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(座長Dr.Williams)それでは次の発表に移りたいと思います。最後のところで総合討論を行います。その時にまた松里先生にお伺いできると思います。次は山本先生にお願いします。山本先生は独立行政法人水産総合研究センター水産工学研究所所長をなさっています。
 
(山本)日本の研究所の2人目の山本と申します。よろしくお願いします。先程の質問の中にも入っていましたが、日本では沖合において特に200カイリ内の漁獲能力の増大によって資源が減少しています。沿岸資源も水域環境の悪化も加わり資源が減少しています。このような状況で2000年6月、水産庁が水産研究技術戦略というものを立てまして、以下のような重点課題が設定されました。これを受けて我々、独立行政法人や都道府県の水産試験場は、大学等と共同で水産に関する研究を進めることとなったのです。
 今の重点課題は8項目あります。その一つは水産資源の持続的利用のための研究の高度化、これについては2つほど説明します。2点目は積極的な資源の造成と養殖技術の高度化、これについても具体的な例を1つ述べます。3点目は水域生態系の構造機能及び漁場環境動態の解明とその管理保全技術の開発、4点目は水産業の安定的経営のための研究推進、5点目は先程からもニーズが非常に高いことが述べられていて、ニーズに対応した水産物の供給確保のための研究推進。6番目が漁業地域、漁村地域の活性化のための研究推進。これについても一点サンプルを述べます。7番目として、水域生物の機能解明と高度利用技術の開発。8番目の最後の項目は国際的視野に立った研究の推進で、この8項目を重点課題としています。
 ここでは私の研究所の関連している水産工学関係のいくつかの技術開発を取り上げて説明します。まず、水産資源の持続的利用のための資源量の推定、手法の改良を説明します。
 2000年に発効した海洋法に基づいて、日本では翌年の2001年1月から総漁獲量管理制度(タック制度)がスタートしました。現在は、サンマ・スケトウダラ・アジ・マイワシ・マサバ及びゴマサバ・スルメ・ズワイガニの7種について導入されています。この制度は漁獲そのものを規制することによって資源管理を行うものなので、従前から漁獲情報を基にして資源状態を推定していたので困難になってきています。そこで直接的手法、すなわち超音波を利用しました。計量魚群探知機や水中テレビカメラを用いて資源量を直接推定する方法等、こういう方法の技術開発が行われています。この図は曳航式のテレビカメラをそなえたズワイガニを調査する機器です。それからもう1つは、現在基礎研究の段階ですが生物のソナーの仕組みの研究です。イルカ等の生物が持っているソナーの仕組みを応用した魚群探知系の情報処理手法の開発という基礎的な研究を続けています。その他計量魚群探知機については、現在スケトウダラ資源の推定などが実用的な領域に達しています。現在開発され、または途中にあるとされるのはイカやオキアミ等の音の反射強度が弱いものに対しての探知です。これを出来るだけ正確に測るという方法の研究も行われています。その他そういう大規模な魚群がどのように構成がされているかも推定しモデルを作る上で推定精度を上げることも同時にやっています。2番目の問題として生態系にやさしい漁業生産技術の開発です。我が国の海域の生態系や生物多様性の保全を図りながら持続的な漁獲を上げるためには、漁業保全に配慮した漁業生産技術を開発することが必要です。具体的には小型魚の漁獲対象以外の生物や希少生物等の混獲をできるだけ避けるための工夫が必要で、この一例としてここにあげた二層式(二階建て)のトロールがあります。あるいは網の目の大きさを工夫した方法が用いられています。具体的には徳島県等ではカタクチイワシの保護のために目合を調整し、混獲の一例ではズワイガニとカレイ類を分けるという手法をとっています。
 上下の網のうち、下の網にはズワイガニが入り、上の網にも少し入っているのがAタイプであるという見方をしてください。上の網に入っているものを示すAタイプだと、72%のカレイと数%のズワイガニが入っているという手法も開発されています。その他にマグロ漁業において最近行われていることは、餌に色をつけて海鳥がその餌を間違って取って延縄にかからないようにする方法、あるいは生分解性繊維を用いて漁具であるカニ籠を作ったりしています。これによって混獲を防ごうという工夫もされています。それから人工湧昇流発生施設が最近いろいろなところで開発されています。人工湧昇流は深層水を上にあげることによって栄養塩の高いものを光の届くところに持ち込み、それによって食物連鎖から魚類を増やすという発想です。工学的なものとしていくつかが研究されています。図は人工海底山脈と称していますが、これの改良点は大きい物を安い材料で作る、かつ安全な物で作ったという思想です。下の図は構造物によって鉛直の渦を使い、上の方へ巻き上げようという装置です。その他に内部波エネルギーを用いて湧昇しようとする時に、その適値で調べる方法というものも行われていますし、下の図の構造物の他に、いろいろな提案及び実験的な研究も行われています。ある所では植物プランクトンの増殖が確認されたところもあります。それから四つ目は藻場造成です。これは日本では埋め立て等によって藻場が消失したり磯焼けがおこり、今まで海藻が生えていた岩場に海藻が生えなくなるということがおきています。写真は顕著にその良否が出ているところです。実線で囲まれた部分と点線で囲まれた部分に石のマウンドを作って、上の点線で囲った部分は全く生えなかったが、実線で囲った部分は海藻が生えたところです。こういう現象は何が原因かということを研究していて、第一にウニが摂食して海藻を食べ尽くしてしまったのであろうと言われています。こういう現象がどうして起きるかというと、ウニは波の波動運動によって海藻を食べられなくなるので、浅い所、岸に近いところでは海藻が食べられないで生えているが、深い所の沖の方の礁では食べられてしまったということです。その他にウニ対策としてはフェンスを作ってウニを取ってしまうと海藻が生えた、あるいは砂地の中に新しい海藻の着定基盤を設置したらついたという事例も報告されています。その他アラメ等の海藻の養生幼部を袋の中にいれたり、海草の種をまいて移植したりする技術開発もされています。最後になりますが、日本では最近はいわゆる増殖技術の1つとして中間育成を行っています。すなわち陸上で卵から孵らせた後に、ある程度の大きさ、ヒラメであれば3cm前後のものを実際の海の中に囲ってそこで少し大きくさせることをやっていますが、そのためにはきれいな水に囲まれた静かなところが必要だということで、今は漁港の中の泊地をきれいにする技術を研究しています。実際、実用的な技術としては波の運動を利用して防波堤の外側の平均水位を上げ、漁港の中にトンネルを通して運ぶという手法も開発されています。以上のような技術例を述べましたがこの辺で終わらせていただきます。
 
