中速エンジン「6N280S型」−2
4. 主要部分の構造
主な構造として横断面図を図1に、外形図を図2に示します。
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図1 6N280S形横断面図
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図2 6N280S形機関外形図
(1)シリンダブロック
シリンダブロックは、吊りメタル構造の鋳鉄製一体形で、熱効率の良い高い燃焼圧力の設定に対して効果的な箱形構造としていますので、十分な剛性を持っています。又、カム室の他に、給気室、冷却水通路、潤滑油通路を内蔵させ、外部配管を極力少なくしています。同時に、機関全体の剛性が高くなり振動・騒音が少ない構造となっています。(図3)
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図3 シリンダブロック
(2)クランク軸・主軸受
クランク軸は特殊鋼鍛造製で、ピン径・ジャーナル径共太くし焼入れ研磨を施していますので、燃焼圧力に対し十分な強度を持っています。
主軸受ハウジングは、2本の取付ボルトと2本の側面取付ボルトによってシリンダブロックに強固に固定されていますので、主軸受廻りの剛性はさらに高くなっています。主軸受の分解・組立は、専用の昇降用パンタグラフ式ジャッキを用いて容易に行えます。(図4)
図4 パンタグラフ式ジャッキ
(3)ピストン・連接棒
ピストンは、燃焼圧力と熱負荷に対し強度が高く冷却性能に優れたダクタイル鋳鉄製一体形ピストンを採用しています。膨張係数が小さいので、ピストンスカート部の隙間を小さくする事ができ、ピストンリングの油カキ効果と共に、潤滑油消費を適正な値にコントロールします。ピストンリングは、3本のコンプレッションリングと1本のオイルリングで構成されています。(図5)
連接棒は特殊鋼鍛造品で、大端部は斜め割構造とし、合わせ面はセレーション合わせとしています。斜め割セレーション構造に対する三次元FEM解析を行い、十分な強度と剛性を持つ最適な構造と形状を採用しています。ピストンピンメタルは、対面圧強度の良い裏金付薄肉メタルを採用しています。(図6)
図5 ピストン
図6 連接棒
(4)シリンダヘッド
シリンダヘッドは、給気・排気とも同一側に配置し、燃焼圧力と高出力化に伴う熱負荷の増大に対し、三次元の剛性解析と熱解析を行い、剛性が高く、しかも冷却性能の良い構造としています。シリンダヘッドの全高さ寸法を大きくし、肉厚とリブ形状の最適化を計り、シリンダヘッドパッキン部の面圧が均等になる構造としています。
弁腕室の上部は、フタ付とし点検が容易にできる構造としています。
シリンダヘッドボルトは、4本締めとし専用の油圧工具の採用により分解・組立作業の容易化を計っています。(図7)
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図7 シリンダヘッド
(5)シリンダライナ
シリンダライナは、耐摩耗性に優れた特殊鋳鉄製で、爆発圧力にも耐えると共にキャビテーションを防ぐ為に厚肉化を計り内面は保油性の高いプラトーホーニング仕上げを採用し潤滑油消費量の低減に優れています。上部嵌合部は、剛性の高い厚肉構造とし、カラー付ボアクーリング方式を採用していますので、燃焼室内壁の温度を適正にコントロールします。又、ジャケット部外周は旋回水流で均一に冷却する構造としています。(図8)
図8 シリンダライナ
(6)燃料噴射ポンプ・燃料噴射弁
燃料噴射ポンプは、機関の低燃費化に対し重要な役割を持っています。燃焼効率を向上させるためには、燃料噴射期間を短縮して一気に燃焼させる必要が有ります。燃料噴射ポンプは、余裕のある高圧形燃料噴射ポンプを採用しており、最高噴射圧力は150MPaとしています。150MPaの高圧に対して変形を少なくする為プランジャーバレルは頂部クローズドタイプで、ハンガータイプの固定方式を採用しています。又、デリベリバルブには等圧弁を組込み、噴射系内のキャビテーションを防止しています。
燃料噴射弁は、運動部分のマスを極力小さくしてローイナーシャ形で針弁の応答性が良く、噴射特性を向上させています。
燃料高圧管は、内面を切削加工して特殊成形した合金鋼で、締結部はコーンタイプにしてシール性を向上させています。燃料高圧管の長さを最短距離とする為、シリンダヘッドの横穴で燃料噴射弁本体と連結する構造としています。(図9)
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図9 燃料噴射ポンプ・燃料噴射弁
5. 性能曲線
図10に6N280S−EN形の性能曲線を示します。燃料消費率・排気温度等良好な結果を示しています。
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図10 性能曲線
6. おわりに
平成11年8月に初号機を出荷以来、既に数台の実績を重ね、市場において信頼性の高い機関として好評を得ております。今後ともお使いになる方々のアドバイスを頂き、より一層のご愛顧を頂ける機関としたいと考えております。
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