(3)ボッシュ形燃料噴射ポンプの作動
(噴射の原理)
プランジャバレル(一種のシリンダ)は、燃料噴射ポンプ本体に固定され、バレルの内に挿入されたプランジャは、燃料カムの回転により上下運動を繰り返している。
・プランジャが下降しプランジャの上辺が吸排油孔位置までくると、ポンプ本体とバレル外周によって作られた油溜室に充満されている燃料油は、バレルの吸排油孔より吸い込まれてプランジャ室を満たす。
・プランジャが上昇し、上辺がバレルの吸排油孔を塞いだとき(静的噴射始めと云う)から燃料の圧送が始まり圧力が上昇する。(2・135図A)
・更にプランジャが上昇し下部リードが吸排油孔に覗いた瞬間、高圧となった燃料油は、プランジャの縦溝より吸排油孔を通り油溜室に戻され圧送(噴射)は終わる。(2・135図B)
・この噴射始めから噴射終りまで実際に燃料を圧送している期間を有効ストロークという。
・プランジャを回転させ、2・135図Cに示すようにプランジャの縦溝と吸排油孔を一致させると燃料は圧送されず無噴射となる。
(拡大画面:52KB) |
|
2・135図 プランジャの作動
(噴射量の調節)
燃料の噴射量は、コントロールラックに噛み合うコントロールスリーブの回転に連動してプランジャが回転し、プランジャとプランジャバレルの相対位置が変わるため、プランジャのリードと吸排油孔の関係位置が2・137図のように移動し、噴射始めから噴射終わりまでの有効ストロークが変化するので噴射量が調節される。
2・136図 噴射量調整機構
2・137図 噴射量調節機構
(4)吐出弁(デリベリバルブ)
デリベリバルブはプランジャバレルの上部にデリベリバルブホルダで取り付けられており、プランジャからの吐出が終わったとき、高圧管からの逆流を防止すると共に、高圧管内の残圧を保持する働きをしている。しかしこの残圧が高すぎると、噴射終わりの後も燃料弁から燃料が噴射されるのである程度燃料を吸い戻す必要がある。この作用は2・138図(2)の状態から(3)のようにシートが密着するまで行われ残圧は適正に保たれる。この間にデリベリバルブの動く寸法(a)を吸い戻しストロークと呼んでいる。
2・138図 デリベリバルブの作動
(3)分配型燃料噴射ポンプ
分配型燃料噴射ポンプは、1本又は2対以下のプランジャが回転しながら往復運動を行い、燃料を各シリンダヘ供給するようにしたものでガバナ、タイマ、燃料供給ポンプ、等が組み込まれており、列形集合ポンプと比較して小形、軽量化されているので小形高速機関に使用されている。2・139図に分配型噴射ポンプの構造の1例を示す。
2・139図 分配型噴射ポンプの構造
(4)ユニットインジェクタ
ユニットインジェクタは高圧管が無く、プランジャと燃料弁一体型の燃料噴射装置で、エンジンのシリンダヘッドに直接一個ずつ取り付けエンジンのカム軸により駆動される。
断面図と構成部品図を2・140図及び2・141図に又、機関への取り付けを2・142図に示す。
燃料噴射・調整の機構はインラインポンプと同じであるが、ガバナには一般に油圧ガバナが使用されている。
2・140図 ユニットインジェクタの断面図
2・141図 同左部品図
2・142図 ユニットインジェクタの装着
|