(座長Dr.Williams)大変興味深い例について触れていただきましてありがとうございました。会場から何か質問をお願いしたいと思います
 
(質問)最後の例の藻場造成は、広く日本各地で使われているのでしょうか。あるいはまだ技術としては開発中という段階なのでしょうか。
 
(山本)今回開発されて特に説明したのは、ウニに対する被害が大きいところで.日本の北日本、北海道を中心とした日本海側で被害が報告されています。その技術がほぼ開発されたということです。日本海側だけでなく太平洋側も北部ではこれが応用できると聞いています。残った日本の南方はウニの被害よりも最近では魚が海藻を食べてしまうという被害が報告されて問題になっていますが、これについてはここ数年、顕著になってきているので研究もまだ緒に着いたばかりです。以前もこういう報告がありましたが良い対策はまだ見つかっていません。
 
(座長Dr.Williams)ありがとうございました。他に何か質問があればどうぞ。また、議論したいという点はございませんでしょうか。
 
(質問)最初に質問したいのは人工湧昇流のことです。この施設はもう日本で利用されているのでしょうか。二つ目は経済的効果についてですが、この人工湧昇流を作ることによる経済的な効果についてお聞きしたいのです。というのは私どもの国はまだ開発途上国ですので、経済性がないというのが私たちの国の現状でして、経済的な効果についてお聞きしたいと思います。
 
