日本財団 図書館


7)中速エンジン「6N280S型」
ヤンマーディーゼル株式会社
 
1. はじめに
 平成9年8月1日より漁船法施行規則の1部が改正され、既に運用されています。さらには、平成14年4月より新漁船法の適用に向けて準備が進められています。
 現行法及び、新漁船法に対応すべく、旋網探索船及びカツオ1本釣り漁船用主機関として市場に投入した、6N280S形機関が既に8000時間を超える稼働実績を上げ、市場で好評を得ていますので、機関の構造・特徴等について紹介します。
 
2. 開発の基本方針
 平成元年より市場に投入して好評をいただき、又、十分実績のある6N280形機関をベースにショートストローク化を計り、デザインコンセプトは踏襲した機関としています。すなわち、下記の項目を基本方針として商品化しました。
(1)剛性が高く低振動・低騒音で信頼性が高い
 最高筒内圧力の増加に対し、各構成部品の強度・剛性を高め、十分な耐久性・信頼性を確保しています。シリンダブロック・オイルパン・弁腕室等は、振動モード解析を行い、適正リブ配置で軽量化を計りながら剛性を高めていますので、振動の少ない静かな運転が可能です。
(2)熱負荷が低く長時間無開放運転が可能
 熱負荷的に厳しい燃焼室廻りは、シリンダヘッドには3次元の剛性解析と熱解析を実施し、剛性を高めると共に、弁間部を特殊きり穴で効果的に冷却し、熱負荷と機械的負荷に対し、十分な耐久性を持たせています。シリンダライナにはボアクーリング方式を採用し、トップリング位置でのライナ温度を低減して潤滑油消費の適正化・ピストンリング寿命の向上を計っています。
(3)取り扱い、分解・組立が容易
 給気室・冷却水主管・潤滑油通路をシリンダブロックに内蔵し、外部配管を減らすと共に、日常点検を要する機器を集中配置し、保守・点検作業を省力化しています。シリンダヘッドボルトと主軸受ボルトは、同一サイズのボルトを使用し、専用の分解・組立用油圧工具を採用していますので、分解・組立作業が容易です。
(4)環境に優しい機関の開発
・低燃費
 機関の最高筒内圧力を高く設定すると共に、高圧形燃料噴射ポンプ、特殊カムプロフィルと噴射系・給排気系を最適マッチングさせる事によって、従来機関に比べ低燃費化を達成しました。
・クリーンな排気
 長年にわたって重点的に続けてきた燃焼効率向上研究の成果を生かし、燃焼性能を大幅に向上させています。
 排気色も良好で、排気有害成分の少ない機関としています。
 NOxの低減に対しても、燃焼室形状をはじめ、噴射系・燃焼系の最適化により、燃焼性能の向上を計りつつNOxを低減させており、IMO規制に対しても十分クリアできるレベルとしています。
 
3. 主要目
 6N280S形機関の主要目を表1に示します。
 
表1 6N280S−EN形 主機関要目
    6N280S−EN
シリンダ数   6
ボア×ストローク mm 280×370
総行程容積 l 136.7
漁船法馬力   600
連続定格出力/回転数 kW{PS}/min−1 1,839{2,500}/720
正味平均有効圧力 MPa{kgf/cm2 2.242{22.86}
平均ピストン速度 m/s 8.88
PV値 MPa・m/s {kgf/cm2・m/s} 19.91 {203.0}
減速逆転機   YX−2,400
質量 機関 kg 19,000
  減速逆転機 7,300







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION