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3.2 構造
 可変ピッチプロペラの部品の構成を大別すると次のようになる。
 現在各種の可変ピッチプロペラが製作されているが、それらの基本構造は特殊なものを除いては、油圧サーボ機構とボス内部の変節機構とを、中空のプロペラ軸を貫通する変節軸によって連結し、油圧を原動力としてサーボピストンにより変節軸を前後に移動させてプロペラ翼をある角度だけ回転させるものである。
 小形のものはボス部の構造も簡単ですむが、大形になると変節力が大きくなること、4翼になることなどのため複雑な構造になっている。以下には中小出力用としてわが国で多く使用されている可変ピッチプロペラ装置の数種について主要構造を説明する。
 
1)ボス内部機構
 3・67図にボス部断面の代表的な数例を示す。
(拡大画面:72KB)
 
 (a)はボス二ツ割形のもので、ボスは軸に直角で翼軸中心上の面で二ツ割にしプロペラ翼を嵌め込んでボルトで締付ける。プロペラ翼には翼軸下部に変節用溝があり、クロスヘッドの偏心して削り出されたピンにブッシュを介して溝に嵌まり込んでいる。クロスヘッドは変節軸に焼嵌めされているので変節軸の直線運動は、翼軸中心まわりの回転運動に変えられる。プロペラボスはプロペラ軸のフランジにリーマボルトで結合されている。ボス内部はグリースを充満して摺動部分の潤滑をしている。またボス内部への海水の浸入を防ぐため翼根元や変節軸先端にはOリングあるいは特殊パッキンを使用している。
 (b)はボス内部に設けられたサーボシリンダによりリング機構を介して翼軸を回転させる機構を示す。
 (c)はボス一体形で、プロペラ翼はクランクピンリングとボルト結合される組立形のものを示す。ボス内部には船内の重力油タンクからプロペラ軸中空部を通して潤滑油を供給し摺動部の潤滑をしている。この形のものは翼の取外しのときボスを分解せずにできる特長がある。
 これらはいずれも構造が簡単で保守も容易であり14,700kW(20,000PS)程度まで広く使用されている。3・68図には作動時のプロペラを示す。
 
3・68図 プロペラ作動時の状態
(拡大画面:26KB)
 
2)変節装置(油圧サーボ機構)
(1)軸系内にサーボ機構があるもの
 CPPが未だ一般的でなかった昭和40年代には変節装置(油圧サーボ機構)が軸系内にあるケースと軸系外にあるケースの2種類があったが、中小形ではほとんど軸系内にサーボ機構があるものが使用されている(3・69図参照)。
 軸系内にサーボ機構がある場合には据付けが容易であり保守も簡単になる。
 油圧ポンプから出た圧油4.9〜6.9MPa(50〜70kgf/cm2)を分配弁(電磁弁)、給油箱(筒)を通じてサーボシリンダの前進側あるいは後進側に供給してサーボピストンの動きは追従輪を介して変節制御装置、翼角指示計に伝えられる。
 
3・69図 変節機構
(拡大画面:25KB)
 
(2)減速歯車装置にサーボ機構を組込んだもの(3・70図、71図、72図参照)。
 中高速歯車減速機関の普及とともに減速歯車装置にサーボ機構を組込んだケースが逐次増加している。
 3・70図はサーボシリンダを大歯車に組込んだ例。
 3・71図は異芯型歯車減速装置にサーボシリンダを船尾側に、給油筒を船首側に組込んだ例。
 3・72図は同芯型歯車減速装置の出力軸に給油筒、船尾側にサーボシリンダを組込んだ例。
 いずれの場合も変節作動用の油圧ポンプは減速機軸から駆動され、作動油も減速機潤滑油と共通にしている。
 これらの型式の特長は減速歯車装置とサーボ機構を有機的に組合せることにより両者の利点を生かすと共に主機軸系全長の短縮、据付作業の容易さ、価格の低減と機関室の合理化をはかったことにある。
 
3・70図 減速変節装置(1)
(拡大画面:66KB)
 
 
3・71図 減速変節装置(2)
(拡大画面:47KB)
 
 
3・72図 減速変節装置(3)
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