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(4)シリンダライナの腐食
 シリンダライナの腐食は内面(燃焼室側)と外面(冷却水側)とに生ずる。
a)内面腐食の原因とその防止法
(1)燃料油や潤滑油に硫黄分や水分など不純物が多いときは、硫黄が燃焼して無水硫酸を生じ、これが水に溶けて硫酸となり燃焼室壁面に硫酸腐食を起こす。
 これの防止には、不純物の少ない燃料油や潤滑油の使用と、シリンダ冷却水の出口温度を高目に保ってシリンダライナ壁温をできるだけ高くし、硫酸露点以上に保つようにすることが必要である。
(2)吸込空気中に塩分を多く含むときもシリンダライナ内壁が腐食する。吸込空気の取入口を適当な所に設けて機関まで管で導くなどして、清浄な空気を吸入させる。
b)外面腐食の原因とその防止法(海水冷却)
 ライナの冷却水側に腐食を生ずる原因には、工場廃水などで汚染された港に停泊中、水中に含まれる腐食性成分のために生ずる酸化腐食もあるが、多くは異種金属どうし、または同種金属どうしでも状態が異なっていて、これらの間に水があるとき生ずる電気腐食である。
 この電気腐食(電食)作用は、シリンダおよびライナの冷却面のみでなく、水中に浸されたプロペラと船体や水の管系などにも生ずる。
 たとえば、銅と鉄のような異種金属どうしが、電流を通すことのできる海水中に接近しておかれて他部で接合している場合、液中では鉄から銅へ、外部では銅から鉄の方へ電流が流れて、鉄の活性部分が鉄イオンとなって、水中に溶け出し、水中の酸素と化合して水酸化物になる(3・1図)。
 すなわち活性部分は局部陽極となり腐食する。また、3・2図のように同種金属の鉄どうしを海水中に浸した場合にも、2枚の鉄板に温度差があるとか、囲の水の流速が違っていたり、内部ひずみによる応力の有無または一方のみに気ほうが吹き付けられるとかなどで、状態が異なるときにも流電作用により陽極部が腐食する。要するに電気腐食は多数の局部電池が構成され、その電池の(+)から(−)へ電流を生じて陽極部が溶解することによって進行するものであるから、鉄部の局部陽極を陰極にして局部電池を解消することが大切である。
 このような電食を防止するには次のように3つの方法がある。
 
3・1図 異種金属の流電作用
 
 
3・2図 同種金属の腐食
 
(1)防食亜鉛を使用する。
 下の図のように外筒に取付けたジャケット清掃用カバーなどに亜鉛板をボルト締めする。
 
3・3図 防食亜鉛の働き
 
 鉄は銅より腐食しやすいが、亜鉛は鉄よりもイオン化傾向が強く腐食しやすいので、図のように電流が流れて、亜鉛が腐食し鉄や銅の腐食を防ぐことができる。
 防食用亜鉛の取扱いは次の注意が必要である。
a. 不純物を含まない純良な亜鉛を選ぶ。不純物があると防食亜鉛の中だけで電流が流れて防食の効果がなくなる。
b. 鉄に完全に接着させること。取付面にゴムパッキンを入れて浸水腐食による密着不良を防ぐ。
 密着不良では亜鉛から鉄や銅の方に電流が流れないので、鉄を保護する役目が果たせない。
c. ときどき取り外して、表面のさびや汚れを取り除くこと。油などで汚れると亜鉛から液の方に電流が流れなくなるからである。
(2)シリンダの冷却温度を必要以上高くしない。水温が高過ぎると、水中に気泡が発生しやすくなり、同種金属でも電気腐食を生ずるからである。
(3)シリンダを清水冷却する。清水は海水と異なり電気抵抗が大きいから電気腐食を防止できる。
(5)シリンダライナのキャビテーション
 ライナ外周面、特にクランク軸直角方向にキャビテーションエロージョンを生じることがある。これは、ライナの振動によりライナ表面に真空の気泡が発生し、急激につぶれる時のエネルギでライナ表面が侵されるもので、激しい場合は、相対するシリンダの内面も侵されることがある。
 浸食が深いものは、使用中に貫通するおそれがあるので交換しなければならない。
 この原因として、冷却水圧力の圧力不足、防食亜鉛の消耗、異常燃焼、ピストンライナすき間の過大などがあるが、対策についてはメーカと相談すること。







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