(山本)この人工湧昇流発生装置はいくつかの実海域でテスト的に行われています。現在、日本近海の一ヵ所でテストされている段階です。それから潮流を利用したものが約10年位前に瀬戸内海に設置されています。それも今質問されたように、経済性がどういう問題になるかはその通りだと思います。どれだけの魚が捕れて効果があったのか、今は設置した後、計測していますが瀬戸内海でやった例では先程植物プランクトンが増えたということと、漁獲調査でその辺でどういう漁獲があったかということも報告されています。全体的にかつ永続的にどのような効果があったかということのデータはまだ得ていません。経済効果を出さなくてはいけないということが私たちの命題だと考えています。
 
(座長Dr.Williams)では、山本先生ありがとうございました。それでは次のご発表をお願いしたいと思います。日本の3番目の方のご発表をお願いします。松田先生は鹿児島大学水産学部所属で国際的な海洋政策を専門にしています。また海外のいろいろなプロジェクトでJICAやマレーシアのプロジェクトにも参加しています。水産業と環境保護に関するプロジェクトにも参加しています。
 
(松田)PACONの事務局に対して、私をご招待いただきこの重要な席でお話させていただく機会を得ましたことに対して感謝の念を申しあげます。
 では今日の話ですが、はじめに松里先生が今の日本の現状について話されましたので、私からはごく簡単に重要ないくつかの点を加えます。漁業問題を考える場合、常に私たちがまず考えなければならないのは食料の安全補償の問題です。日本はこの食料安全確保という問題に直面しています。というのは自給率が非常に低く、リスクが非常に高いのが現状です。ですから輸入だけに全面的に頼っていてはいけないと思っています。それからもう1つはこの表を見ていたくとお分かりいただけるように、世界全体の食料の問題です。こういった食料の問題が何年も前から叫ばれてきました。そして将来どうなるかという不安があります。日本もそうなのですが、若い方々はファストフード・西洋型の食事にすっかり染まっているので、そのために穀物、食肉の消費量が上がっています。ということから地球がこういったライフスタイルを今後も維持していくことが出来ないことが判っているので、このライフスタイルを何とか変えなければいけないと痛感するのです。次に日本の漁業のトレンド傾向を示します。漁獲高の推移を太平洋のトロール網漁や3つの種類の主な漁法について取り上げています。まき網、北太平洋のトロール、そして沖合ですが、今どんどん深刻な問題をかかえているのが日本の漁業です。ですからこういった産業的な漁業だけに頼るということはなかなか出来ないことで、全体像を最初から考え直してみなければいけないところに至っています。そしてもうひとつ申しあげておきたいのは、中国が生産を大きく伸ばして来ているということです。中国がこのように生産高を伸ばしている理由は、おそらく藻類の養殖が進んでいるからではないかと思います。これは中国の漁業の生産高を示していますが、こちらに出しているのは藻類です。1998年の昆布の収穫高を示していますが、400万tの水揚げが記録されています。これは昆布だけですから、昆布以外のものを足すと600万tになります。そうすると明らかにいい影響を漁業資源に与えていると考えられます。日本ではこのような仮説を深刻に受け止めてこういったもののテストを行ないたいと進めているところです。これは任意の自発的なものですが、非営利団体としていくつか問題に挑戦し、海藻あるいは藻類の養殖を日本沿岸近海で進め、日本の沿岸の漁業の生産高をなんとか2倍にさせたいと努めているところです。
 戦後の歴史をちょっと振り返ってみると、6つの重要なイベントがありました。まず、第一に戦争直後です。第二次世界大戦直後に水産業の民主化が行われました。これは歴史的に大きな意味のあることです。この時期までは水産業は民主的な思考を持っていたものではありませんでしたので、日本が戦争に負けた後、マッカーサー将軍が日本の民主化政策をどんどん進めましたが、その1つが漁業だったのです。そのために新しい雰囲気が日本でも生まれました。2つ目が日本の漁業がスローガンを持ったことです。これは沿岸漁業から沖合漁業へ、そして遠洋漁業へというスローガンです。この方向に沿って多くの漁業技術が開発されました。そういった動きがあったために、日本の沿岸漁業が軽視されることがありました。そういった時代はもう終わったのだという認識があったので、そのことが今深刻な問題を引き起こしているという面があります。沿岸に戻ってみると、もう魚の捕れるところがなくなってしまったという深刻な問題があります。そして3つ目は経済成長で、1960年代以降私たちは日本の奇跡といえる経済成長を達成しましたが、その結果非常に重いつけを払わされることになったのです。それから4つ目は石油危機で、1973年に始まりました。ここにはたくさんのチャンスがあり、その当時、我々の政策を変える機会はたくさんあったのですが、経済的な政策というものは非常に重要性を増したため、環境的な考慮は無視され経済を追及したことから問題を先送りしたという面があります。そういった問題に今直面しているのです。