3) |
生ごみ真空乾燥式減容器EF−300形の開発 「e−ドライ」 |
阪神内燃機工業株式会社 |
1. はじめに
ハンシン技術ニュースNo.35において小型器EF−50形(50l)の開発について紹介いたしましたが、今回(社)日本舶用工業会のご協力を得て大型器EF−300形(150l二槽式)を開発いたしました。
21世紀は食品廃棄物の処理が陸上、海上を問わず重要な問題になってくることが予想されます。生ごみの排出抑制とリサイクルの推進を目標とした食品循環資源再生利用促進法(食品リサイクル法)が2001年5月1日より施行されました。このような環境の中で従来の処理装置(バイオ式等)とは異なる真空乾燥方式を採用した生ごみ処理装置を開発しました。
当面は陸上を対象としていますが、将来、船舶からの生活廃棄物の海洋投棄に係わる規制も厳しくなることが予想され将来的には陸上のみならず舶用にも寄与するものと考えています。
EF−150形テスト器
2. 生ごみ処理器の現状
現在の生ごみ処理器についてまとめてみますと
・バイオ方式 ・乾燥方式 ・炭化方式 ・バイオガス、生分分解方式 ・天ぷら方式
など数多くの処理器があります。その中で3〜4年前より開発、販売され多くの実績があるのがバイオ方式です。しかし、食品循環資源再生利用促進法(食品リサイクル法)の目的及び処理器の使用上での問題点などから現在見直しを検討されているようにうかがえます。今回、当社が開発した真空乾燥式減容器は生ごみを低温でかつ悪臭を出さずに乾燥処理することで大幅な減容、減量、長期保存が可能となりますので生ごみリサイクル法の目的及びユーザーニーズにマッチした装置です。
3. 特長
真空乾燥式減容器は次の特長があります。
1. 低温乾燥だからできる広範囲のリサイクル
真空にすることで低温乾燥ができます。低温乾燥だから処理物の成分変化を少なくすることが可能となり、リサイクル材として広範囲に利用することができます。
2. 悪臭の発生がなく、減容、減量、長期保存ができる
真空乾燥方式なので悪臭はほとんど発生しません。また、生ごみは約60%が水分であり乾燥することで大幅な減容、減量、長期保存が可能となります。施設環境を守ります。
3. 省エネ設計
処理物を乾燥するために副資材は一切不要です。また、省電力設計となっているためランニングコストの低減が可能になりました。
4. 画期的な水エジェクタを採用
構造簡単、小型軽量、高性能の水エジェクタを採用していますのでシンプルでメンテナンスも容易、静かな運転が可能となりました。運転操作は全自動で、据付配管工事も簡単です。
4. 水エジェクタの性能
減容器の性能向上を目的とした各種テストを行った中で本器のシステムで最大のポイントである水エジェクタの性能について紹介します。
当初、300l一槽式を開発する計画であったため大容量の水エジェクタを新しく設計する予定で進めていましたが、ユーザーより150lの二槽式があらゆる面で合理的であるとの意見があり150l二槽式を開発することにしました。
そのため、水エジェクタは部品の共通化も視野に入れ小型器に使用している水エジェクタで循環水量アップで吸引能力アップを検討しました。
循環水量を13.1m3/H、13.7m3/H、15.2m3/Hに変化させて最適なポイントをさがしました。
その結果、循環水量13.7m3/H、水エジェクタ入口圧力0.25MPaが最高真空圧到達時間約12分、最高真空圧−99.7kpaで最良のマッチングであることが判明しました。
テスト結果は表1に示しています。
エジェクタ入口 圧力 Mpa |
水量 m3/H |
時間(分) |
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
0.30(系列1) |
15.2 |
0 |
−40.2 |
−63.7 |
−78.6 |
−86.9 |
−92.7 |
−96.2 |
−97.8 |
−98.4 |
−98.6 |
−98.8 |
−99.1 |
−99.3 |
−99.4 |
−99.5 |
−99.6 |
0.25(系列2) |
13.7 |
0 |
−38.2 |
−64.0 |
−80.6 |
−89.8 |
−94.9 |
−97.5 |
−98.6 |
−99.0 |
−99.3 |
−99.3 |
−99.4 |
−99.7 |
−99.7 |
−99.7 |
−99.7 |
0.20(系列3) |
13.1 |
0 |
−34.2 |
−59.2 |
−72.8 |
−80.9 |
−86.1 |
−89.8 |
−92.4 |
−94.3 |
−95.6 |
−96.6 |
−97.3 |
−97.8 |
−98.0 |
−98.2 |
−98.3 |
|
表1 水エジェクタの性能テスト
5. 蒸発テスト
性能確認をするために、おから(水分率=74.6%)を74.27kg投入し乾燥テストを行いました。
1時間ごとの水分率、真空圧、おからの温度及び水分蒸発量を計測しました。テスト結果は表2に示しています。
テストの結果次のことが判明しました。
1)水分蒸発量は運転開始後3時間までが少なくその後は平均5.2l/Hとなっている。
2)おからの温度は40〜42℃で一定している。
3)計画仕様を満足している。
|
投入時 |
1H |
2H |
3H |
4H |
5H |
6H |
7H |
8H |
9H |
10H |
11H |
蒸発水量 L/H |
0 |
1.4 |
1.9 |
5.0 |
4.9 |
5.1 |
5.3 |
4.9 |
5.2 |
5.5 |
5.2 |
5.2 |
真空圧 −Kpa |
−99.7 |
−94.8 |
−92.6 |
−92.3 |
−92.7 |
−93.0 |
−92.7 |
−92.8 |
−92.7 |
−92.7 |
−93.1 |
−98.5 |
おから温度 ℃ |
30 |
35 |
40 |
42 |
41 |
41 |
41 |
42 |
40 |
38 |
36 |
30 |
水分率(%) |
74.6 |
74.2 |
73.5 |
71.5 |
69.2 |
66.4 |
62.9 |
58.9 |
53.6 |
46.3 |
37.0 |
10.0 |
|
表2 おから乾燥テスト
計画仕様
投入物 |
75kg(150l) |
水分率 |
60% |
水分蒸発量 |
4.5l/H |
乾燥時間 |
10時間(水分率10%以下) |
計画仕様を満足することができましたが、より性能向上を行うためには、運転開始後3時間の水分蒸発量の向上の研究が必要です。
6. まとめ
当初、目標として性能は満足しましたが、さらなる性能向上を目指して調査、研究を行っていきます。平成13年4月25日発刊の官報(号外84号)によると、食事の提供に伴う事業として、沿海旅客海運業も生ゴミリサイクル法に含まれることになりました。
今後は陸上のみならず海上においても社会のニーズにそえるものと確信しています。
水エジェクタの性能
おから乾燥テスト
|