョによる気候変動の影響により、多くが大きな影響を受けましたが、モルディブ、スリランカそしてインドの西部環礁の一部が環礁を失いました。ところがスリランカの東部分そしてアンダマン諸島の殆どでは影響を受けていません。こういった損失に加えて大きなダメージが、特にサンゴ礁の鉱物資源が汚染のために影響がでています。しかも人口が増える中でこういったプレッシャーが大きくなっているという問題があります。次にこれはサンゴの白化の影響がスリランカ、インド、モルディブではどれくらいかということを比較したものですが、インド、モルディブと比較するとスリランカの場合は中程度あるいは低い段階にあり、モルディブの場合には良いあるいは中程度の状況にあるという数字がでています。沿岸開発や海洋ベースの汚染であるとか乱獲の問題等が9,000kmのサンゴ礁がインド洋地域で1番高いリスクを受けています。
サンゴの白化が観光業に与える影響は、リーフの状況によります。サンゴが白化を起こし、その後サンゴは死んでしまいます。これは98年に起こりましたが、観光業にも大きな影響を与えました。このインド洋地域諸国の観光業も影響を受けていますが、影響の度合いはそれぞれ国によって異なっています。
次はスリランカの場合の観光業の影響を紹介します。サンゴの白化の影響はまちまちであるというのがスリランカの状況です。というのは、この問題1つだけを取り上げることはできないからです。グラスボートのオペレーターは、非常に色のきれいな魚がいれば観光業はうまくいくが、そうではないという場合もあります。この情報に基づくと外国人観光客は98年以前にはたくさん来ていましたが、98年以降は減っています。ある程度この問題について情報を集めたところ、このトレンドは少し変わってきました。サンゴの白化についての経済的な被害がどれくらいかはなかなか推定が難しいですが、スリランカではだいたい米ドルに換算して年間100万ドルといわれています。実はサンゴの白化の被害額はもっと一ケタ高いのではないかと言われています。200万ドルという数字も一ヵ所からは上がっていました。インドと比べてみると、インドでの観光はかなり広い範囲のものがあります。多様な目的のために観光客がやって来ますが、サンゴ礁はあまりアクセスが可能ではないし、許可がないとなかなかサンゴ礁へ行けないので、インドの観光業はまだ充分に利用が進んでいるというところまで行っていません。
次にモルディブですが、モルディブの観光業が非常に劇的な発展を遂げたのが70年代以降です。現在年間で43万人が来ています。過去5年間では年間で8%ぐらい伸びています。観光業は漁業と並んでモルディブの最大産業の一つになっていて、これがDGDPの95%を占めています。そしてスリランカの状況を論じた時にも紹介しましたが、なかなかこの問題だけを取り出すことが出来ないので数字は難しいのです。しかしながら、モルディブを見てみると、エルニーニョの影響があっても、かなり地域としての魅力は高いということです。モルディブでは観光客の数に関してはサンゴの白化はあまり大きな影響を与えていません。コスト面、経済的な面のケーススタディをやってみると、98〜99年に対してモルディブ経済に与えた影響は米ドルで300万ドル程度と推察されています。政府の政策、法律そして立法ということについても、スリランカではいろいろな政府省庁がスリランカ周辺の海域の責任を担っています。例えば水産資源開発管理省や森林環境省等省庁がいろいろな形で関わっています。政府の政策について、今度はインドを見てみます。連邦政府の沿岸規制ゾーン通知が91年にあり、これが沿岸環境に影響を与えるような活動について規制をしています。自然生物保護法が72年にあり、これは保護地域に対しての保護、そしてある程度の海洋地域の保護も規制しています。そしてより厳しい保護措置の実施を奨励しています。サンゴ礁の保護も86年に環境保護法で、そして国家保護戦略政策声明を92年に出しました。そこではサンゴ礁その他の保護について表しています。アクョンプランも保護のためにあり、これが中心となってインドのサンゴ礁の資源保護、国際的な保護のイニシアチブの中心にもなっています。
次にモルディブの現状を紹介します。モルディブには2つの主な立法があります。87年のモルディブ漁業法と93年の環境保護法があります。伝統的な管理システムは、ある地域の環礁について行われていることもあります。具体的に全国に対して適用される規制としてコーラルマイニングが92年に導入され、改正作業が現在進められます。多くの政府の部門がこのサンゴ礁の管理保護に関わっています。これは地域的な勧告としてはスリランカで出ているものですが、こういった勧告についてまず社会経済的な資源利用の側面をモニターする、代替的な雇用計画を開発する、資源管理を全ての漁業部門について行ない、詳細な研究を重要なサンゴ礁資源について確認のために行い、保護地域について経済的な保護を加えていく。そしてコーストガードなどについても効果的なリソースの使用が可能な支援を行っていくこと等々があります。
次にインドですが、どんな勧告が入っているかというと、ICLARMの役割と権限を強化し、これが政策プログラムとしてサンゴ礁資源に関連するものを調整していく中心的な役割を果たす機関となっています。政府、地元のいろいろなグループなどのコーディネーシヨンをとっていき、アクションプランを作ります。そしてモニタリング活動を強化していくことなどが勧告されています。次にモルディブでは、より多くの訓練の機会を資源保護、管理、評価等について与えていき、政府の研究者、地元のコミュニティー、NGOのあいだの協力作業を深めていくなどが得られています。ありがとうございました。
(座長 Dr.Guerrero)サンゴの白化現象について、それから影響と経済的な側面について研究結果をスリランカ、インド、モルディブの3ヵ所について発表してきました。スリランカ問題は私自身が直に体験しましたが、このリポートは他の2つの国は発刊物などからとった情報をもとにまとめています。
(質問)質問をはっきりさせておきたいという点でよくわからなかったのですが、財務的コストと経済的コストの違いは経済学者ではないのでよくわからないのですが、フィナンシャルコストとエコノミックコストはサンゴの白化による影響についてですね
(Dr.Perera)非常に困難なのです。損失の推定は難しいのです。モルディブはまだ観光客を惹きつけています。白化現象があってもなお魅力があるのです。しかし私の母国のスリランカでみると、この問題があるために殆どの観光客が他の国に行き先を変えてしまったのです。同時にどんな問題が実際あるのか、シフトをおこすための要因は何なのか、それからサンゴの白化はある程度は進んでいますが、この破壊的な漁業方法もサンゴ礁の劣化の1の原因なのかもしれません。経済的に見ると一番サンゴ礁の破壊で一番影響が大きいのは何かという観点で見ます。
(質問)劣化について自然的な原因のものと人工的な原因のものとがあると思うのですが、こういった自然現象であるエルニーニョに起因して起こるものについてはどう対応するのでしょうか。98年のサンゴの白化はエルニーニョが起こしたのが原因でした。
(Dr.Perera)確かにエルニーニョが原因でした。こういった管理というのは人工の、人が起こした問題についてどう対応するかということに集中しているのですが、管理とおっしやる場合に特に私が申しあげられるのは、スリランカにおいては人口が増えているため、殆どの漁民ができるだけ多く漁獲量を上げようとしています。そういった活動のため殆どの魚の資源が乱獲され、過剰に利用されるという状況になっています。殆どの漁業労働者が破壊的な漁法を使っています。非常に高いパーセンテージでそういった漁法が定置網、底刺網などといった形で行なわれています。この2つを使っている、ロブスターや環礁魚の一つが獲えられているのです。こういった害のある違法な漁法を使うとかなり漁獲高をあげることができます。でも私の国スリランカでは破壊的な漁法というのは法律では禁じられているのですが、それでも漁民はこのような漁法を使っていい収穫高をあげたいというのが現状です。
(質問)サンゴに対する破壊と水産的な生物に対する破壊で水産生物を壊滅的に取ってしまう、刺網、底網みたいな話と両方あったのですが、今言われましたサンゴ礁の白化はどういう原因で発生したのか。エルニーニョと関係したのかそれとも別の二次的なものからか。エルニーニョといえば水温が上がるだけでしょうか。それが生態的にサンゴの生育を悪くしたかあるいはそれによって他の生物がサンゴ礁を食べたという実質的な被害状況というのは出てこなかったと思うのですが説明をお願いします。
(Dr.Perera)スリランカの場合には、実際には水産資源がだんだん減ってきています。サンゴの白化が起こる前から減ってきています。これは破壊的な漁法のためなのです。ところがこの白化現象が起こった後はこの問題がますますひどくなっているのです。これはこの漁法の問題と組み合わさったわけで、そのためにどんどん資源の減るスピードが速くなってしまうというという状況が起こりました。両方が加速度的に組み合わさってしまったのです。サンゴの白化の原因がエルニーニョなのかどうなのかとそれ以外に何か結びつきをどなたか会場の方でも結構ですので意見を頂けますか。海水温の上昇というのが一つあると思うのですが、浅瀬ですと水温はどんどん上がります。それからこの白化を起こす海藻の被害というのがもう一つあります。重要な見解ですので高温によってこの個々のサンゴがストレスの後死滅してしまい、海藻に対しても影響を及ぼすのです。途中で海藻が死ぬというようなこともあり最後にサンゴ礁の方の影響が出るのです。このサンゴの白化現象で何が起こっているかということについて、今も世界各地でいろいろな研究が行われています。私どものリーフベースにウェブサイトがあり、これがコーラルブリッジングについて一番包括的な情報提供しています。Reefbase.ruhanのサイトを見ていただくとわかるので、実際に温度の問題で何か起こるかが示されています。海水温の上昇がある特定の区域で起こると少なくとも1度、あるいはそれ以上の海水温の上昇が長期的に起こっていくと、周囲の温度が10日以上続けて上がっていくことがあるとサンゴの白化は必ず起こると、経験則からして10日以上、1度以上の温度上昇が続くと必ずサンゴの白化に結びつき、温度が途中で下がったりするとまた違いますが他の白化の理由がその温度以外にもあるといわれています。温度が一番強い要因であるということは明らかなようです。 |