(3)潤滑油冷却器
潤滑油は運転中機関各部で発生する熱を奪い取りながら循環するため温度が上昇する。潤滑油の温度が高温になると冷却効果が低下するのみでなく、潤滑油自身が酸化され、油膜生成が困難となる。従って潤滑油の温度が必要以上に高くならないように冷却して、酸化を防止し、潤滑油による冷却効果を高め、十分な油膜を確保するために潤滑油冷却器が設けられている。
潤滑油冷却器は一部の小形機関を除き殆どの機関に採用され、油圧減速逆転機には別に設けたものが多い。
潤滑油冷却器には、水冷式と空冷式のものがあるが、舶用機関には主として水冷式のものが使われている。水冷式潤滑油冷却器には多板式と多管式があり、ガソリンエンジンや小形ディーゼルエンジンには多板式が又中、大形ディーゼルエンジンには多管式が多く用いられる。又冷却水としては間接冷却機関では清水を用い、直接冷却機関では海水を用いることが多い。
(1)多板式潤滑油冷却器
一般にシリンダブロック側面に配置し、ウォータジャケットの中に板状のチューブを設けて、潤滑油を水流と逆方向に流入させて冷却を行っているもので、殆どが清水冷却機関で採用されており、2・111図にその断面構造を示す。
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2・111図 多板式潤滑油冷却器
(2)多管式オイルクーラ
2・112図は、多管式潤滑油冷却器の構造図である。冷却水は管の内部を流れ、高温となった潤滑油は邪魔板に沿って管の外周部を矢印のように流れ、その間に冷却水が潤滑油の熱を奪い取って冷却する。海水冷却の場合は海水温度が低すぎて、潤滑油の温度が適温まで上がらず、低すぎる場合には、潤滑油温度が下がり過ぎないよう自動温度調節弁を設けたり、或いはバイパス回路を設け温度を適温に保つようバイパス弁で冷却水量を調節している。
(4)潤滑油圧力調整弁
主要運動部や摺動部の摩耗により、隙間が増加すると、隙間が増加した分だけ潤滑油が余分に逃げるため潤滑油の圧力が低下する。潤滑油の圧力低下が大きくなると十分な油膜が確保出来なくなり焼き付いてしまう。そこで潤滑油圧力調整弁を設けて、潤滑油の圧力を調整出来るようにしている。
機関の潤滑油圧力計には、ブルドン管式圧力計が多く用いられ、殆どの場合メーンギャラリ又は潤滑油冷却器付近から取り出し、圧力と給油状況が外部から判るようにしている。
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2・112図 多管式潤滑油冷却器
小形機関では圧力計の代わりに警報ランプのみとしているものもある。又大型機関では圧力計の他警報ランプや警報ブザーなどを併用しているものが多い。
油圧調整は潤滑油温度及び機関回転数を設定して調圧すると共にアイドリング回転時に必要最低限の油圧を確保することが大事である。警報ランプやブザーの場合は、潤滑油温度が十分上昇している状態で、アイドリング回転にした時、ランプが点灯したり、ブザーが鳴らない程度に油圧を調整する。
2・113図は一般的な調圧弁の構造を示しており、調圧シムを増して締め付ければ調圧バネ力が大となって油圧が高くなる。調整シムを減らせば調圧バネ力が弱くなり調圧弁より潤滑油が逃げて油圧が低下する。
調圧弁を調整しても必要最低限の油圧が確保できない時は、主要運動部や摺動部が摩耗して、潤滑油が多量に逃げているか、調圧弁自体に不具合が発生していることが考えられるので、即原因を究明し処置せねばならない。
2・113図 潤滑油調圧弁
(各部の整備について)
(1)潤滑油ポンプ(歯車ポンプ)
歯車の当たり、摩耗、ピッチング及びブッシュの摩耗焼付きのほか、歯車の側面、歯先のあたり等を点検し、使用限度を超えている場合は、ブッシュ又は歯車を交換する。但し部品交換はスキマ管理が難しいので仕組み交換が望ましい。
リリーフ弁やシートの当たりを点検し異常があれば修正する。又弁バネのへたりは交換するかシムを入れて開弁圧力を調整する。
(2)潤滑油冷却器
冷却器が汚れ効率が悪くなると、冷却水又は潤滑油の入口と出口の温度差が少なくなるので分解しなくとも判断できるがそのためには新品時の運転記録が必要となる。
潤滑油の通路側は洗剤を使用しナイロンブラシなどを使って洗浄する。(突き棒などの使用は厳禁)又パンクや漏れなどの点検は、指定された水圧をかけて調査し、異常があれば原因を調べ部品交換するか修理する。
(3)コシキ
ろ紙式のものは決められた時間又は汚れがひどい時には交換する。ノッチワイヤ式のコシキはエレメントを洗い油で洗浄し、エアを吹き付けて清掃する。
(4)調圧弁
弁及びシートの当たりを点検し、軽微な傷は修正ひどいものは交換する。
弁バネのへたりはシムを入れて調整するか弁バネを交換する。
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