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第1章 技術動向
 
 舶用機関は主機・補機いずれについてもその目的、用途により市場要求品質は多岐にわたるが、ここでは、小形高速舶用主機関(750kW以下)を中心に、(1)高出力化(正味平均有効圧力、出力率)、(2)軽量化(kW当たり重量)、(3)低燃費化、(4)電子制御化及びこれらの中低速機関における現状を通して舶用機関の技術動向について見ることとする。
 
 高出力化については、開発者にとっていつの時代でもチャレンジングなテーマであり、常に市場ニーズ(漁船船主ニーズ)の船速アップに対応してきた。1982年の大幅な漁船法改正は、それを機に図1、図2に示す正味平均有効圧力及び出力率の推移よりも判るように、メーカ間の高出力化競争に拍車をかける結果となった。又1995年を境に過給機の高圧力比化及び噴射系の高圧力噴射化が進み、一段と高出力化が加速された。現在最大出力における正味平均有効圧力は図3に示すように、2.1〜2.3MPa(21〜23kgf/cm2)前後であり、中低速機関もほぼ同レベルにある。又、ピストン単位面積当たりの出力に比例する出力率も図4に示すように、22〜27MPa・m/sであり中速機関は18〜25MPa・m/sである。この値は過去15年間で約80%以上も上昇している。
 この高出力化は、1)高圧力比過給機の開発、2)高圧噴射化(ユニットインジェクタ・電子制御の採用)、3)熱負荷対応によるところが大きい。
 
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図1 小形高速船用機関の正味平均有効圧力推移
 
 
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図2 小形高速船用機関の出力率推移
 
 
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図3 正味平均有効圧力の現状
 
 
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図4 出力率の現状
 
1)過給機
 高出力化のためには、多量の空気を必要とし、そのために過給機で高圧にした空気をシリンダ内に押込んでやらなければならない。従来一段過給の限界は、正味平均有効圧力で2.0MPa程度といわれていたが、すでに2.3MPaの機関が出現している。しかし中小形機関ではまだ二段過給は実用化されていない。従って、機関の高出力化に対応して、図5に示すように過給機の高圧力比化が進められ、現在圧力比は3.5〜4.0程度まで可能としている。そのために、コンプレッサの新開発を行い、高圧力に耐えるだけでなく効率の良い羽根形状、すなわちバックワードインペラを採用し、広い作動域で高性能を得ている。又、圧力比と正味平均有効圧力との関係を図6に示す。
 
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図5 圧力比の推移
 
 
図6 平均有効圧力と圧力比の関係
 
 過給機はラジアルタービンが主流であり、国内ではタービン効率上有利な空冷タービンケーシングを主に採用している。コンプレッサの材質も高圧力比に対応して従来のアルミ精密鋳造品でグレードアップを図ったり、アルミ鍛造の総削り品として強度を上げている。タービンは動圧パルスを有効に利用できるツインスクロール型が多く、低負荷から高負荷まで全域での高性能をねらっている。
 
2)高圧噴射化
 高出力にともなって多量の燃料を一定期間内に噴射することが必要となり、そのために燃料噴射圧力も高圧になってきている。
 従来のボッシュ式ポンプでは長い燃料噴射管があるため、高圧化をすすめていくと、キャビテーションによる噴射管の損傷や2次噴射による性能悪化等が発生してくるので、高圧化にはおのずから限界があり、デリベリバルブにダンピングバルブを採用するなどして、現在90〜98MPa迄達成している。一方、上記の不具合を解消して更に10MPa以上の高圧噴射を可能とするため、噴射ポンプとノズルを一体化し、燃料噴射管を無くしたユニットインジェクタ(図7)を採用した高出力機関が出現している。ユニットインジェクタ方式では、高圧噴射によって多量の燃料を瞬時に、最適な状態で噴射出来るため、良好な燃焼とともに、燃料消費率も低減することが出来る。噴射圧力の比較を一例として図8に示す。
 
図7 ユニットインジェクタ断面図と外観
 
 
図8 噴射圧力の比較
 
 また、中低速機関ではクローズドタイプのプランジャバレルを採用した等圧弁付高圧形燃料ポンプ(図9)等で100〜150MPa迄達成している。
 
図9 高圧形燃料ポンプ(等圧弁付)







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