第三章 総合考察
ターミナルケアにおける学生のCAの要因として、CSの欠損及び目標の設定について検討した。先行研究では、CAの要因としてのCSの欠損が検討されてきた理由は、CSの欠損は患者から否定的な反応を受けることで、自己の能力を不足していると評価に関連するのではないかという見解であった。しかし、今回のようにCSの欠損はCAに影響するがそれは必ずしも患者の反応を通して否定的な評価を受けているためではない可能性が示唆された。むしろ、CSの欠損の認知そのものがその場面の患者の反応とは関係なく、あるいは患者の反応を十分に観ないままに、予期によって喚起されている可能性があった。つまり、CSが獲得されていない状況では、患者の反応さえ観察できていないことや過って解読している可能性も考えられた。
このような見解から考えれば、CSの評価も本来は目標設定に対して患者の反応を見ることで行われると考えていたが、むしろ、患者の反応が適切に観られていない状況では、目標と評価との関係は成立しない。したがって、目標設定はCAには影響しない可能性も示唆された。例えば、それはCSの高い学生は、患者の関係性を示す反応への観察力も優れているので、その状況に対応した目標設定をすることができる。また、それとは反対にCSが低い学生は、患者の関係性を示す反応への観察力も低く、その状況に対応した目標設定ができない。
上述した経過から、ターミナルケア場面における学生のCAに影響する要因としては、CSの欠損がある。しかし、CSの欠損しているときには患者の反応を十分に観ることもできない可能性もある。このために、必ずしも反応が評価基準となってCAを喚起しているとは限らない。したがって、今後の研究としては、患者の反応への解読がCSの獲得ともにどのように変化するか、どのような患者の反応をどのように受け止めるのかがCAの要因や形成過程の検討としては必要である。
本研究にあたり、昭和大学および関連医療機関、石橋病院、大田原赤十字病院、武蔵野赤十字病院、山梨大学の看護部および看護師の皆様には多大なご協力をいただきました。また、昭和大学医療短期大学および日本赤十宇武蔵野短期大学、山梨大学、国際医療福祉大学の学生の皆様にも多大なご協力頂きました。深く感謝申し上げます。今後これらの研究が終末期の患者さんのホスピスケアに少しでも役立つように努力させていただきます。
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