本村では、村内事業者、加工グループ、農林業者などが中心となって、味噌、漬物、蜂蜜、菓子、豆腐などの加工食品が100品目程度生産されている。一部の村内事業所では、独自の販売網や生産体制によって、高い品質の商品を生産し、固定客の確保、大手百貨店の出店など、村外での販売において大きな成果をあげている。

　しかし、加工グループ、農林業者が生産する味噌、漬物などの加工食品は、平家本陣などで販売されているものの、大きな販売実績を有しているものは少ない。

　

　平家本陣などの村内で販売されている既存商品（加工食品、土産品）は、現状では、残念ながら特産品化できる優れた商品性を有するものが少ないが、素材や生産者の良さから、品質、商品属性の徹底した改善によって、蜂蜜、稗・粟などの雑穀類など、特産品化の可能性を有した商品がみられる。

　

　村民のモノづくりを通じたやる気、自信の創出を図り、村全体の内発力を強化するためには、既存の加工グループや農林業者に対して支援を行い、村民でもやればできるという自信・機運を醸成することが重要である。

　ただし、加工グループや農林業者の活動については、生きがい・社会参加を重視しているところも多く、現在の活動に対して満足している生産者も多い。このため、既存の加工グループ、農林業者が生産している商品のすべてについて徹底的な改善を図るのではなく、特産品化の可能性のある商品づくりを行っている生産者のうち、特産品化の意欲や連携体制が確保できる生産者を選択し、特産品化に向けた取組を図る。

　

　大都市などの消費者ニーズは、性能・効能・安全性といった品質面のみならず、名称、生産者のプロフィール、仕様（包装等）などの商品属性全般にまで及んでいる。このため、品質面で良い商品が必ずしも販売力を有しているわけではなく、商品全体の総合的な魅力が確保された商品が「良い商品」として一定の販売力を有している。

　こうした商品の総合的な魅力づくりには、加工グループ、農林業者などの村内の生産者では、そのすべてに対応することは困難である。また、村内の人材にこうした助言を求めることにも限界がある。そこで、消費者ニーズなどの市場動向に詳しい商品づくりのアドバイザーを確保し、既存の商品について徹底的な検証を依頼する。アドバイザーとしては、大都市圏の消費者代表、宮崎県物産振興センター、大手百貨店バイヤー、専門誌・全国紙などのジャーナリストなどを想定し、アドバイザーの来村又はアドバイザーヘの商品持ち込みによって、加工食品の品質・属性の改善点についての助言などを得る。

　

　アドバイザーなどの助言に基づき、消費者ニーズに対応した加工食品の徹底的な改善を図る。改善に必要となる人・資金などの条件のうち生産者の対応が困難なものについては、行政、関係団体などが支援を行う。商品性が向上した加工食品などについては、流通先として、平家本陣などの村内の物産施設に加え、都市圏の生協、スーパー、ふるさと物産館（KONNE、むらからまちから館）などを想定し、既存加工食品のうち1品目の特産品化を目標とする。

　

　

　国内で流通している蜂蜜の多くが、洋蜂を利用した近代的な生産方法をとっているのに対して、椎葉産蜂蜜は和蜂を利用した伝統的な在来生産方法によって産出されており、極めて希少性が高い商品となっている。また、輸入品については添加物などが加えられているのに対して、椎葉産蜂蜜は無添加商品であり、風味や安全性については大きな信頼性を確保できる資質を有している。

　しかし、平家本陣で販売されている椎葉産蜂蜜は、一升瓶などの大容量で販売され、価格も数万円に達し、売れ行きは芳しくない。

　

　

　一方、都市圏で販売されている蜂蜜は、中国産の値ごろな商品がある一方で、大手百貨店、専門店で販売される高級蜂蜜などがあり、グラム当たり単価も1〜10円と商品の多様性がみられる。現在、スーパーなどで販売されている既存商品は、パッケージなどの商品属性では必ずしも優れたものが少ないが、高級蜂蜜店で販売されている商品については、品質に加え、名称、仕様などが洗練され、消費者の生活イメージを豊かにする高い商品性を有している。