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2.8 船尾管軸封装置
1)海水潤滑軸受の場合
 海水潤滑方式で、端面シール装置の場合、新造時の取付要領、配管要領、操作要領などについては、メーカの取扱説明書によるが、本船の艤装期間中及び運航中の取扱整備などについて記す。また、シール装置の異常発生時の対策について、7・3表に示す。
(1)インフレタブルリング(緊急用シール)漏れ検査
(1)上架時
 上架時はインフレタブルリングに0.3〜0.6MPa(3.1〜6.1kgf/cm2)の空気を徐々に供給し、送水管系より喫水圧の2倍相当の水圧を加えた後送水供給弁を閉め、シールリング部及び船尾管内に連続漏水が無いこと、及び空気圧力降下率が10%/hr以下であることを確認する。
(2)下架時
 下架時は給水系統をすべて閉鎖し、インフレタブルリングに0.3〜0.6MPa(3.1〜6.1kgf/cm2)の空気を徐々に供給し、弁の開放により船外からの漏水が無いことを確認する。(7・10図参照)
 
7・10図
(拡大画面:20KB)
 
(2)シールリング漏れ検査
(1)上架時は1項と併せて確認する。
(2)下架時は運転中と同じ状態にし、連続漏水の無いことを確認する。
(3)運転前準備
(1)インフレタブルリング内の空気が開放されていることを圧力計(G−1)で確認し、給気弁(1)を閉鎖すると共に、空気逃がし弁を全開する。
(2)空気逃がし弁(3)を開きシール装置内の空気抜きを行う。
(3)送水供給弁(4)、及び船尾管に至る海水元弁を全開にする。
(4)冷却送水ポンプを運転する。
(4)保守点検
(1)運転中は定期的に封水状況の確認を行う。若干の漏れは潤滑、冷却をよくするため最もよい状態である。
(2)上架前には必ずインフレタブルリングの作動確認を軸停止時に行う。
(3)インフレタブルリングの空気圧を長時間にわたって0.8MPa(8kgf/cm2)以上にしないこと。また、軸回転中には絶対に作動させない。
(4)シール装置近傍に必ず集電装置を設置し、油分の付着や作動不良の無いよう保守点検は充分に行うこと。
(5)送水管系の海水管及びバルブ類は、それぞれ汚れに応じ適宜掃除のこと。
(6)火炎、火の粉が直接シール装置にかからないよう火気取扱に注意のこと。
(5)部品取替え基準
 漏水が著しく(100〜200l/day)、数日以上続きかつ改善の兆候が認められない場合には、シールを点検し、必要に応じて部品交換あるいは修正を行い、必ず予備品を補充のこと。
(1)シールリング
 シールリングの寿命としてはおおよそ2〜4年、深喫水の場合は多少これより早くなる。シールリング交換の際には、ガータスプリングも併せ新替えのこと。
(2)インフレタブルリング(緊急用シール)
 おおよそ5年程度使用可能であるが、できるだけ軸抜き時に新替えすることを勧める。万一、軸回転時に作動させて破損した場合には速やかに新替えのこと。
(3)メイティングリング
 メイティングリングは摩耗しても切削して再使用することができる。切削量が大きくフランジ部肉厚がおおよそ10mm程度になった場合は新替えのこと。
 メイティングリングの切削要領
 摺動部摩耗深さが0.5mm以上の場合は切削のこと。切削は7・11図の如く摺動面切削量Aと同量取付フランジ面の切削を行う。
(4)Oリング
 傷、接着部のはがれや異常変形がなければ4年程度使用できる。ケーシング開放時に状況判断の上新替えのこと。
 
7・11図
 
2)油潤滑軸受の場合
 リップ式軸封装置の新造時の取付要領などについてはメーカの説明書によるものとする。
 本船の艤装期間中および運行中の取扱い、整備などについて記す。
(1)進水後の注意事項
 進水後の艤装期間中の注意としてつぎの処置を行う必要がある。
(1)船首側シールライナとケーシング間から異物が入らぬようカバーをする。
(2)船尾側シールは、進水までカバーをしておき、進水後長期間にわたる場合は、かき、ふじつぼ、などの繁殖を防ぐため適当な処置をする。
(3)艤装期間中、シールリングに高い油圧がかかるのを防ぐ処置をする。例えば、配管の適当な個所で油を抜き、油圧を下げる処置をする。
(2)シールライナの摩耗
 シールライナは使用中、シールリングとの摺動部が摩耗し、また外的な要因により、シールライナ外径を修正機械加工することがある。この場合7・6表の値まで加工できる。またシールリング内径は、スプリングによってしめしろを調整する必要がある。
(3)運行中の点検事項
 運行中の点検事項および異常状況と、その対策については7・4表に示すので、同表に基づき点検を行う必要がある。また異常と認められる状況についての原因と対策は7・5表に示す。
 
7・3表 シール装置の異常形態と対策
(拡大画面:96KB)
 
 
7・4表 運行中の点検事項および異常と認められる状態
No. 点検事項 点検間隔 No. 異常と認められる状態
1 軸受本体または船尾管油温の点検 1日に1回 (a) 軸受本体で70℃以上または船尾管油温で60℃以上のとき
2 ストレーナの点検 1ヶ月に1回 (b) ストレーナにホワイトメタルを認めたとき
(c) ストレーナに海水の侵入を認めたとき
3 船尾管用潤滑油動力タンク油面の点検 1日に1回 (d) 船尾管用潤滑油重力タンク油面が12l/day相当以上上昇するとき
(e) 船尾管用潤滑油重力タンク油面が12l/day相当以上下降するとき
4 前部シールの油タンク油面の点検 1日に1回 (f) 前部シールの油タンク油面が12l/day相当以上上昇するとき
(g) 前部シールの油タンク油面が12l/day相当以上下降するとき
5 前部シールの油温またはケーシングの温度点検 1日に1回 (h) NBR使用の場合で前部シールの油温が70℃以上、またはケーシングの表面温度で約65℃以上のとき
(i) フッ素ゴム使用の場合で前部シールの油温が90℃以上、またはケーシングの表面温度で約85℃以上のとき







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