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2)舶用主機関用油圧クラッチ HMC160形
阪神内燃機工業株式会社
 
1. はじめに
 御存知のようにクラッチは、主機関とプロペラの間に設置され、主機関の動力をプロペラに伝達する装置です。
 主機関の側から動力を取出す場合、クラッチを装備してこのクラッチを脱することにより、プロペラを停止させて側から動力を取出すことが可能となります。
 本油圧クラッチは湿式多板式で、油圧回路に昇圧機構が組込まれているためクラッチ嵌入時、機関に急激な負荷を与えず、滑らかに動力を伝えます。
 
2. 概要
 以前から製作していた油圧クラッチHMC16形は、主機関と油圧クラッチの間に弾性継手が必要でした。
 しかし、弾性継手が付くために、イニシャルコスト及びメンテナンス費用がかかります。また、主機関の最低回転数を下げられない(ねじり振動の使用禁止回転数がある)などの不便がありました。
 そこで、今回HMC16形と同容量で、弾性継手を必要としない油圧クラッチHMC160形を新たに開発しました。
 その主要目は表1に示します。
 定格許容最大トルクは、HMC16形と同じ163494N・m(3680kW・215min−1)、当社主機関では6LF54(3677kW・215min−1)、LH46LA(3309kW・220min−1)、LH46L(2942kW・200min−1)、5L35MC(3250kW・210min−1)形機関が適応範囲です。
 
3. 油圧クラッチ構成部品の特長
1)弾性継手の装備を必要としないために、入力軸及び出力軸の軸径をHMC16形より太くしました。
2)スリップ限界トルクは46208N・mでHMC16形より大きくしています。
 (定格許容最大トルクの2.8倍)
3)スラストの容量はHMC16形と同じです。
 (最大出力は3680kWでHMC16形と同じ)
4)弾性継手を必要としないため、摩擦板及びスチール板のセレーション部面圧計算は期間の変動トルクを考慮して定格許容最大トルクの2倍で行っています。
 面圧を下げるために板厚を厚くした結果、HMC16形より面圧計算値は若干下がっています。
 (HMC16形は、弾性継手を付属しているため定格許容最大トルクで計算しています。)
5)HMC16形と同様、ケーシングから入力軸への作動油給油部のシールは、当社製のCPP給油軸シールで十分実績のあるシールリング+Vリング方式としています。
6)ケーシングから入力軸への潤滑油給油は、HMC16形と異なり、機関で十分実績のある軸受メタルより軸に給油する方式を採用しています。(HMC16形はシーリング+Vリング方式)
7)摩擦板に使用の摩擦材はノンアスベストペーパーです。HMC16形などで以前使用していた、焼結銅合金に比べて摩擦係数が高く、スリップに対して有利です。
8)主機関が一方回転仕様の場合は作動油及び潤滑油ポンプを機付にできます。ポンプを機付にすることにより、船内の発電容量を削減できます。
 
形式名称 HMC 160
クラッチ 湿式多板油圧操作式
定格許容最大トルク 163,494N・m
本体 主要寸法 全長 1,840mm
全幅(据付部) 1,300mm
全高 1,915mm
乾燥質量 8,600kg
油溜容量 216l
付属 作動油ポンプ(機付) 5.3m2/h×2.5MPa
潤滑油ポンプ(機付) 13.4m2/h×0.5MPa
作動油ポンプ(別置) 3.2m2/h×2.5MPa×7.5kW
潤滑油ポンプ(別置) 10m2×0.5MPa×3.7kW
油冷却器 12m2
油こし ポンプ吸入側 金網式(32メッシュ)
潤滑油用 ノッチワイヤ式(150メッシュ)
作動油用 ノッチワイヤ式(150メッシュ)
1)機付ポンプの容量は入力軸回転数220min−1のとき
表1 主要目
 
4. さいごに
 油圧クラッチHMC16形の実績を基に開発した、HMC160形は十分な信頼性を発揮し、ユーザー各位の御期待にそえるものと思います。
 なお、一番機は当社主機関LH46LA−26機と共に、(株)新来島どっく殿建造の船に搭載され、据付艤装中です。
 
(拡大画面:32KB)
容量線図
 
HMC160断面図







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