(2)オルタネータ
(イ)構造と機能
スターティングモータは、バッテリを電源としてエンジンを始動しているが、使用したままではバッテリの蓄電量が減少して始動できなくなる。そのために充電が必要となってくる。
バッテリヘの充電は通常機関からベルト駆動により充電発電機を廻し行っている。以前は、充電発電機にはダイナモ(直流発電機)が主に使用されていたが、現在では半導体の開発と共に、殆どのメーカがオルタネータ(交流発電機)を採用している。
オルタネータは一般に界磁回転型で、ブラシとスリップリングを介して、ロータの励磁コイルに直流電流を供給して磁界をつくり、ステータの発電コイルに発生した交流電圧をダイオードを用いて整流し直流として取り出している。
2・217図は船舶用機関に使用されるICレギュレータを内蔵した2線式のオルタネータで、回転子(ロータ)固定子(ステータ)、軸受部(フロントカバー、リヤカバー)、ICレギュレータ、プーリ等で構成されている。
2・217図 オルタネータの構造図
(1)ロータ
ロータは界磁として働く部分で、シャフトと一体になり回転する。ロータはポールコア(磁極)とロータコイル(フィールドコイル)、スリップリング、シャフトなどによって構成されている。ロータは2・218図のように、中央にロータコイルが巻かれ、その両側に磁極がある。
ロータコイルに電流を流すと片方の円板のツメは全部N極となり、もう一方の円板のツメはS極となる。回転しているロータに励磁電流を供給するためロータの一端にスリップリングが2個取り付けられてあり、これは銅や黄銅、ステンレスなどで出来たリングと絶縁物で構成されている。
このリングの円周上をブラシが摺動して電流を供給する。
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2・218図 ロータ
(2)ステータ
ステータは、ステータコアと、ステータコイルで構成され、フロントカバー、リアカバーによって支えられている。ステータコアは薄い鉄板を重ね合わせたもので、その内側にはいくつもスロット(溝)があってステータコイルが入るようになっておりロータのポールコアから出た磁束がステータコイルと有効に交差するように作られた磁束の通路である。ステータには、3個の独立したステータコイルが巻かれており、ロータの回転に伴い、交流電圧が発生する。ステータコイルの接続はY結線(スター)、△結線(デルタ)の2種類があるが、一般にはY結線が殆どである。
2・219図 ステータ
2・220図 ステータの結線方法
(3)フロントカバー及びリアカバー
フロントカバー及びリアカバーはステータとロータを支持すると同時に、エンジンヘの取り付けを行う部分でもある。オルタネータの冷却は一般に空冷方式を採用しているので、両カバーとも通気用の穴があけられている。リヤカバーにはダイオード、ブラシ、出力端子が取り付けられている。風はファンにより2・221図のように流れ冷却している。
2・221図 フロントカバー及びリアカバー
(4)ダイオード
ダイオードは、1方向にのみ電流を流し、その逆方向には電流を流さない性質を持っている。この性質を利用してステータコイルに発生した交流を直流に変換(整流)している。ダイオードは2・223図に示すようにプラス側とマイナス側にそれぞれ3個ずつ組付けたものを1組として使用している。
2・222図 シリコンダイオードの導通方向
2・223図 ダイオードの取付け
(5)ICレギュレータ
バッテリには、オルタネータで発生した電気を供給して充電しているが、高い電圧で充電すればバッテリは破損してしまう。そのために発生電圧を制御し、一定に保つ必要があるこの発生電圧を制御するのがレギュレータである。
ICレギュレータはフィールドコイルとアースの間に入れたトランジスタをツエナダイオードでON、OFFすることによりフィールド電流を制御し、オルタネータの出力電圧を一定に保っている。
(ICとは集積回路のことで、一つの基板上に導体や抵抗を印刷などで形成し、それにトランジスタ、ダイオードなどの半導体部分(チップ)を接続して樹脂でおおったものである)
・出力電圧が低いとき
ツエナダイオード(ZD)が導通しないためトランジスタ(Tr2)がONし、フィールド電流を流し出力電圧を上げる。(2・224図)
・出力電圧が高いとき
ツエナダイオード(ZD)が導通するためトランジスタ(Tr2)がOFFし、フィールド電流が流れなくなるため出力電圧が低下する。(2・225図)
2・224図 出力電圧が低いとき
2・225図 出力電圧が高いとき
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