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2)吸気系統の不良
(1)換気不足
 機関室の換気不足は、室内温度が上昇し、その分だけ、空気の密度がうすくなるので、完全燃焼に必要な酸素量が不足し、出力が低下する。
 また吸気温度の上昇は、燃焼ベース温度が高くなり、燃焼温度が高くなる。吸気温度が1℃上昇すると、シリンダヘッド出口における排気温度で、約2.5℃上昇するので、その分だけ機関の熱負荷が増して、つらくなり、色々なトラブル誘発の原因になる。
 従って室内温度は、最高でも40〜45℃以上にならぬように、換気量を機関出力に応じて算出し、換気穴や換気扇を設け、十分な換気が出きるようにしなければならない。次図表は換気量の目安を求める時に便利であり、例えば350kW(476PS)の機関室温度が50℃であったとすると、この温度を40℃にするための必要換気量は、4,000m3/h=67m3/min押込換気扇を追加しなければならないことが簡単に判明できる。
 
a)換気容量の早見表
(拡大画面:84KB)
 
(2)エアクリーナの詰まり
 エアクリーナやプレクリーナの詰まり、オイル入れ過ぎ(オイルバス式)などの場合は、吸入抵抗が増して、シリンダ内への吸気量が減少する。従って燃焼に必要な酸素が不足して出力が低下する。
 従って、エアクリーナの定期的な清掃点検及びエレメント交換が必要になる。
(3)空気冷却器の効率低下
 空気通路側に汚れが堆積したり、冷却水管内壁にスケールなどが付着すると、熱伝導が悪化して空気冷却器の効率が低下する。従って給気温度が低下せず給気密度がうすくなり、必要な酸素量が得られ難くなるので、出力が低下する。
 空気冷却器の汚れは、2〜3年毎又は定期的に清掃しなければならない。洗滌液をポンプで循環させて行なう。
(4)給気圧力の低下
 給気集合管からのもれ、エアクリーナの詰まり、コンプレッサの汚れなどのほか、過給機の故障などがあると給気圧力(ブースト)が低下し、シリンダ内へ多量の空気を押し込めることができなくなる。従って出力が低下する。
 コンプレッサホイールの汚れは、運転中に少量の水を滴下して、コンプレッサ室内へ吸い込ませて清掃するか分解して洗剤にて清掃する。
(5)過給機の故障
(1)タービンホイールの汚れ
 タービンホイールやケース内にカーボンが付着堆積すると、タービン効率が低下し、回転が減少するので、給気圧力が低下して、出力が減少する。タービンホイール及びケース内を清掃する。
 タービンホイールの汚れが著しい場合は、長時問スロー運転や燃焼が良くない場合が多いので、燃焼悪化している原因を探求して修復しなければならない。
(2)シールリングの汚れ
 ガスシールリングの溝内にカーボンなどが介在すると摺動抵抗が大きくなり、回転が低下するので給気圧力が減少する。オーバホールにより清掃が必要である。
(3)ベアリングの焼付き
 ベアリングやスラストベアリングなどが焼付き損傷すると、摺動抵抗が増大して大巾に回転低下するので給気圧力が低下する。総分解整備をしなければならない。
(4)羽根の変形や曲がり
 タービンやコンプレッサホイールの羽根が曲がったり変形すると、効率が低下して給気圧力が減少する。
 曲りや変形を修正すると、そこから亀裂して飛散し破損することがあるので、修正してはならない。
 曲がりや変形したブレードは早いうちに交換しなければならない。
(5)ロータシャフトの曲がり
 ボルトナットなどの異物がタービン又はコンプレッサ室内に入ると、ブレード破損、ケースとの干渉などを生じて、ロータシャフトが曲がることがある。シャフトが曲がると円滑な回転ができなくなるので、タービンホイールやコンプレッサホイールが逆に障害となり、機関の運転さえも、できなくなる。このような場合は、過給機を取外し無過給接手に変えて、約50%程度の出力で運転し帰港する。
 
