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(5)点火方式
i)ブレーカポイント方式
 固定ポイントと可動ポイントを合わせてブレーカポイントといい、一般にはポイントまたは接点という。2・195図に示すように、イグニションコイルヘ通電した一次電流をブレーカポイントで断続して二次側に高電圧を得る方式で以前は広く用いられていた。ブレーカポイントは機械的に開閉される接点が使われるが、摺動部や接点の摩耗による点火時期の変化、低速回転時の接点アークや高速回転時の接点チャタリングによるイグニションコイルの発生電圧の低下、接点汚損による導通不良などの問題から、現在では、接点を半導体装置に置き換えたトランジスタ点火方式が主流である。
ii)トランジスタ方式
 トランジスタ方式は機械式ブレーカポイントをトランジスタに置き換えた点火方式で、別途に点火時期検出用の信号発生器が必要である。2・196図に示すようにトランジスタ(Tr)によってイグニションコイルの一次電流を断続するため、二次電圧低下の原因となるスイッチの接点の火花を防止でき、エンジン低速回転時においても安定した二次電圧が得られるため、排気ガス中のCO、HCを減少させ、スイッチの接点に起因するトラブルを排除することができる。
 
2・195図 ブレーカポイント方式の例
 
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2・196図 トランジスタ方式の例
 
iii)マグネット方式
 磁石式交流発電機を電源とした点火方式である。この方式は、2・197図に示すように発電機の短絡電流をブレーカポイントで遮断して、発電機内の電機子コイルに自己誘導電圧を発生させ、それをイグニションコイルに送って高電圧を発生させる方式である。最近はブレーカポイントをトランジスタに置き換えたトランジスタ式マグネット方式が小形汎用ガソリンエンジンに多く用いられるようになった。
iv)コンデンサ放電方式
 一般にCDI(capacitor discharge ignition)と呼ばれ、数百ボルトを発生する直流または交流電源を用いてコンデンサに充電しておき、点火時期に半導体スイッチング素子であるSCR(silicon controlled rectifier)を介してイグニションコイルヘ通電して、高電圧を発生させる方式である。2・198図に示すように、バッテリを用いず、磁石式発電機から直接200〜500Vの高電圧を得る交流式CDIが一般的であり、小型で廉価のため小型エンジンに広く普及している。
 
2・197図 マグネット方式の例
 
 CDIの特徴は、数百ボルトの電圧を瞬間的にイグニションコイルヘ通電して高電圧を発生させるため、他の点火方式より二次電圧の立ち上がりが極めて早く大きいので、スパークプラグの汚損などによる電気絶縁低下に対しても有利である。反面、放電持続時間が0.4ms以下で他の点火方式の数分の1と短いため希薄燃焼には向いていない。
 
2・198図 コンデンサ放電方式の例
 
v)マイクロコンピュータ方式
 マイクロコンピュータ方式点火装置は、現在の主流となっている点火装置で2・199図に示すような点火回路で、エンジンの運転状態を感知して信号を送る各センサと、センサから信号を受けてイグナイタのアクチュエータに点火の指示を送るコントロールユニット(マイクロコンピュータ)などで構成され、トランジスタ式点火装置に一次電流を流して止める点火時期を制御する回路と、その時の電流値及び通電時間を一定値に制御する回路を設けている。更に、遠心式ガバナやバキュームアドバンサを廃止して、その代わりにエンジンの運転状態を検出する各センサからの入力信号を基に、マイクロコンピュータが制御して、イグナイタなどのアクチュエータを作動させることで、圧縮された混合気が燃焼するために最適な点火時期を得るようにしている。
 
2・199図 マイクロ・コンピュータ式点火装置
 
 マイクロコンピュータでは、クランク各センサからの信号によりクランクシャフトの位置及びエンジン回転速度を算出すると共に、バキュームセンサまたはエアフロートメータにより吸入空気量を検知し、かつ、水温センサなどの各センサにより、その時のエンジン運転状態に応じた点火時期を決めて点火信号をイグナイタに送る。イグナイタでは、その点火信号を基にイグニションコイルに流れる一次電流を遮断する。一次電流が遮断されると、二次電圧が発生してディストリビュータを介して各気筒のスパークプラグに送られる。







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