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4)推進機関最適制御装置(Pro−Con CX300)
かもめプロペラ株式会社
 
1 はじめに
 船の推進システムというと、対象は主機関、可変ピッチプロペラ(以下CPPという)、舵、スラスタなどがありますが、プロペラメーカである当社では、CPPの特性を生かした制御装置として、推進機関最適制御装置〔PRO−CON CX300(Propulsion Control Cybernetic System)〕を開発し、販売しております。
 以下にPRO−CON CX300を紹介致します。
 
Pro−Con CX300
 
2 主な特徴
・CPPは5ケ所、主機関は3ケ所で制御可
・ジョイスティック装置と簡単に接続
・システムの拡張性が容易(拡張機能はハードの追加無し)
・ALC(自動負荷制御)の天候調整はオートパイロットの技術を利用
・アラームコード表示により故障個所が容易に判別
・コンビネータカーブは最大5種類まで設定可
・ガバナはモータ式・空気式・電子式いずれも可
・CPU故障時でもアナログバックアップによりCPPは制御継続可
 
3 概要
(1)多機能への対応
 推進システムへのユーザーのニーズが多様化している中で、それを満足させようとすると一品一様になってしまいます。その都度ハードウェアやソフトウェアを構築していたのでは、複雑になるだけでなく、各機能間の整合がうまく行われないために信頼性が低下してしまうことがあります。
 そこで、信頼性を保ったまま多機能を満足させる方法として、PRO−CON CX300ではハードウェアはあらかじめ全機能を備える方法とし、どの機能を使用するかは、その仕様によって対応するソフトウェアを入力する方法を採用致しました。
(2)バックアップ
 制御装置は故障しないことが理想ですが、万一故障してもデッドシップにならないようなバックアップをアナログ回路で装備しています。バックアップの方法としてはCPUの二重化等がありますが、CPUそのものが故障することはごくまれであり、むしろ周辺チップ故障の方が多いため、せっかくCPU二重化等を行っても安心できるバックアップとは言えません。
 そこで、PRO−CON CX300では、コンピュータ部(CPUや周辺チップ含む)が故障した場合、アナログ回路によりCPP制御を行う方式のバックアップを採用しました。これにより、万一故障してもデッドシップにはなりません。
(3)警報・状態記録
 PRO−CON CX300では、本体やその周辺機器(ポテンショメータなど)に故障が生じたとき、故障内容・アクチュエータ状態・時間を記録する機能があります。継続故障や再現性のある故障は、修理も容易ですが、再現性が無い故障では故障個所を探す上で、故障時におけるアクチュエータの状態が重要なポイントになります。
 しかし、近代化船においては操船者が多くの機器を操作しているので、ある故障が発生したとき、指令がどうであったか、アクチュエータの状態はどうであったかという情報を得ることが非常に難しい場合が多くあります。そこで、これらを自動的に記録することにより故障個所をより早く正確に探すことができるシステムとしました。
(4)モニタシステム
 PRO−CON CX300では、外部にモニタを接続し、アクチュエータの状態をモニタできる機能があります。
 IBS(Integrated Bridge System)は航行の援助装置として重要な役割を果たすシステムであり、最近多くの船に採用されています。しかし、一方で船橋にモニタシステムを全く装備しない船も少なからずあり、こういった船に対してモニタを装備することで、CPPや主機関への指令・追従状態や各機能の作動状態などを一元的に把握することができるようになります。
 
4 機能一覧
 PRO−CON CX300が装備している主な機能一覧を以下に示します。
・CPP翼角制御(単独・コンビネータ・ジョイスティック)
・主機関回転速度制御(単独・コンビネータ)
・コンビネータ
 1つのハンドルまたはダイヤルで、CPPと主機関回転速度を同時に制御します。最大5種類のカーブを設定することができます。
・ALC(Automatic Load Control):自動負荷制御
 主機関が最適負荷で運転されるようにCPPを自動的に制御します。
 軸発装備船においては、軸発で使用する負荷を差し引くので、主機関は過負荷になりません。
・ASC(Automatic Speed Control):自動船速制御
 船速設定ダイヤルで設定された船速と、実船速(GPSまたはログ)を比較し、CPPあるいは主機関回転速度またはその両方を制御し、設定船速を保持します。
・OLP(Over Load Protection):過負荷保護
 主機関負荷が過負荷特性曲線(自由に設定可)を越えると、警報で知らせます。警報発生時にCPPを自動的に減少させることもできます。
・PGM(Program Control):プログラム制御
 CPP・主機関回転速度を電気的に遅く変化させることにより、主機関が過負荷や過速度にならないように制御します。
・クラッシュアスターンプログラム
・主機関PGM(主機関プログラム)
・自動減速(CPP・主機関)
 自動減速信号が入力されると、CPP・主機関回転速度はあらかじめ設定した値まで自動的に減少します。
・自動翼角中立
 推進クラッチ脱時、CPPを自動的に中立とすることによりプロペラ軸の遊転を防止します。
・FO係数入力
・負荷設定機能
 負荷設定ダイヤルでALCにおける負荷を自由に設定することができます。ALCカーブを上下にシフトする方法と、主機関負荷が設定負荷以上に上昇しない方法があります。
・CPP翼角上限トリミング
 トリミングダイヤルでCPP前進側最大翼角を電気的に制限します。
・CPP作動異常検出
・ガバナ作動異常検出
・異常記録
・モニタ接続機能
・パソコン接続によるデータ管理機能
 
5 おわりに
 PRO−CON CX300は当社にとって、コンピュータ式制御装置の第3世代にあたります。第2世代制御装置を大幅に改善し、多くのニーズに対して1機種で対応可能としました。
 また、警報・状態を記録することにより、制御装置故障に対して迅速に対応できるので、両者においてメリットが多い製品に仕上がったと確信しています。
 
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システム構成図







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