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平成14年度(2002年)研究報告

 事業名 医学医療に関する研究助成
 団体名 笹川保健財団  


20. がん患者の倦怠感緩和を目的としたアロママッサージの効果性
社会福祉法人暁会 身体障害者療護施設フェニックス・副施設長 小西孝子
 
がん患者の倦怠感緩和を目的としたアロママッサージの効果性
社会福祉法人暁会身体障害者療護施設フェニックス 副施設長 小西孝子
(元 医療法人社団松涛会安岡病院 副院長・看護部長)
共同研究者
古賀美紀(島根医科大学医学部看護学科 助手)
小林幸恵(島根医科大学医学部看護学科 助手)
森国秀美(医療法人社団松涛会安岡病院 病棟婦長)
臺なおみ(医療法人社団松涛会安岡病院 病棟婦長)
 
I. 研究の目的・方法
 「近年、緩和ケア・ホスピスケアが広まり、無意味な延命治療はやめてほしいという意識が広がる一方で、やはり治りたいとの一念から、また可能性は少なくとも希望にすがりたいがゆえに、末期のがん患者や家族は多くの代替医療に頼っており、その存在を無視することはできない」と小島1)は述べ、アロマテラピーやアロママッサージの効果を報告している。
 当院では、これまでがん患者で、浮腫軽減や不眠傾向の患者が薬物を使用することなく入眠でき、心地よさや安らぎを与える目的でアロママッサージを実践してきた(表1)。また、マッサージを行うことでがん患者によく見られる倦怠感等の症状を軽減させ、患者―看護者間の信頼関係を築き、看護者らの専門職としての自覚を強く持つようになったと考える。しかし、アロママッサージは経験に基づいたものであり、その効果に何ら根拠を持たないまま提供している。また、これまでに、がん患者のおもな症状のひとつである倦怠感に焦点をあてた心身両面の効果性についてのエビデンスは確立されていない。
 そこで、経験的に看護者がオイルを使っていたアロママッサージが、倦怠感緩和をうながし、患者の心身にどのような効果を与えたかを科学的に検証することに取り組んだ。
 本研究の目的は、アロママッサージの倦怠感を緩和する効果を質的・量的に検証することにある。従来のアロママッサージの効果を検証することで、より適切な緩和ケアを導くことは、患者のQOLを高め、患者や家族の心身の安寧をもたらすと考える。
 研究方法は、信頼性・妥当性が検証されていた倦怠感アセスメントスケール2)を測定用具として活用する。対象者に、マッサージ前後にマッサージ・アロママッサージ実施記録と倦怠感評価表を用いてインタビューを2回行い、マッサージを行った看護者が記載する(表2−1表2−2表2−3)。
 調査期間は平成14年6月1日〜平成14年7月31日である。マッサージ方法については、基礎看護技術3)を参考にした。又、平成12年に、マッサージ師より「マッサージの仕方」の実技講習を2時間受講。平成14年アロマテラピストの専門家から、講習月1回2時間の6回コースを受けてアロママッサージを実施する(表3)。
 実施記録の分析は、SPSS for Windows 10.0 を用いて、がん疾病群とその他の疾病群、アロママッサージとそれ以外のマッサージ群で、Mann−Whitney検定とχ2検定を行う。
 
