2.2 エンジン運動部
エンジンの運動部は2・17図に示すようにクランク軸、主軸受、スラスト軸受、ピストン、連接棒ならびにバランサ、ハズミ車、ダンパ等から成っている。
2・17図 主要運動部
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1)クランク軸
(1)構造と機能
ピストンの往復運動を連接棒を介して回転運動にかえ、軸端から回転力を他に伝えるものである。主軸受に支えられて回転するクランクジャーナル部と、クランクジャーナル部に平行なクランクピン部、そしてクランクピン部とクランクジャーナル部を連結するクランクアーム部とからなっている。2・18図に一例を示す。
クランクアーム部には必要に応じ回転のバランスを取るため、バランスウェイトを設けている。材質は十分な強靱性のある炭素鋼、ニッケルクロームモリブデン鋼などの特殊鋼の鍛造品でピン部、ジャーナル部に高周波焼入れを施したのち研磨仕上げを行っている。
2・18図 クランク軸
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(2)点検と整備
クランク軸の曲がり、亀裂、ジャーナル部およびピン部の摩耗、焼損、傷などのほか錆やバランスウェイトの取付けボルトの弛みなどについて点検修正する。
(イ)曲り
2・19図に示すようにクランク軸両端のジャーナル部をVブロックで支持し、手でクランク軸を回しながらダイヤルゲージで計測し、外周の振れを読み取る。曲りはクランク軸を1回転させた時のダイヤルゲージの振れ幅の1/2が曲り量となる。曲りがメーカの基準値を超えているものは交換する。
2・19図 クランク軸の曲げ計測
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(ロ)亀裂
テーパキー溝部分、アーム部とジャーナル部又はピン部との付け根部分、油孔の周囲などに亀裂が発生し易いのでこの部分をカラーチェックや磁気探傷法により点検する。亀裂が軸芯と45゜方向に入っている場合はねじり振動による恐れがあるためねじり振動を計測し、対策を施すことが必要である。
デフレクション過大(曲げ力が大きい場合)による亀裂はアーム部の付け根部分に発生することが多く、この場合は軸心のずれ、機関台への取付け不良、機関台の剛性不足、ジャーナル部およびピン部の摩耗などのほか横引きトルク過大について注意する。一例として曲げ力による破断面を2・20図に示す。
これらの亀裂を認めた場合はクランク軸を新品に交換する。
2・20図 曲げ力による破断面
(ハ)ジャーナル部およびピン部の焼損、摩耗
ジャーナル部やピン部が焼損し変色している場合は交換する。軽度なものは研削しアンダサイズに修正使用可能であるが硬度低下の恐れがある場合は表面硬度および硬化深さなどについてチェックし、又磁気探傷法にてヘアクラックのないことを確認する必要がある。焼損や焼付き発生の場合は主軸受、連接棒大端部などについても変形、損傷の有無を十分点検することが必要である。
ジャーナル部およびピン部の摩耗はマイクロメータで2・21図に示す個所を計測し、摩耗値、真円度、円筒度が使用限度を超えている場合、メーカでアンダサイズの部品が準備されて居れば研削修正して、使用する。
2・21図 クランク軸径計測位置
アンダサイズに研削修正する場合はジャーナル部とピン部の中心間距離を変えぬようにまたジャーナル幅やピン幅を広げぬように、さらにアーム部付け根部のフィレット部(隅肉部)のRを変えぬように注意しなければならない。なおアンダサイズに研削する場合はピン部やジャーナル部の表面硬度が許容範囲に入っているか否かを事前に十分検討した上で実施することが必要であり、油孔の周辺についても十分丸味を持たせるように修正する。現地での緊急修復処置として行うジャーナル部やピン部の溶射肉盛りは十分実績のある専門工場へ依頼すると共に仕上り寸法などを十分指示することが必要である。
(ニ)傷、錆、その他
ジャーナル部やピン部の傷については、傷が深い場合は交換するかアンダサイズに研削修正して使用する。なお、比較的浅いものについてはかえりを油砥石で修正する。
錆や腐蝕についても十分点検し軽度なものについては細かなサンドペーパで取除き油砥石で修正する。
バランスウェイト取付けボルト部の弛みについても点検する。弛みがあった場合は必ずメーカの指示を受け、整備すること。
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