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(2)オルタネータ
(a)構造と機能
 バッテリは必要な電気を供給するが、放電されたままでは蓄電量が減少するので運転中にはどうしても充電する必要がでてくる。
 この蓄電量を正常に保つため充電を行っているのがオルタネータ(交流発電機)とダイナモ(直流発電機)である。バッテリ充電には従来ダイナモ(直流発電機)が使用されていたが近年、半導体の開発とともにオルタネータ(交流発電機)が採用されるようになり、現在では殆んどのエンジンはオルタネータを使用している。
 充電用のオルタネータは一般に界磁回転型で、ブラシとスリップリングを通じて励磁コイルに直流電流を供給して磁界をつくり発電コイルに発生した交流電圧をダイオードを用いて整流し直流電圧を取り出す。
 オルタネータは船舶用エンジンにも取りつけられる2線式のオルタネータで、I.Cレギュレータを内蔵し、コンパクト化を図っている。オルタネータの構造は2・130図のように大きく分けて固定子(ステータ)、回転子(ロータ)、軸受部(フロントカバー、リヤカバー)、I.Cレギュレータより構成されている。
 
2・130図 オルタネータの構造
(拡大画面:52KB)
 
(i)オルタネータとダイナモの相違点
(イ)ダイナモの場合は発電部(アーマチア)が回転し、ブラシは整流と外部に電気を流す役目をしているが、オルタネータの場合は発電部が固定され、ブラシは発電に必要な励磁電流を流入させるために使われている。
 したがって、ダイナモのブラシは出力電流が通過するため大きな形状を必要とし、オルタネータのブラシは励磁電流の通過だけなので小形にすることができる。
(ロ)オルタネータとダイナモの構造は2・131図のように励磁側と発電側が正反対になっている。
 
(ii)オルタネータの作動原理
 磁界の中におかれた導体が、磁束を切ると、その導体に電流が流れる。この発電の原理は、従来の直流発電機と同じであるが2・132図に示したように界磁(ロータ)が回転することにより固定されたステータコイル(導体C.C’)に交流電気が発生する。
 発生した交流電気はダイオードがあるため整流され直流として外部へ導かれる。実際のオルタネータは三相交流で6箇のダイオードを用い全波整流を行っており2・133図の太線のような直流波形が得られる。
 
2・131図 構造図
(拡大画面:39KB)
 
 
2・132図 オルタネータ作動原理
 
 
2・133図 三相全波整流波形
 
(iii)ダイオード
 ダイオードは、一方向に電流を流し、その逆方向の電流を流さない性質を持っている。この性質を利用して、交流を直流に変換したり、DCジェネレータに使用しているカットアウトリレーの働きもしている。
 ダイオードは(+)の電荷を帯びた((+)の電気を運ぶ)正孔を持つP形半導体と、(−)の電荷を帯びた((−)の電気を運ぶ)電子を持つN形半導体が組合わされている。
(1)2・134図のようにP側に(+)を、N側に(−)をかけると、正孔および電子は矢印の方向に流れP形半導体とN形半導体の接合部に集り電流が流れやすくなる。
(2)逆に2・135図のようにP側を(−)、N側を(+)とすると正孔は(−)の方に引かれ、電子は(+)の方に引かれて正孔と電子は接合部から離れるように働き接合部(ジャンクション)の抵抗は高くなって電流は流れない。
(3)ダイオードの特性は2・135図に示す通りであり又その導通方向は2・136図のようにマークまたは底部の刻印の色で区別されている。
 
2・134図 PNジャンクションに電圧をかけた時の様子
(拡大画面:29KB)
 
 
2・135図 シリコンダイオード特性
 
 
2・136図 シリコンダイオード導通方向
 
(b)点検と整備
(i)出力特性テスト
 2・137図のように接続し、機関を運転し、ダイナモの回転数が2,500rpmの時、電圧が26V、可変抵抗調整による電流が21A以上であれば良好である。
 
2・137図 出力特性テスト
 
注)(1) K端子は、B・E端子やバッテリへ接続しないこと。運転中に接続すると3相補助ダイオードが焼損する。
注)(2) スイッチK1を入れても停止中は電流は流れない。流れる時は3相主ダイオードがショートしている。
注)(3) ダイナモの回転を除々に上昇させてゆくと約1,500min-1(1,500rpm)以上の時、急激に電圧が上昇するのが普通である。
 
(ii)フィールドコイル(ロータ)
 ロータのスリップリングにテスタを当て整備基準に示す抵抗値があれば良好である。絶縁抵抗はメガーで測定し良否を判定する。スリップリングとコア間の導通を測定し、導通があればアースしている。
 
(iii)アーマチュア(ステータ)
 テスタでステータコイルのリード線、3本相互間の導通を測定する。導通があれば良好である。次いでリード線とコア間の導通を測定する。導通があればアースしている。コイルのレアーショートはこの方法では判定困難である。
 
(iv)ブラシ
 摩耗限界線まで摩耗しているものは交換する。
 
(v)レギュレータの調整電圧点検
 2・138図のように接続し、回転数が5,000min-1(5,000rpm)時の調整電圧が28〜29Vであれば良好である。必らず満充電のバッテリを用いること。これは5,000min-1(5,000rpm)時の充電電流を5A以下に押えるためである。
 
2・138図 レギュレータの調整電圧点検







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