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2)空気始動装置
 空気始動装置は空気槽にたくわえられた圧縮空気をシリンダ内に吹き込んでエンジンを始動させるものである。2・141図に示すように空気槽、分配弁、始動弁から成っているもの(点線)と別に操縦弁と塞止弁を追加したもの(実線)とがある。系統の代表的なものには次の様なものがある。
 
(1)空気槽
(a)構造と機能
 付属装置を取り付けた弁箱と空気槽本体とから成り、始動用空気を最高2.94MPa(30kgf/cm2)の圧力で貯える。容量についてはエンジンの大きさ、用途により若干相違はあるが船舶安全法に準じ装備している。付属装置として空気槽始動弁、空気槽充気弁、ドレン抜き弁、安全弁、圧力計、鉛栓等が取り付けられている。
 
2・141図 空気始動装置の構成
(拡大画面:168KB)
 
(i)空気槽始動弁(始動用ハンドル)
 始動用ハンドルを廻して弁を開くことによって始動用空気を外部に導く。ハンドルは慣性力で弁をすばやく開いたり閉じたりすることができるように空廻り部を設けてある。
 このようなバルブをハンマバルブという。
(ii)空気槽充気弁
 空気槽に空気を補給するための弁でエンジンの充気弁を出た燃焼ガスまたは圧縮空気はこの弁をへて空気槽内に貯えられる。
(iii)ドレン抜き弁
 空気槽内と大気を通ずる弁で、圧縮空気中の水分が凝縮して空気槽内に溜るので、これを排除するために設けられている。空気槽内には槽内底部までパイプが入っているので据付の際注意が必要である。
(iv)安全弁
 安全弁は、充気する空気の通路で充気弁より手前に設けてあり、充気中空気槽内の圧力が規定値以上に高くなった場合に自動的に噴出し規定圧力以下になれば自動的に閉じて空気槽の安全を保っている。
 噴出圧力は調整できるが規定値2.9〜3.2MPa(30〜33kgf/cm2)以上にする事は危険である。
(v)圧力計
 圧力計は充気弁の前に取り付けたものと充気弁の後に取付け、常時空気槽内に通じているものとがあり、前者は充気時における圧力を示し、後者は常時空気槽内の圧力を示している。また前者の場合でも充気弁を開ける事により常時空気槽内圧力を知ることができる。
 
2・142図 空気槽
(拡大画面:18KB)
 
(vi)鉛栓(フュージブルメタル)
 火災などによって空気槽の温度が異常に上昇した場合、鉛合金が溶けて空気を放出することによって危険を防止するようになっている。
(b)点検と整備
 定期的にドレンを抜くと共に弁シートの当りおよび空気槽内外面の腐蝕を点検する。
(2)空気始動分配弁
(a)構造と機能
 各シリンダ毎にピストン位置に適合させて圧縮空気を吹き込む様に作動しているものである。弁、弁本体および弁ふたから成り、カム軸によって駆動される。
 弁はカム軸の回転によってまわり、2・143図に示すように弁の切り欠き部(または孔)と弁本体の穴が合致したとき弁の背後にきている空気が弁本体の穴をへて始動弁に至る。
 始動位置は弁が1/5位開いて空気が十分通る開度となった一般に圧縮上死点過ぎ15゜の位置としてある。
 
2・143図 分配弁
(拡大画面:7KB)
 
(b)点検と整備
 分配弁軸とブッシュの摩耗、焼付のほか分配弁キーのガタ、接手のガタなどを点検すると共に分配弁カバーと分配弁とのスキマなどに注意して点検する。
(3)始動弁
(a)構造と機能
 シリンダヘッドに取付けられ始動空気の流入と燃焼ガスの逆流防止をしている。
 作動は2・144図に示すように、始動空気によって自動的に開き、弁バネおよびシリンダ内圧によって閉じている。始動空気はこの弁をへてピストン頂部に作用してピストンを押し下げ、エンジンを始動させる。
(b)点検と整備
 弁および弁シートの当たりを点検し修正する。吸排気弁の修正と全く同様に行う。弁箱内で弁軸が円滑に作動することが大切で摺動部の摩耗のほか弁軸の曲り、パイロット弁の作動、戻しバネの折損などについて点検し、使用限度を越えるものは交換又は修正する。また各部の錆付きや腐食についても注意すると共に錆などは目の細かなサンドペーパで清掃する。
 
2・144図 始動弁
(拡大画面:36KB)
 
(4)操縦弁
(a)構造と機能
 操縦弁は、2・145図(a)に示すように本体と弁、弁バネ、始動ハンドルからなり、始動空気の一部を塞止弁の開閉プランジャ部に送って塞止弁を開くためのもので、この弁は手動で操作する。自動起動装置のエンジンではこれを電磁弁にかえる。
(b)点検と整備
 弁および弁シートの当たりを点検し、修正すると共に、スプリングの損傷の有無を点検する。
(5)塞止弁
(a)構造と機能
 塞止弁は、2・145図(b)に示すように本体、弁、弁バネ、開閉プランジャからなっており、空気槽の圧縮空気の流れを操縦弁からの作動空気が到達する迄時停止させる役目をしている。
 操縦弁を操作すれば自動弁が開いて空気槽からきた空気を分配弁に送る。
(b)点検と整備
 弁および弁シートの当たりを点検し、修正すると共に、スプリングの損傷の有無を点検する。
 
2・145図 操縦弁、塞止弁
(拡大画面:16KB)







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