1.8 張出軸受
張出軸受とは多軸船などで、プロペラ軸を支持するために船外に張り出した軸受で、シャフトブラケット軸受とも言う。3・32図に示すように一般に海水潤滑軸受で、リグナムバイタ軸受またはゴム軸受が使用される。油潤滑軸受の場合はホワイトメタル軸受を使用し、張出軸受と船尾管軸受の間のプロペラ軸を円筒形の鋼板で覆い、油溜りを作り、張出軸受の船尾側および船尾管船首側にシール装置を設ける。
3・32図 張出軸受
推進軸系は停止しているときは、中間軸受あるいは主機関の主軸受メタルを介して船体にアースされているが、軸が回転中は、各軸受に潤滑油膜が形成されて、浮遊状態となるため、船体との金属接触がなくなる。従って海水中にあるプロペラまたはプロペラ軸スリーブなどの銅合金と船体鋼材との間にイオン傾向の違いによる電位差が生じ海水中の軸系と船体間の接近したところに電流が流れ有害な電蝕現象が起こる。3・33図に示すように電流の流れる経路は船体に取付けられた防蝕亜鉛(またはアルミニウム)から発生した電流はプロペラを経由してプロペラ軸スリーブから船体に流れるが、リグナムバイタ軸受またはゴム軸受は電気抵抗が大きいので、比較的電気抵抗の少ないグランドパッキンまたは端面シール部から多く流電し、その際プロペラ軸スリーブの電蝕が発生するものと考えられる。この現象を防止するため3・34図に示すようなスリップリングとブラシを持った軸アース装置(軸短絡装置)を設けることによって、プロペラ軸と船体を常に電気的に短絡させることができる。従ってプロペラ軸と船体間の電気抵抗は低減され、防蝕電流はアース装置を通って流れるのでグランドパッキンまたは端面シール部からの流電は防止される。
軸系アース装置は軸上に巻きつけたスリップリングとブラシの摺動抵抗を極力小さくするよう維持管理しなければ効果的でない。ブラシとしてカーボンブラシあるいは銅、錫、銀、黒鉛の焼結合金製ブラシなどを使用し、スリップリングに摺動させアースする。スリップリングは接合部のくい違いを極力なくし、油気を取り、常に清浄にたもたなければならない。アース装置は発錆あるいは海水の付着などにより、導通が阻害されないよう常時メンテナンスに留意しなければならない。摺動接触させる個所は、プロペラ軸スリーブ表面でなくとも、プロペラ軸に電気的に接続されている個所であれば軸継手外周、中間軸などいずれでもよいが点検容易な場所を選ぶべきである。
3・33図 防食電流回路
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3・34図 軸系アース装置の一例
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軸傾斜とは船体の基線に対する軸系基準線(軸心)の傾きで、船体側面(ベースライン)に対する軸傾斜と船体平面(船体中心線)に対する軸傾斜とがある。プロペラの没水深度の関係で、一軸船の場合、船体側面に軸レーキがつくことがあるが、多軸船の場合は、船体側面および船体平面の両方に軸レーキがつくことがある。
軸系アライメントとは、軸系装置で軸のたわみ、軸受荷重などを考慮した軸系の据付け配置を言う。軸系が直線となるような軸受配置(ストレートアライメントと呼ぶ)および各軸受の位置を上下に調整して、軸受荷重の分散配分を考慮した軸系配置(オフセットアライメントまたはスロープアライメントと呼ぶ)とがあるが小形船の場合は一般にストレートアライメントが採用されている。
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