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(2)体験プログラムの提案
 さらに、これらの中から、すぐに取り組めそうなもの、即効性のあるもの、本村にしかないものを基準として、具体的な体験プログラム(案)を6つ提示する。
 これらを、すぐに実施できそうなものから順に(1)〜(6)に並べ、各プログラムにおいて活用する資源と実施する際の条件について、下表に整理した。
 
図表5−41 各体験プログラム案の活用資源と実施段階
実施段階 No プログラム名 活用資源とプログラム実施の条件
試験的にすぐに実施できる (1) 椎葉山の郷土料理教室 都市住民の関心度の高い「食」がテーマであり、椎葉村の主婦を講師とすることで、特別な訓練などの必要がなく、すぐに実施できる。
(2) のんびり歩こう十根川集落 もともと見どころの集積している十根川集落とその周辺を散策するプログラムで、散策コースの設定や散策マップの作成等により、すぐに実施できる。
人材面、プログラム内容の充実により実施できる (3) 村民と巡る椎葉村 参加者は村民ガイドと楽しくコミュニケーションをとりながら、椎葉の自然や生活文化などに触れられ、椎葉らしさを大いに体感できるが、実際のプログラム実施には、ガイドの人材面やシステム面での準備が必要である。
(4) 山の達人になろう! 自然体験や生活体験などの各種体験を活用するが、子どもが対象のため、大人とは違ったプログラム内容、指導方法、安全面での配慮が必要となってくる。
体制面、人材面、施設面等でかなりの準備が必要 (5) 焼畑で雑穀づくり 現代では椎葉特有になった「焼畑」の活用で、自然食志向者など全国からの関心を集めることができそうだが、地元の理解やプログラムとしての体制づくりに、時間がかかりそうである。
(6) シェフとクッキング (1)と同様「食」関連で、椎葉の旬の素材と一流のシェフという一見異質な組み合わせに関心は集まるが、本格的な料理に対応した施設整備や、・当プログラムの意義を理解できるシェフの発掘など、費用面で課題がある。
 
 これらの各プログラムの具体的な内容(活用する資源、参加対象、プログラムのポイント、プログラムの内容、プログラムの発展性・継続性、プログラム実施への課題、必要な人材、各種事項)については、次頁以降に上記番号順に整理する。
 
→「体験プログラム案」(1)〜(6)
 
体験プログラム案(1)椎葉山の郷土料理教室(四季の山グルメシリーズ)
活用する地域資源 ・料理の好きな村民、主婦
・旬の山菜を中心とした地場の食材
参加対象 ・日本の郷土料理に関心のある人、スローフードに関心のある人
・自然食、健康食などに興味のある人
プログラムのポイント ・旬の椎葉の食材を使って、村内のお宅で、椎葉の郷土料理をつくり、試食することで、椎葉の食文化を総合的に体験する。
・旬で地場の食材に触れ、健康的な食生活への関心が高まる。
プログラムの内容 ・インストラクターの自宅を料理教室会場とし、自宅に収まる程度の少人数クラスとする。
・メニューは、椎葉の郷土料理やインストラクターのオリジナル料理とする。
・山菜などの食材を採りに、村民(郷土料理インストラクター)と山に出かけ、下ごしらえ、調理、食事、後かたづけまで、参加者とインストラクターが共同作業で行う。
・食材や料理にまつわる話(言い伝えなど)や、用具の使い方など、インストラクターはワンポイントアドバイスを加えながら、楽しい料理教室を目指す。
・手作りレシピをおみやげとしてプレゼントする。当日のレシピの他に、同じ素材を使った応用レシピ、身近な食材(スーパーで手に入る)で簡単につくれる椎葉料理、その他の旬のレシピなどがあるとおもしろい。
・季節毎に開催する。
・番外編として、「山男のつくる椎葉郷土料理教室」(男性限定)なども考えられる。
プログラムの発展性、継続性 レシピ本は、季節やインストラクターによって様々なので、また別のレシピ集ほしさのリピーターが期待できる。
・参加者には、食を中心とした椎葉の特産品情報(通信販売など)を提供する。
プログラム実施への課題 ・インストラクターは会場として自宅を開放できるか。
・インストラクター同士で「料理研究会」を開き、今は作らなくなった郷土料理の再現や新メニューの考案など、椎葉の郷土料理のプロとしてレベルアップしていく必要がある。
必要な人材 ・料理が好きで、郷土料理を大切にする村民 各種準備事項 ・食材を生み出す山や畑(インストラクターが所有してない場合)
・食材を提供できる村民(山や畑) ・レシピ集作成
 