それから貿易の自由化が行われました。そして国連海洋法会議という動きがありました。これらすべてが日本の漁業にマイナスの影響を与えたのです。そして5つ目は、こういった経済成長に伴って人々のライフスタイルが変わり、漁業は魅力的な仕事ではないと考えだしたのです。「きつい、汚い、危険な仕事である」ということで若い人々がなかなか漁業に注目しないようになってしまいました。教育機関でも水産漁業関係のところは今でもたくさんあります。それが戦後の時代で漁業の初期の開発においては非常に重要な役割を果たしてきたわけですが、そういった教育機関は今やうまく機能していません。というのは学生がなかなかこないからなのです。学生の中でも、こういった健全な漁業発展のために尽くそうという気持ちを持った学生がこないからです。その結果として昨年、日本政府はこういった問題を考慮して、私たちの考え方や態度を将来に向けて変えていかなければいけないということから、漁業の行動規範のようなものが昨年実施されるに至りました。これは漁業に関する法律のいくつかを自由化して、この漁業部門でもエンジニアリングという部門を強化していこうという方向がうち出されました。1945年に日本は敗戦を迎えました。当時、日本の魚獲高は約200万tぐらいでした。これらすべてが沿岸漁業によるものでした。ところが今や沿岸漁業の漁獲高は170万tくらいしかありません。これが捕獲漁業の生産高です。つまりこの期間にいろいろな技術も開発されましたが、漁業は非常にお金がかかるものになったがその割に生産高は少ない。この問題は魚の価格がこれだけ上がったということに支えられているのです。寿司や刺身で生きた魚をそのまま食べるという特別な文化的な風土が日本にはあります。特に高度成長期あるいはバブル経済といわれた時代には会食、宴会等のパーティーに供されたのです。そういったものがひとつには支えてきたというがあります。そのために魚は非常に高いステータスを持った食品になってしまいました。ですからこれだけ値段が上がっているのです。ところが一方で輸入されている製品にはより安価なものがあります。最近寿司、刺身は人気のあるメニューで、子供たちにも人気があるのは輸入されたものが安く購入できるようになったからです。戦後初期の時代、日本政府は食料の安全補償に注目しなければいけないということで漁業を奨励しました。それで拡大したわけですが、1970年代になって石油危機が起こりました。また東京ラウンドといわれるGATTの関税交渉がありました。そこでは貿易の自由化を目指した交渉がいろいろと行われ、その話し合いの中でこの漁業の品目が貿易自由化の対象となりました。1970年代以降、そのために漁業の自由化が進みました。また、同時に漁業が輸出産業から輸入産業へと転じました。石油危機はこの遠洋漁業・沖合漁業にはあまり影響を与えなかったので、1988年いわしの漁獲高はここでピークを迎えました。そしてアメリカでも北太平洋の漁場を日本に対して閉ざすということになってしまったので、そこでは日本はもういわしを捕れなくなってしまいました。その後沿岸漁業をなんとか再建しなければならなくなり、水産増養殖や資源の造成などを含めてやっていかなければいけないという状況に至ったわけです。ここでいくつか失敗についてお話したいと思いますがほとんどの失敗はその機会をうまく利用できなかったミスマネージメントからきていると思います。たくさんチャンスはあったのです。例えば水産業に関する法律です。これは沿岸の漁業者に対して多くの利点を与えてくれるものでした。ご存知のように漁業労働者は商業銀行からお金を借りることは出来ません。それはリスクが大きいビジネスだからです。しかし日本ではお金を借りるための非常に良い方法が開発されました。そして漁民の方々もこういった金融を利用できるという利点ができました。漁業法では漁業協同組合法と関連して、他の国の漁業組合あるいは農業組合とは大きく異なっています。何故かと言うと、この漁協というのは2つの機能を持っているからです。1つは行政管理でもう1つは経済的な機能です。こうしたものがこの日本の水産業に関わる法律によるものなのです。1962年に何が起こったかというと、この日本の漁業法がいわゆる伝統的な規範と現代的な法律的な追い込みが合わさってミックスしたものだったのです。伝統的な枠組みというのは、すなわちすべての漁村の住民は漁業をする権利があり、沿岸に沿ったところで魚を捕る権利があるといったことを認めたものです。第二次世界大戦直後、すべての住民はこの漁協のメンバーになれたという事情がありました。しかしその後になって専門化が始まり、地域によって事情は違いますが何らかの資格がないと一年に30日、90日、100日以上操業するという基準ができたのです。62年には日本政府が漁協の管理的機能を側面強調するという転換をしました。それまではメンバーもどちらも漁業の権利についても、主張できる権利の損害補償であるとか、自分たちが持っている権利、つまり共同漁業権というものを持っていたのです。権利を主張できていたのですが、そのことによって漁協という組織がユニークなものであったのです。