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平成14年度
ホスピスナース養成研究事業助成報告書
医療保護施設
総合病院 聖隷三方原病院
 
3.1 事業の目的・方法
 現在全国で110を越す施設が届出を受理されホスピス・緩和ケアを実施している。この数は今後さらに増加すると予測されるが、ホスピスや緩和ケア病棟に従事する熟練ナースが不足している。こうした状況にかんがみ、ホスピスケアの質の向上を図るため、当院のホスピスにおいて(1)ホスピスケアの実際を通してナースとして必要な知識、技術、態度を学ぶこと、(2)ホスピスケアを行なう上で必要な情報を収集し今後の看護実践に役立てること、を目的として研修事業を実施した。研修はホスピスにおいて実技・実習に重点をおいた専門的訓練を行い、研修生に以下の点を習得させることを目標として行った。
(1)患者にとっての療養環境の理解
(2)ホスピスの看護実践に必要な知識、技術、態度
(3)ボランティアを含むチーム医療と看護師の役割
(4)在宅ケアを支えるシステム
(5)派遣元での課題の明確化
 研修は、目標と研修計画に沿って研修生の主体的な取り組みの中で行われ、当院のホスピス看護スタッフ、及び医師・栄養士・医療ソーシャルワーカー・コーディネーター等の関連専門職によって行われた。研修事業と平行して、ホスピス・緩和ケア病棟における看護職を始めとする専門スタッフの研修のありかたについて、研修事業の実践を通じた研究を行い、十分な識見と経験を積んだ専門スタッフ養成方策を追求した。
 以上のような方法で研修・研究事業を実施し、もってホスピス・緩和ケア教育体制の充実に寄与することを目的とした。
 
3.2 事業の内容・実施経過
1 研修の内容
1)研修の受入対象
 研修生として受入るものを以下のとおり定めた。
ア)日本看護協会「緩和ケアナース養成研修」受講中のもの
2)研修期間
 原則として3週間。
3)受入可能人数
 研修生の受入は、同時期に2名を限度とする。
4)研修方法
ア)研修生はホスピススタッフと行動を共にし、ホスピスケアの実際について体験をとおして学ぶ
イ)必要な知識・技術を、講義・ビデオ等によって学ぶ
ウ)研修目標に対して、当院研修担当者及び臨床スタッフの支援を受けながら計画的実践、評価、修正を行う
 
2 事業の実施経過
 
平成14年3月 研修カリキュラムの検討及び決定
6月 研修生2名受入(看護協会より)
7月 研修生2名受入(看護協会より)
8月 研修生2名受入(看護協会より)
11月 研修生2名受入(看護協会よりSS)
12月 研修生2名受入(看護協会より)
平成15年1月 研修生2名受入(看護協会より)
2月 研修生2名受入(看護協会より)
 
3.3 成果
1 研修受入体制が確立したこと
 今回、平成13年度に引き続き本研修研究事業の助成を実施することで、3週間コースを基礎とした看護職へのカリキュラムを確定できた。そしてさらにホスピス課長・主任看護師の研修における役割を明確にすることができた。
 
2 研修内容の評価について
 研修内容については、平成13年度同様、ホスピスの理念やインフォームドコンセント、症状コントロール、家族ケアなどについては成果をあげることができたと考えている。
 またボランティア指導法については、ホスピスコーディネーターから、ケースワーカーの業務についてはMSWから、栄養士の業務については栄養士がそれぞれ説明を行った。
 
3 研修後の研修生の動向
 14名の研修生のほとんどの研修生が派遣元病院においてホスピスケア・緩和ケアに従事することとなっていることは大きな成果といえる。
 
4 ホスピスケア研究所
 本研修事業の実施が契機となって、平成11年度より聖隷ホスピス付属ホスピスケア研究所を発足させている。
 ホスピスケア研究所は、所長(ホスピス所長兼任)の下に、看護師3名(ホスピス課長、ホスピス看護主任、看護師)、ホスピスコーディネーター1名、医療ソーシャルワーカー1名をホスピスナース研修スタッフとして置き、研修受入体制の充実を図ったところである。また、ホスピスナース研修スタッフによる、ホスピスナース研修カリキュラムの見直しも行なわれた。
 ホスピスナース研修以外のホスピスケア研究所の事業としては、第1に、医師その他の専門職についての研修のあり方及び研修の受入を行うことである。平成14年度には3〜4名の医師の短期研修受入を実施した。
 第2には見学者への対応である。月1ないし2回のホスピスセミナーを開催し、ホスピス・緩和ケアについての理解を促進する事業を継続していく。平成14年度には延べ325名の参加があった。
 
5 研修事業の今後の課題
1)研修生の募集について
 今年度からは看護協会が本事業の受入窓口となるため、受入開始がどうしても6月過ぎとなってしまう。年度ごとの事業ではあっても、年間の配分を考えた受入を行い円滑な研修生受入の方策を考える必要があるのではないだろうか。
2)研修生の範囲について
 看護協会の「緩和ケアナース」以外の研修希望があるが、本事業の対象外であるため独自に受入ることとなる。医師、ソーシャルワーカー、コーディネーター、栄養士、臨床心理士、音楽療法士、など看護職以外の専門スタッフについても全国的に不足していると言われている。しかしながら看護職以外の研修を受入ると、本来の対象者の受入枠が減少するという矛盾に直面することとなる。
 
3)当院における課題と解決方策
(1)研修指導体制の構築
 本事業が開始されるまで当院の研修生受入は、ホスピススタッフの善意によって行われていた。研修生から受講料を徴収することもなく、研修内容も系統だったものとは言えず、当院のスタッフとともに業務に従事し、体験を通して学んでもらおうというものであった。その中から、看護師研修に関してはカリキュラムを作り、各スタッフが研修上の役割を自覚し、今年度は日本看護協会からの要請に基づき、一人3週間の研修指導体制を構築できたといえる。
(2)ホスピスボランティアの活性化
 平成11年度よりボランティアの募集・研修・組織化を推進することとなった。ボランティア講座を開き、受講者の中から希望するものにボランティア活動をするという体制を作った。今年度は4名の受講者がいた。また別枠で2週間以上の連続した期間ボランティア活動をしていただくことも受入てきた。
 
研修カリキュラム







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