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2)主軟受、主軸受メタル、スラスト軸受
(1)構造と機能
 主軸受はクランクケースの隔壁部に十分な剛性を持たせるようにリブで補強されたボス部に、主軸受キャップと共加工で精密ボーリング仕上げされ、主軸受メタルが納まるハウジング部分で、主軸受メタルを介して、クランク軸を支持する。
 主軸受キャップは、合せ面がズレないようにノックピンやインロ式又はセレーション式で位置決めされると共にクランクケースとの組合せ番号が打刻してある。
 主軸受メタルは主軸受ハウジング内に納められ、クランク軸のジャーナル部を支え円滑に回転させる軸受で、中高速機関では薄肉形が一般的である。軸受メタルとしては2・22図に示すようなホワイトメタル(錫鉛合金)、ケルメットメタル(銅鉛合金)、アルミメタル(アルミ錫合金)などが多く用いられている。これらのメタルは取外した状態では軸受孔より直径がやや大きく(張り代)締付け前には合せ面がわずかにとび出しており(クラッシュハイト)、主軸受キャップを規定トルクで締付けると軸受ハウジング内面に密着し真円となる様になっている。また2・23図に示すようにクラッシュ不適による軸受端部の盛上がりを防ぐためクラッシュリリーフをつけ、更にハウジング変形による当り不良ならびに油膜切れ防止のためオイルリリーフをつけている。
 
2・22図 薄肉形メタル
(拡大画面:34KB)
 
 
2・23図 クラッシュとクラッシュリリーフ
(拡大画面:41KB)
 
 スラスト軸受はクランク軸が軸方向に移動しようとする力を受ける軸受であり、通常クランク軸に大きなスラスト力は働かないが機関台傾斜角などによって生ずるスラスト力を受け止めるために設けられている。一般にスラスト軸受には2・24図に示すように半月形のメタルを上下組合せて用いているが中には主軸受メタルと組合せて一体形に作られたものもある。
 
2・24図 スラストメタル
 
(2)点検と整備
(イ)主軸受および主軸受キャップ
 主軸受ハウジングおよび主軸受キャップの亀裂、焼損、油やけ、傷などの他、変形などについても点検する。
 クランクケース隔壁リブなどへ主軸受ハウジングから亀裂がないか点検する。亀裂又は焼損している場合はクランクケースおよび主軸受キャップを仕組で交換する。また焼付事故などで焼損している場合も同様に交換する。
 ハウジング内面に油やけおよび変色などが認められる場合は変形している恐れがあるため主軸受キャップを規定トルクで締付け、ハウジングの内径をシリンダゲージで2・25図に示すように計測する。変形量が使用限度を超える場合は交換する。
 
2・25図 主軸受ハウジング計測方向
 
(ロ)主軸受メタル(2・26図から2・33図を参照)
 メタル内面の当たり、摩耗、損傷、腐蝕、異物埋没、亀裂、剥離などについて点検し程度のひどいものは交換する。またメタルの裏金の外周面の異常な当たり、叩かれ、油やけなどの有無を点検する。ケルメットメタルなどの完成メタルについてはメタル合せ面に叩かれた痕跡のあるものは締付力の不足やボルトの伸びなどによることがあるので特に注意することが必要である。又主軸受ハウジングとメタルとの間にスキマがあるとメタルに歪を生じ、亀裂や剥離の原因となるばかりでなく焼付きなどの事故を生じる恐れがあるため、メタル背面の状況についても十分に点検することが必要である。2・26図から2・33図に個々の例を示す。







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