1962年に法律の改正が行われ、どのようにして漁民の間で合意を得るか、海面あるいは共同漁業権の地域についての施要を取り決めていく、その合意をどう持つか、金銭的な補償などについても個々に関わってきたのです。例えば埋め立てというプロジェクトがあっても、公共投資をすることになると公共の目的があるということで、これはいいことなのだからなぜ同意しないのか、合意しないのかということになったのです。政府がサポートしているプログラムであるならば賛成するのが当然ではないか。それで当初この埋め立てに反対する環境保護派の人々もいましたが、その交渉あるいは補償の金銭・金額ランクがあり、そのレベルがどんどん金銭的に上がっていくと合意し、漁協も同意するということになったのです。そのためにこの環境保護を主張する人々はがっかりしたのです。そういった政府の資金が口止め料という形になって漁民たちは環境保護の人々や一般国民とうまく手を結ぶことが出来なくなってしまったのです。結局は補償金をたくさん得たいと思ったからです。これが悲しい状況ということで第二次世界大戦後におこりました。もう1つはそういったチャンスが失われるということがありました。そしていま責任ある漁業ということでこれが中核的な問題となっています。しかし漁業者は、自分たちの情報あるいは特定の調査結果などの公表をなかなか進んでしたくないという傾向があります。同様に環境保護のいろいろな活動家に対しての情報公開がなかなか進んでいません。魚体にどれくらいの農薬が残っているかという残留物量の調査はもちろん行っているのですが、研究結果はこれが魚の価格に影響することでなかなか調査結果が公表されません。ですから消費者としてはより良い状況をもたらしたいと思うのであれば、漁民の方々の懸念も是非消費者の方で理解しないとなかなか状況改善にはつながらないのが現状です。こちらに出したのは漁協の組織を示したものです。ここに漁業権の管理があります。漁協は漁業権を管理しています。中には指導部、コミュニティーサービスなどの部門があります。この部分はいわゆる行政管理的な機能ということです。日本では漁民に対して、こういった行政的な管理コストを減らしたいし、政府がコマネージメントをやりたいのであればこの漁協のシステムで非常にうまくなされます。政府はこの漁業権の管理を漁協に委ねて認めてきました。そこで漁業協同組合がこういった管理に関する問題を、沿岸域では全部対応する事にいまでもなっているのです。
 鹿児島県は南北に約600kmの長さがありますが、鹿児島県にはパトロールボートが2隻しかありません。これでは充分ではありません。これだけの広い範囲を充分に監視できないということで、漁協と沿岸警備をする人々、警察等との間で協力関係がうまく行われればいいのですが、こういった行政管理的な機能は特に日本ではユニークだとみられます。それから同時にこのような行政機能を持続していかなければいけないのです。これらは自分たちの経済的な側面、自立、自治ということに持っていかなければなりません。供給、マーケティング、レンタル活動等も認められているのはそのためです。そこで収入を得てお金をこちらの活動に使う事ができるという組織になっています。このような管理機能をうまく動かしていくための収入源です。そしてクレジット、保険や融資等もあります。リスクのあるビジネスなのでこれが非常に重要になります。こういったものをその連盟、県や国としての連合等を作ることによって政府がこれら全てのものをバツクアツプしてきました。ですからチャンスはここにあったのです。非常に良いものなのですが、うまくいかないで今のような状況になってしまったのはどこに原因があったのでしょうか。先程いいましたように漁民の数は減っています。そしてどんどん高齢化しています。後継者の問題もあります。なぜこういう状況になってしまったのでしょうか。いくつかの管理で間違いや、お金を借りすぎたという事もありました。金利が低いということで過去にはどんどんお金を借りることができました。このシステムを通じれば簡単にお金が借りられたと、返済はあまり考えずに借りてしまったという重大な問題もありました。それで現在はそのために不況、景気後退となったのです。こういったものが非常に大きな問題になって、深刻な問題となっているのです。そして全ての海岸に沿って、すべてのエリアが共同漁業権でカバーされています。ですから、何らかの漁業労働者からの合意が得られなければ、私たちは沿岸では何もできないということになりました。海洋技術の開発についても全ての理解を漁業労働者から得られなければ出来ないし、彼らの協力を仰がなければ何もできないのが現状です。それを無視してしまえば問題に立ち向かうことになります。全てがこの漁業権でカバーされています。しかし水産生物の成長期には沿岸エリアの60%以上が産卵などの場になっていたのですが、埋め立て等で破壊されてしまいました。ということで、現在、資源の枯渇が水産業で言われているのは捕獲しすぎだけではないのです。自然環境の中で産卵が出来る場所の破壊にこういった人工的な影響が加えられたため、自然資源の枯渇が出ているということです。
