2)高速主機関16V20FX型機関
株式会社 新潟鐵工所
1. はじめに
この度、当社はニイガタ高速機関「FXシリーズ」としてV20FX型機関を開発・完成し、高速船主機関用に6台受注致しました。
ニイガタ高速機関「FXシリーズ」は、世界的に高速化が進む船舶の需要に対応し、V16FX型機関をかわきりに開発しました。V16FXは、1993年以来、高速旅客船、巡視船等に60台以上を納入し、ご愛用戴いております。
V20FX型機関は、V16FX型機関のワンランク上のレンジをカバーするものとして、その実績、経験と最新の設計技術を取入れ、開発しました。以下にV20FX型機関の概要をご紹介致します。
2. 開発経緯
国内においても船舶の高速化の需要が増加する中、当社は仏S.E.M.T.Pielstick社との技術提携によるPA4V型機関の販売により、高速船の市場に参入し、その後、V16FX型機関の開発により、確固たる地位を築いてきました。
しかし、高速船の市場は外国メーカのシェアが高く、特に、4000kWクラスは外国メーカの独占状態であり、国内の造船所等においては、このクラスの国産機関を要求する声がありました。
また、PA4V型機関は開発後既に30年以上経過しており、シリンダ径φ200クラスの代替機関が必要となりました。
V20FX型機関はこれらの市場動向を分析し、4000kWクラスに照準を定め、V16FX型機関をベースに基本設計を行い開発したものです。1996年に試験運転を開始し、以後数々の改良を重ね、信頼性のある機関に仕上げてまいりました。
V20FX型機関の主要目を〔表−1〕に、機関横断面図を〔図−1〕に示します。
〔表−1〕主要目
型式 |
12V20FX |
16V20FX |
シリンダ数 |
12 |
16 |
シリンダ径 |
mm |
205 |
ストローク |
mm |
220 |
連続定格出力 |
kW |
3000 |
4000 |
正味平均有効圧力 |
MPa |
2.50 |
定格回転数 |
min−1 |
1650 |
ピストン速度 |
m/s |
12.1 |
出力率 |
MPa・m/S |
30.3 |
最高燃焼圧力 |
MPa |
18 |
燃料消費率 |
g/kWh |
211(5%の裕度付) |
質量 |
kg |
9600 |
12600 |
出力比質量 |
kg/kW |
3.20 |
3.15 |
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〔図−1〕機関断面図
3. 特徴
(1)高出力・高性能
ピストン速度をV16FX型機関同様12m/sに設定し、4000kW超の高出力を得て、出力率は、30.3MPa・m/sと30を超える世界最高レベルを達成しました。
V16FX型機関に比べ、出力率で約30%の向上となりました。
〔図−2〕各型機関出力率(Pme×Cm)
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(2)小型・軽量
V角度を60°とすることで全幅を抑え、全長も、過給機、機付補機類の配置を極力詰めることで最小とし、機関全体を小型化しています。
また、強靱な材料を用い剛性を確保する適切な構造による薄肉化を行い、軽合金の部品を広範囲に使用したことより軽量化を達成しています。
その結果、上記の高出力と合わせ、出力比質量で3.15kg/kWの世界最高レベルの軽量化を実現しています。
(3)高信頼性
高速旅客船等には定時制の確保、巡視船等には緊急時の耐久性が要求されます。そのため、機関には高い信頼性が必要です。V20FX型機関は下記により信頼性の向上を図っています。
・クランク軸バランスウェイトの大型化によって回転不平衡重量を低減し、防振支持システムと併せた振動低減を実施しています。
・ファイヤリング装着によりシリンダライナの摩耗を防ぎ、潤滑油消費量を抑えています。
・組立形ピストンを採用しました。ピストンクラウンの高強度化及び、ジェット冷却と併用したピストン燃焼面裏側冷却の向上を図り、高出力による機械的応力と熱応力の上昇に対応しています。
・連接棒は水平割連接棒を採用し、大端部の変形を少なくし、セレーション部のすべりを防ぎ、全面加工後のショットピーニング施工により疲労強度向上を図っています。
・主軸受・クランクピン軸受に溝付き軸受を使用することによって耐荷重性と耐摩耗性を向上し、軸受の性能計算により適切な油膜厚さを保持しています。
(4)高経済性・低公害性
・高効率過給機の採用と燃料噴射ポンプにおける高圧短期噴射によって低燃料消費率を実現しています。
・NOxは国際海事機関(IMO)の基準をクリアしています。
(5)簡素な構造
シリンダブロックに吸気室を一体化し、外部配管を極力削減すること及び当社独自の静圧排気方式による給排気システムの簡略化を図り、簡素な構造としています。
(6)取扱い・メンテナンス
排気管類をVバンク中央に配置してシリンダヘッド、燃料噴射ポンプ廻りのメンテナンスを容易化しています。
また、シリンダブロック各スローに点検窓を設置して内部点検の容易化を図り、高速船特有の狭い船内において、ピストン抜出し、主軸受の分解・点検等船内整備を可能としています。
4. おわりに
陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトが提唱されている中、20FXは中距離高速カーフェリー用の主機関や、国家的プロジェクトであるテクノスーパーライナー(TSL)の浮上用機関、防衛庁殿の艦艇用主機関、海上保安庁殿の巡視船等と、今後も高速船の分野での活躍が期待されます。
原動機カンパニーの主力商品の一つとして、同時にニイガタ高速機関「FXシリーズ」の主力として育てるため、これからも一層の努力をしてゆく所存ですので、今後とも、皆様方のご支援を宜しく御願い致します。
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