3)ダイハツディーゼル新型5/6DC−17機関
ダイハツディーゼル株式会社
1. まえがき
舶用機関において低燃料消費、低潤滑消費に加えメンテナンス作業者の人手不足、熟練技術者の不足からメンテナンスフリーを目標とする高信頼性、高耐久性が求められています。
これらは、運航コスト削減のためには非常に重要なアイテムです。
更に、IMO(国際海事機構)のNOx規制も強化されることが考えられ、大気汚染等々に対する環境問題についての要求がますます厳しくなっております。
このような多様化する市場の要求に答えられるよう、21世紀にふさわしい中速小型ディーゼル機関を開発したのでここに紹介します。
2. 開発コンセプト
開発のコンセプトは、2000台以上の出荷実績のあるDKシリーズの5つのコンセプトに更なる顧客満足度を得るためのアイテムを追加しました。
(1)High Reliability & Durability
(2)Low Maintenance Cost
(3)Environmental Protection & Harmony
(4)Compactness
(5)High Efficiency & Performance
(6)User Friendly
3. 機関の主要目および概要
5DC−17、6DC−17の機関主要目を表1、機関外形図を図1、機関外観写真を図2、機関断面図を図3に示す。
DC−17主要目
シリンダ数 |
5 |
6 |
シリンダ径×行程 (mm) |
φ170×270 |
ストローク/ボア比 |
1,588 |
機関回転速度 (min−1) |
900 |
1,000 |
900 |
1,000 |
平均ピストン速度 (m/s) |
8.1 |
9.0 |
8.1 |
9.0 |
発電機出力 (kWe) |
440 |
560 |
正味平均有効圧力 (Mpa) |
2.09 |
2.21 |
最高爆発圧力 (Mpa) |
16 |
燃料油 |
up to 700mm2/s@50℃(CIMAC H55) |
機関単体質量(乾燥) (kg) |
5,600 |
6,250 |
発電機セット質量(乾燥) (kg) |
9,930 |
11,000 |
空気冷却器 |
2段冷却(低負荷時:給気加熱) |
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表1 機関主要目表
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図1 6DC−17機関外形図
図2 5DC−17機関
図3 機関断面図
4. 機関の特徴と利点
4−1 据え付け、点検が容易でシンプルな構造
パイプレス構造で外部取り合い配管を少なくし、補機類を機関の前側に集中配置した。
(1)取り合い配管の削減
冷却水、燃料、ドレン等の配管システムの見直しにより外部配管との接続箇所を大幅に削減している。
(2)パイプレスの多機能構造で部品点数削減
冷却水、潤滑油の通路は機関内部に内臓したこと及び、低質油燃焼に於いても無冷却燃料ノズルを採用することで、部品点数は既存機関と比較して50%削減している。
(3)点検が容易な構造
吸排気系を同方向に配列することで燃料ポンプサイドの点検、分解組立を容易にすると共に、補機類を一カ所に集中配置しているため近接性が良く、保守点検が容易である。
4−2 信頼性、耐久性が高く、運用費用の低減
(1)小型機関にもかかわらず熱効率は45%近くを達成しており、燃料消費率、CO2の削減に寄与している。
(2)プロテクトリング採用による低潤滑油消費量とシリンダライナの寿命延長が可能となった。
(3)分解、組立の作業性の向上によりメンテナンスコストの低減
DSP過給方式による排気管の単純化、部品点数が少ないシンプルなパイプレス多機能構造、無冷却燃料ノズルの採用の他、特殊油圧工具を含む適正な分解工具の採用で分解、組立作業性を改善した。
(4)主要部品、交換部品は既存機関主要部品の重量40〜50%軽減している。
4−3 小径ボア機関での良好な低質油燃焼達成
小径ボアでの低質油、低負荷燃焼技術
(1)エンジン緒元(ボア、ストローク、圧縮比、圧力比、吸排気弁径、タイミング、噴射系等)の適正化
(2)適正なスワール燃焼
(3)ストローク/ボア比の増大
(4)高圧縮比ピストンの採用
(5)適正な燃焼最高圧力、燃料噴射圧
(6)機械損失、ガス流れ損失減少
(7)清水一系統で吸気加熱2段インタークーラの採用
4−4 環境保全と調和
(1)IMOのNOx規制を充分満足するNOx排出量
(2)将来、厳しく規制されるNOx値に対応できよう噴射タイミングと燃料噴射パターンが任意に変更できる電子制御式燃料噴射装置が搭載可能。
(3)低燃料消費による低CO2
(4)低振動、低騒音
(5)防火対策の充実
4−5 舶用IT化に対応
舶用業界のITの代表である造船ウェブ、eコマースに対応できる様なソフト、ハードを完備しており、特に、機関3Dデータは造船CADのTRIBONデータで供給できる。
4−6 冷却水1系統システム
冷却水系統は清水(FW)1系統とすることで、機関の取り合い配管が入口と出口の2カ所とすることが出来、船体艤装配管及び、機関の据え付けが大幅に合理化される。
クーラ系統を清水冷却することにより、低質油低負荷時高温冷却水で吸気加熱をする2段インタークーラの採用が可能で、低負荷時の燃焼改善が図られる。
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図4 冷却水系統
4−7 電子モニタ&安全、制御装置
(1)機関単体で運転制御が可能
(2)液晶表示方式で多くの項目が監視可能であり、高度な機関管理ができる。
(3)配線レールユニットの採用によりセンサー、各種ケーブルの交換等のメンテナンスが容易である。
(4)外部配線は通信を行うため大幅な省配線化が可能。
(5)外部接続ユニットから遠隔監視が可能となる。
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図5 電子モニタリング&安全・制御システム
5. あとがき
5DC−17、6DC−17機関は、DK機関の高信頼性、高耐久性を踏襲し、多様な市場要求を考慮して当社技術の粋を集め開発しました。
21世紀にふさわしい機関であると自負しており、ユーザの皆様に満足して頂けるものと確信しています。
今後は、市場での評価、要求に対してきめ細かい対応をスピードアップで行い、顧客満足度の高い機関に育て上げる所存です。
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図6 モニター&操作パネル
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