 それから成功例も見てみたいのですが、北海道のホタテの漁業についてです。北海道は漁場としては非常に豊かな地域です。北海道の水産業は日本全体の中でも活発な地区です。1960年代に北太平洋の漁業が発展して多くの若い人々が北太平洋に行き、たくさんお金を稼いだという歴史がありましたが、当時はなかなか沿岸の方には目を向けられませんでした。したがって当時は何とかぎりぎり生存できるような漁業しか残りませんでした。仲買人になった人もいます。こういった漁協からのガイダンスを受けたり、北海道の漁業協同組合の連合などからガイダンスを得ようとしたのですが、漁業はリスクの高いビジネスだといわれたのです。不漁の年もあるのだから3年分の貯蓄がなければ漁業はやっていけないといわれたのです。そしてそういった問題を話し合い、漁協の中で準備を進め、協力を進めていったところもありました。そんななか少ないながら、漁協の中には連合側のガイダンスに従ったところもありました。そして協力を求めたのです。1960年代、私がちょうど大学院生だった時にそういった村を私が訪れると、いろいろなことを試そうとしていました。例えばオホーツク海側の日本でも最北端にあたる海域ですが、「常呂」「能取」というところを訪れてわかったのは、そこで技術の試験を行っているということでした。どのようにしたらうまく海藻を採取できるか、たくさん集められるかです。例えば漁民は海から直接海藻を集めようとしていたのですが、どのような収穫装置が一番適切であろうかと漁具、採集装置、それからホタテ貝の増養殖についてもラフトといわれる筏のようなものを使ったり、あるいはロープカルチャーといわれるものがいいのかと、いろいろ試してみました。どういう結論になったかというと、最も源初的な海藻類の採集の仕方が一番いいということでした。とういうのは、海があまりにも荒れるので冬は特に氷に覆われてしまいますし、冬の間は3ヵ月間何も出来ないからです。何らかの装置をそこに設置したとしても冬の間に壊れてしまうことがありました。ということから海藻を採集するためたまねぎのネット等をここに設置して、海藻が浮いて流れてきて、また海藻をこの袋の中に入れて集めるということをやりました。それから3cm位に育つとそれを沿岸に沿って流すということをやりました。その時には栽培のローテーションというやり方を使ったのですが、その結果どうなったかというと、漁業労働者たちは実質の収入を得ることができました。年間2,000万円位の収入です。これは私の収入の2倍くらいです。普通の漁民がこれだけ稼いでいるのです。そしてある所帯は、貯蓄額として1億円位を家族で貯蓄しているのです。こういった漁業労働者を何とか育てていかないと、漁業を志すという人がいなくなってしまうのです。こういった漁業協同組合は大学を卒業した新卒の人達を雇って研究所のような組織を作ります。自分たちのところで漁獲できる5年後の数字で、ホタテ貝の資源がどうなるかを推定するようになりました。沿岸の資源の評価がそれぞれの漁協レベルでなされなければいけない。県や国でもやりますが、この研究はかつては国等の責任だったのです。でもこれは無責任で経済的には効果がなかったのです。そうではなくて各地の漁協の実際に関わっている人々が責任を持って研究活動をしなければいけないと認識したのです。陸揚げした1%位を研究に投資すれば問題が解決できると思います。これが北海道の例です。
 松里先生はお話の中でこの水産増養殖の技術についてサケの成功した例を話しました。私はホタテです。マダイは数字がないのですが、これは商業的な漁獲量なのでレクリェーションの方は入っていません。遊魚の漁獲を入れるとかなり多くなります。ですから少なくともこの3つは現在取り上げていいと思います。結論として3つ申し上げたいと思います。21世紀、我々は漁業の責任というものを満たすためにどんなことをやっていかなければいけないか。現在、漁業労働者たちからきちんとした調査の数字が出てこないのは、信頼できないという問題もあります。このような状況は20世紀の状況で、21世紀の状況にあってはならないし、漁業労働者本人がきちんと責任を持ち、一般の国民に対して説明責任を果たしうる人にならなければいけないと思います。そして海洋の賢明なる利用の仕方、責任ある漁業で、賢明なる使用をしていかなければいけないと思います。栄養塩類がどんどん海に流れていますが、漁業が無ければ環境はどんどん悪くなる一方です。しかし、誰かがその栄養塩がどうなるのかを海で見ていかければいけないということから、環境保護派の方々も漁業の重要性ということ、役割について認識を新たにする必要があると思います。そして漁業労働者も環境保護の人々の懸念に答えていかなくてはいけないのです。例えば有毒なものが流れ込んでいるし、植物の安全性の問題についてもきちんと対応していかなければいけないと思います。それからもう1つは海洋開発における漁業の役割です。これは特に日本において言えることなのです。というのは漁業権の問題があるので世界全体で言ってもこれが重要だと思います。良い沿岸漁業、責任ある漁業というものもあれば、海洋の発展はもちろん大きなお金がかかるので、そこには一般の国民の支援が必要です。こういった海洋の開発産業が漁業をサポートし、一般国民が漁業は非常に健全なものだ、信頼にあたるものだと思えて関係が構築されることによって海洋開発の問題がどんどん容易になっていくだろうと考えています。
 