体験プログラム案(2) のんびり歩こう十根川集落
活用する地域資源 ・十根川集落、十根川神社などの歴史的建造物
・集落周辺の自然環境(大久保のヒノキも含む)
・大神館
参加対象 ・自然やのんびりとした風情を求めて椎葉にやってきた人
・山村集落を散歩したい人
・伝統的な山村の家屋に関心のある人
プログラムのポイント ・手作りマップを片手に、自由にきままに過ごす。
プログラムの内容 ・十根川集落とその周辺の魅力を満載した手作り(感覚)のマップを作成する。作成には、地元住民が直接関わる。できるだけ、住民の顔が見えるような、あたたかな雰囲気が伝わるような内容が望ましい。
・平家本陣、鶴富屋敷、民俗芸能博物館、宿泊施設等に作成したマップを設置する。また、マップと同様、十根川集落とその周辺の見どころやオススメ場所などをホームページにも掲載し、「十根川集落に行ってみよう」と思わせるための宣伝を行う。
・基本的には個人の自由な散策で、散策中に出会う住民は全員旅人のガイドとなる。道案内などには気軽に応じる。
・十根川集落における観光の拠点として、大神館がその役割を担う。案内係としての人材が常駐する。 総合案内所、無料休憩所、トイレ、食事処、茶処
・観光的な基盤整備は最小限にとどめる。 最低限必要なサインの設置 (道の分岐、地域資源の案内や説明)
・素朴で美しい風景が損なわれないように、住民は景観の保全や修景、日常的な清掃、美化活動を行う。
プログラムの発展性、継続性 ・地域住民による散策ガイドサービスを導入する。最初はイベントなどで、試験的にガイドを行い、慣れてきたら土日を中心に徐々に常駐化を図る。(「村民と巡る椎葉村」参照)
プログラム実施への課題 ・住民側のもてなし意識の醸成
必要な人材 ・大神館に常駐する案内係の確保 各種準備事項 ・散策マップの作成
・地域散策ガイド ・サイン設置
 
体験プログラム案(3)村民と巡る椎葉村(オーダーメイドの自然探索)
活用する地域資源 ・椎葉全域(自然、風景など)
・村民
参加対象 ・「秘境」に惹かれる人、自然の中を探検してみたい人
・通常の観光客が行かないところに行ってみたいが、一人では不安な人
・自然の中でのんびりすごせる場所が知りたい人
プログラムのポイント ・本来の椎葉の自然や風景に触れることができり、オーダーメイドに近い旅が可能。(観光パンフレットにのっていない、観光地化、近代化されていない所)
・村民ガイドが同行し、安心感、椎葉の自然や生活に関する知識が得られる。
プログラムの内容 ・あらかじめ拠点施設(平家本陣など)やホームページ、パンフレット等に、「椎葉村民のオススメスポット」(写真付き)と、ガイドのプロフィールを掲載する。
・運営体(観光・交流の推進組織など)が連絡窓口となって、予約受付、ガイドとの取り次ぎを行う。
・行ってみたいところ、どのように過ごしたいかなど、希望をガイドに伝え、ガイドコースと料金を確定する。
(事前打ち合わせor当日打ち合わせ)
・スタート後は、設定したガイドコースを基本に巡り、来村者とガイドのコミュニケーションで、随時設定変更などする。
・一律の時給を設定し、来村者には所要時間相当の料金を支払ってもらう。時間が長い場合は、多少割引があると来村者への印象がよい。
例)1時間:1,000円→5時間:4,500円
・送迎代、昼食代等その他でかかる費用は、来村者に実費で支払ってもらう。
プログラムの発展性、継続性 ・参加者には、その人の趣向にあった情報提供を継続する。できれば、ガイド本人による内容がよい。
・オーダーメイドなので、また違った過ごし方をするために再来村することが予想される。同じガイドが指名され、親しい付き合いが生まれる可能性もある。
プログラム実施への課題 ・来村者とガイドの取り次ぎ及び事務的作業を行う運営体の設立
・ガイドとしての村民の育成
必要な人材 ・村民ガイド 各種準備事項 ・「椎葉村民オススメスポット」の作成
・事務スタッフ ・保険加入







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