7.3 点検と整備
(1)アウトドライブ装置はドライブユニットを上下させる機構を持ち、係留中にはプロペラ部を水面上に出しておく事が可能であるが、ユニバーサルジョイント保護のラバーベローズの変形、傷付きの恐れもあり、陸上に上架しての保管が最も望ましい。
しかし特に業務用では殆どが係留保管であり、運転中はドライブユニットが水中にあるため、定期的なオイルの交換と清掃による異常の早期発見が整備のポイントである。ギヤケースを分解整備した場合にはバキュームテスタで耐圧テストを実施し漏れの有無を確認する。また、海水ポンプ内蔵形ではエンジンの焼付防止のため、インペラの定期交換が特に重要である。
(2)アウトドライブユニットの取付については、キャビテーションプレートが船底と同一レベルが一般的であるが、特にクランクシャフトのセンタとアッパギヤユニットのセンタが狂わない様に留意する必要がある。
(3)構造上船体後部(トランサム部)に大きな開口部を有するので分解整備時、トランサムシールドのG/Kは必ず交換し船内側への浸水については細心の注意をはらう事が必要である。
(4)トリムタブの調整
ステアリングを左に取られる場合には3・94図のようにトリムタブの後端を左へ移動させるとトリムタブは水圧を受けてドライブユニットを右へ動かす。これはステアリングを右に切るのと同じ効果が生じプロペラ推力の方向をわずかに変え、船は直進する事になる。
但し注意しなければならないのは水圧を利用しているため、トリムタブ調整は最も使用頻度の高い回転数に合せる事が必要である。
3・94図 トリムタブ調整
(5)アウトドライブユニットの構造は各メーカごとにまた馬力別用途別に異なるため、整備基準については各メーカの整備マニュアルに準拠し点検整備を実施する事。別表に定期点検項目の一例を参考に示す。
3・12表 アウトドライブユニットの定期点検
項目および点検 |
日常点検 |
最初の20時間運転後 |
50時間運転毎 |
100時間運転毎 |
年に一回 |
1. ドライブユニットオイルレベル |
|
○ |
○ |
○ |
○ |
2. パワートリムポンプオイルレベル |
|
○ |
|
|
○ |
3. アウトドライブの部品にゆるみ、部品に外れ損傷あるいは取付金具に異常がないか点検 |
|
○ |
|
○ |
○ |
4. ステアリングシステムの点検、潤滑 |
|
|
○(1) |
|
○ |
5. アウトドライブ、プロペラに腐触、損傷がないか点検 |
|
|
○(1) |
|
○ |
6. 全てのホースにクラック、膨張、劣化、損傷がないか点検 |
|
|
|
○ |
○ |
7. 全てのアースワイヤにこすれ、破損、接続部にゆるみがないか点検 |
|
|
|
○ |
○ |
8. シフトケーブルの点検、潤滑 |
|
|
○(2) |
|
○ |
9. ドライブユニットオイル交換 |
|
|
|
○ |
○ |
10. プロペラシャフト、ナットの潤滑、締付 |
|
|
○(2) |
|
○ |
11. ジンバルベアリング、ヒンジピン、スイベルピンの潤滑 |
|
|
○(2) |
|
○ |
12. ベローズ、クランプに漏れがないか点検 |
|
|
○(2) |
|
○ |
13. ユニバーサルジョイント、ドライブシャフトスプラインの潤滑 |
|
|
|
○ |
○ |
14. ドライブユニット外面の清掃、塗装 |
|
|
|
|
○(3) |
15. ステアリングヘッド、リモートコントロールの点検、潤滑 |
|
|
|
|
○ |
16. 亜鉛合金トリムタブ、アノードの点検 |
30日毎(3) |
17. 冷却系統インテークポートの清掃 |
30日毎(3) |
18. ドライブユニットの外面に防蝕剤塗布 |
清水域 6週間毎 |
19. 船底の清掃、塗装 |
海水域 2〜3週間毎必要に応じて |
|
|
注意(1) |
清水域では100時間運転毎あるいは4ヶ月毎(いずれか先に到達した方で) 海水域では50時間運転毎あるいは2ヶ月毎(いずれか先に到達した方で) |
(2) |
清水域では50時間運転毎あるいは2ヶ月毎(いずれか先に到達した方で) 海水域では25時間運転毎あるいは30日毎(いずれか先に到達した方で) |
(3) |
腐蝕性の強い水域あるいは海藻類が付着しやすい水域でひんぱんに行うこと |
|
|