II. 研究の内容・実施経過
 緩和ケア病棟と療養型病床群・介護療養型医療施設に入院中であり、研究の目的と方法を説明して承諾の得られた、倦怠感があると思われる患者を対象とした。研究の協力が得られたのは、がん患者(延58名)と肺炎や脳梗塞後遺症などのその他の疾病(54名)の患者であった。
 マッサージは患者の意思を尊重し、アロマオイルのマッサージ(36名)、オイルマッサージ(20名)、マッサージのみ(56名)を行った。アロマオイルで用いた成分(表4)は、以前から当院で使用していたラベンダー(33名)、ベンゾイン(2名)、家族の持ち込んだオイル(1名)であり、この中から患者の好みのアロマオイルを使用した。
 マッサージを行った部位は、上肢(66名)、下肢(54名)、腰部(10名)、背部(8名)、腹部(6名)、肩部(4名)、頚部(1名)、胸部(1名)、臀部(1名)であった。
 マッサージの実施は平均25分間(SD6分)の所要時間だった。
III. 研究の成果
1. 倦怠感評価表よりみた倦怠感
 疾患別にみた倦怠感においては、マッサージ前の倦怠感は、がん疾病群とその他の疾病群では有意差がなく(P<0.05)、マッサージ後およびマッサージ前後の倦怠感の差にも有意差はない(P<0.05)。
 マッサージの種類別にみた倦怠感では、マッサージ後は、全患者とも「活気はありますか(以下活気とする)」(U=334.5、P=0.004)、「身体がだるいと感じますか(以下だるさとする)」(U=438.5、P=0.048)、「身の置き所のないようなだるさを感じますか(以下身の置き所のなさとする)」(U=395.5、P=0.018)に有意差があり、マッサージをすることで何らかの影響があったとみられる。さらに、上記3項目のすべての項目で、アロマオイルを使ったマッサージ群の倦怠感が低かったことは、マッサージのみよりアロマオイルを使ったマッサージの方が倦怠感がより軽減している。
 マッサージ前後の倦怠感は、「いい間違いが増えたように感じますか(以下いい間違いとする)」(U=517、P=0.046)、「活気」(U=500.5、P=0.48)、「精神的倦怠感」(U=202.5、P=0.017)に有意差があり、アロマオイルを使用したマッサージ群が「活気」と「精神的倦怠感」に対する前後差が大きい。
 疾患別とアロマオイルを希望したマッサージの種類では有意差があり(χ2=46.215、P<0.001)、がん患者がアロマオイルを用いたマッサージを希望した確率が高く、その他の疾病患者はアロママッサージをあまり希望していなかった。
 がん患者では、アロママッサージ後の「だるさ」について有意差が見られ(U=22.5、P<0.049)、だるさが軽減している。さらに、アロママッサージを行った群(20.9)が、マッサージのみの群(2.91)より「だるさ」の値が低い。他の倦怠感について、統計学的な有意差が見られなかったのは、がん患者の研究対象数が大きく影響したと考えられる。
 がん患者は、マッサージすることで倦怠感が軽減する。さらに、アロマオイルを使用したマッサージの方が、倦怠感緩和により有効だと期待している。特に、精神的倦怠感緩和に効果があったのはこの期待が大きいと考えられる。
 生理学では、がんの終末期の患者は、トキソホルモンががん組織から生産されて、代謝の異常が起こり「だるさ」が発現してくるものと考えられている。「だるさ」「身の置き所のなさ」等の身体的倦怠感を治すよい方法はないと言われながらも、患者―看護者の関わりにより、「活気」を刺激し、精神的倦怠感の緩和に関連していると考える。
 そこで、アロママッサージにおける患者―看護者の関係をみると、Ruth von Braunschweig4)は、「やさしく触れることによって、脳の中の制御物質のカスケード(滝)全体がフル稼働し、痛みはやわらぎ、ストレスが消え、不安は拭われ、免疫系が活性化し、人と人との間の関係がより濃くなる」と述べている。また、川島ら5)は、マッサージをすること、つまり、看護者が患者の肌に触れるということは、がん患者の倦怠感や苦痛がみられた時に、苦痛を和らげる、心を穏やかにする、鎮める、安心させるなどの、感情面の安楽を促すために用いられるタッチと同じであると言う。
 看護者がマッサージをする場をもつことは、肌をふれあうことで共感の気持を伝え、あなたとわたしという人の存在や時間の共有等も心身に安心感を与え、緩和刺激になり得るのではないかと考える。
 簡単なマッサージでも、筋肉がほぐれ解毒が促されて効果はみられるが、アロマオイルを使用することで、皮膚をしなやかにし滑りを良くし、アロマオイルの治癒力でマッサージ効果を助長する。さらに、マッサージで血液循環が高められるので、アロマオイルは非常に速く体内に吸収される。
 今回使用したラベンダーは、心に対する働きとして、中枢神経系のバランスをとる作用があり心理学的な不調を癒す効果を示し、怒りを和らげ疲労困憊を緩和させる。ベンゾインは、神経系に鎮静作用を発揮し緊張とストレスの緩和剤となる。悲しんでいる人・孤独な人・抑うつ的な人になぐさみをもたらし、消耗しきった情緒的な状態・心理的状況を楽にするという。さらに、両オイルともに、心臓に作用し、眠気をさそい不眠症に効果的という6)
 がん患者のアロマオイルの芳香に関しては、食欲不振・嘔気等症状に対する敏感な香り、香りの体験・価値観等個人の嗜好もある。オイル自体のもつ生理的作用と考慮して選択する必要がある。又、アロママッサージに対して患者の期待があるということは、心地よい香りを嗅ぐという臭覚メカニズムで、気持ち良い状態になりたいという願望の現われでもあると思われる。
 
2. マッサージ前後の倦怠感評価表インタビューにおける看護者の反応
 がん患者のマッサージ実施件数(58名)のうち、倦怠感評価表の解答は、マッサージ実施前86%、マッサージ実施後64%であった。
 マッサージ後の倦怠感評価表未記入においては、「眠ってしまったので聞いていない」が6件あり、「同じ事を何度も聞くようで質問しづらい」「きつそうだと思っているので聞けない」など、看護者に、患者のためを思う気持が強い。
 また、未記入の中に、意識障害があり発語がないがベッド上で寝返りを頻回にうつ苦しそうな患者や、不穏興奮状態の患者、疼痛強度で鎮痛剤服用患者など、「積極的には質問しなかった」という状況もあった。患者の反応や症状に合わせて快の状況をつくってあげたいという、患者の為のケア行為の実践がみえる。
 さらに、項目別では、高齢のために物忘れやうっかり間違えることもあるという患者もいた。食事をすること・喫煙・歌など患者自身が好きだと思っている事には、興味をもてたり、集中できるなど、その人の価値観に左右される項目もあった。これは、精神的倦怠感の項目にあたり、倦怠感評価表の分析より、マッサージ前後の精神的倦怠感の有意差を裏付ける一つとなると考える。また、アロマオイルの効用もあるとは考えられるが、マッサージ中の看護者の関わりが精神的倦怠感緩和に大きな影響を与えている。
 マッサージ実施中に患者と看護者の間で話題になったことには、家族のことや若かりし頃のこと、仕事・趣味のことから、病気・療養・死・生き方のこと、そして、今この場での看護者のことやテレビ・読んでいる本・アロマのことなど多様な内容であり、言葉の表現に微妙な違いを受けるためにその言葉のままで羅列した(表5)。
 患者が話しかけてくる話題に応じるための豊富な知識や知恵、誠実な応対ができることが、快の体験を得て、患者の倦怠感緩和により大きな影響を与えていると考える。
 また、マッサージ技術は、やさしく、ゆっくり、そして、患者の表情・反応を確認しながら、気持ち良い状態を提供したいという。







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更新日: 2019年7月20日

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