3)圧縮系統の不良
(1)バルブとシートの摩耗
 バルブやシートが摩耗すると圧縮もれを生じ、出力が低下する。摩耗した分だけバルブが沈み、バルブクリアランスが減少するので定期的にバルブクリアランスを調整しなければならない。
 バルブクリアランスがなくなると、傘部がピストンと干渉して大事故を起こすと共に、シートに着座しなくなるので、ガス吹抜けや熱伝導ができなくなり、バルブは溶損する。
 バルブの摩耗修理は、シート面をグラインダ又はシートカッタで削り、バルブはリフェーサで研削したあとバルブコンパウンドで摺り合せ、最後に油摺りをして完了するのである。
 修正後、青ペン又はベアリングレッドをバルブにうすく塗布してシート面に強く叩きつけ、当たりを点検し、外当りとなることを確認する。
 摩耗が軽微な場合は、コンパウンドと油摺りだけで修正する。シート面の当り巾は1.5〜2.0mm程度に修正し、当り巾が2.0mm以上になった場合は、角度の異なるカッタでシートを削る。
(2)バルブとガイドの摩耗
 バルブステムとガイドのスキマが摩耗により、大きくなってくるとバルブの着座が不安定となるため、シート面への当り不良となり、ガス吹抜けを生じ易い。またオイル下がりによるカーボン噛み込み、熱伝導不良によるバルブ溶損、欠損、スティックなど、色々なトラブルの原因となる。
 従って限度以上にスキマが大きくなった場合は直ちにバルブ又はバルブガイドを交換修復しなければならない。
(3)ピストンリングの摩耗
 ピストンリングが摩耗すると合口スキマが増加して、圧縮もれやガスもれを生じ、オイルコントロールができなくなると共に、リング背面からのガス圧力増加により摩耗が一段と促進する。従ってピストンリングは1〜2年毎又は定期的に交換しなければならない。
(4)シリンダライナの摩耗
 シリンダライナが摩耗すると、ピストンリング摩耗と同様な状態となるほか、殆んどの場合、ピストンスラスト力による偏摩耗により楕円形になって摩耗する。
 従って圧縮もれ、ガスもれで出力が低下するほか、オイルコントロール不能となるので、限度を超えて摩耗したものは交換するか、スリーブ式の場合はボーリングやホーニング修正して、オーバサイズ化を計る。
(5)ピストンピン部の摩耗
 ピストンピン及びロッド小端部のブッシュとのスキマが摩耗して、大きくなると、衝撃摩耗が促進され圧縮比が小さくなるので出力が低下する。
 限度以上に摩耗した場合は、ピストンピン又はブッシュを交換修復しなければならない。
(6)クランクピン部の摩耗
 ピン及びメタルとのスキマが増加すると、衝撃力が一段と大きくなり、摩耗を助長すると共に、ロッド大端の応力が急激に増大して、大端部に歪や変形を生じ、メタル焼付きを誘発する。限度以上に摩耗した場合はメタルを交換して修復する。
 またピンを研削修正した場合は、アンダサイズの厚肉メタルに交換しなければならない。
(1)圧縮圧力の点検と測定
 シリンダの圧縮圧力を点検する場合は、ノズルを外し、アダプタを挿入し、ゲージを取付けて、スタータモータでクランキングして、圧縮圧力を測定する。クランキングの回転速度が120〜200min-1に達した時の圧力を読み、修理限度以下になったものは、オーバホールをして修理しなければならない。
 
項目 組立基準 修理限度
圧縮圧力 2.8以上 (120〜200min-1にて) 1.9以下
2.4以上 (120〜200min-1にて) 1.9以下
2.4以上 (120〜200min-1にて) 1.8以下
 
〔測定上のポイント〕
(ア)測定は機関の規定回転速度で行う。
(イ)測定は各シリンダとも2回以上行い、平均値をとる。
(ウ)2、3のシリンダを測定して他を推定するのは危険であるから必ず全シリンダを測定する。







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