(座長 Dr.Williams)ありがとうございました。今お話してくださいましたことに対しての質疑応答をしたいと思います。
 
(質問)確か何回か生態系の管理の話があったと思うのですが、単一の種の管理の責任が、その個々の種の沿岸だけでなく全体的に生態系の管理が必要であるということで、沿岸漁業回復に対しては非常に大きな部分を含むと思いますがそれについてのコメントをお願いします。
 
(松田)生態系の管理について日本も検討しなければならないと思います。特に私はある1つNGO(非政府組織)に関係していますが、ここでは海藻を生育させるということで、たくさんの種を生育させ産卵場を提供することを行っています。例えば単一の種のサケ、マダイといったものだけではなくアワビだけでもなく、全体の生物の養育を促進するということです。そしてまた経済的にいいものもあるしそうでないものもあります。他のものに食べられてしまう場合もありますが、沿海部でアジア、特に日本の漁業関係者が漁獲し、市場でうまく種の大きさ別に分けることが出来ます。ということでいろいろなものが売られ、また生産市場において売ることができます。生産価格で全部が売り切れてしまう、あるいは全部が価値があるということなのです。しかし、商業漁業では海老や特定の種だけにしか関心がないと他のものはいらないということから捨ててしまうという深刻な問題があると思います。ですから、もし沿岸漁業を促進していくのであれば、日本の中で巻き網やトロール漁業をしなかった場合、全部定置網で漁獲されたということになった場合、全部いかされていないのが現状です。私達は全部をいかすことが出来るようにしたいと考えます。もしその沿海部の雇用のことを考えるのであれば、それは多くの人々に雇用を分け与えることができるということです。そして社会的見地から見るとそれは非常に大事な点ではないかと思っています。
 
(質問)非常に興味深いプレゼンテーションに対して感謝します。いくつか質問があります。第一の質問は、成功した例です。北海道のホタテ貝についてですが、それは他の所でも繰り返されている経験なのでしょか。どうも私が受けた印象としては、日本の全体像をみると、漁業関係者の数は減っていて、また魚の価格は上がっているということで、消費パターンは変わっていないというお話でした。では北海道の成功例がどの程度の度合いで、よそで繰り返され複成できるのでしょうか。2つ目は日本及び他のところでは、他の問題として責任ある漁業は日本で行動規範がいわれてきている中で、一般の漁業関係者あるいは県の行政が理解しているのでしょうか。この行動規範がどの程度日本で理解され実施されていることなのでしょうか。私の懸念の3つ目の点ですが、こういった全ての努力が日本で、また先端的な技術が生かされていると思うのですが、全体的な漁業は衰退しているのです。それは日本だけでなく世界的にも漁業の将来は衰退産業だと見られています。例えば今から50年先のことを見てみるとこの状況はどうなっているでしょうか。はたしてこれはただ漁獲産業の問題だけなのでしょうか。それは生態系の管理ということも入っているのでしょうか。漁獲量が落ちているという事ですが、その他の問題点はただ漁業だけではなく例えば消費パターンも考えなくてはならないのでしょうか、これは経済成長のために変わってきていると思うのですが、例えば外因性の要因が漁業や養殖業にどういう影響があるか考えるべきでしょうか。この点について若干のコメントをお願いいたします。
 
(松田)北海道のホタテ養殖の成功例は現在のところ他の日本ではよく知られていません。ほんのわずかな部分で、青森県の一部で知られている話なのですが、私どもが現在やろうとしている点は同じような技術を南の方にも伝播したいと考えています。そういうわけでこのようなことを鹿児島、沖縄や長崎でも試験したいと考えています。その他の問題点や行動規範を先程説明しましたが、その責任ある漁業のための行動規範を資源管理の漁業という点で強調してきたと思いますが、まさに核心部分であると考えています。日本の漁獲管理ではこの枠組の中において、日本はもっと健全な漁業産業を沿海部で育成していきたいと考えています。3番目の全体的な漁獲量が下がっているという点ですが、大変深刻な問題です。今までは漁業資源は一般の全体の供給資源であると考えられてきました。しかしそれを獲れば漁獲した段階で自分のものになるのですから、供給部分が理解されていなかったと思います。日本では共有財産だと考えてきたのですが、もしこういった資源の状況がこれからも衰退し続けるということであれば、それは何らかの管理に不備があったということを意味しています。例えば、もし管理をしていく上でこれから増額すべきであるとか積極的な側面を引き出していかなければならないということであればもっと努力が必要でしょうし、充分に過去の経験からも学んでいく必要があると思います。
 
(座長 Dr.Williams)ありがとうございました。非常に興味深い視点や情報が日本の漁業状況について提出されたと思いますし、たいへん良い関連性の高い質問も挙げられました。また洞察力のある問題点の指摘もありました。日本についてどのような話題があるかということでは、まず、松里先生が具体的な漁業と養殖業の課題、現状についてお話くださいました。山本先生は全体の傾向についてお話くださいました。日本の漁業の工学上の先端的な養殖業から、どういった解決策がでるかということです。最後の松田先生は、非常に興味深いまた洞察力に富んだ今までの歴史上からの経験と問題点、将来的な課題といった点で、沿海部の漁師あるいは政治的な立場からといったプレゼンテーションでした。議論の中から得られた点は金曜日の総合会議に出したいと思いますが、非常に良いスタートがきれたと思います。今日の午後のセッションはまた違った漁業についての話が出てくると思いますが、またいくつかの違った問題点も出てくると思います。今日お話をしてくださった方々、参加してくださった方々どうもありがとうございました。







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