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(2)椎葉観光の基本方針
ア 住民主体による受け入れ体制の充実(人づくり、仕組みづくり)
 基本的には、地域の体力に見合った無理のない運営体制のもとで、最低限必要な施設・設備などの整備を進めながら、本村の将来像に合わせた雰囲気づくりを推進していく。
 椎葉ファン予備軍の開拓に向けては、次のような想定のもとで、情報発信内容・方法の検討を進めていく。
 
(1)サポーター
 具体的な活性化方策の展開に際し、専門的な立場から助言や提案を得るとともに、事業のパートナーとして、ギブアンドテイクの関係のもとで連携した活動を行っていく。例えば、観光では、地元の食材を活かした食の提供を福岡の有名レストランのシェフをサポーターとして招聘し、村内のレストランや宿泊施設と連携した活動を進めていく。また、物産でも、新たな商品開発や販売促進のアイデアを持つ外部専門家を招聘し、事業パートナーとしての連携を行っていくなどが考えられる。
 
(2)リピーター
 観光で本村に度々訪れたり、本村の物産品を定期的に購入したりしている、本村のリピーター客については、会員制の導入などによって、新たなイベントや事業の情報をいち早く伝えるとともに、モニターなどのかたちで様々な情報等をフィードバックしてもらう。 また、本村の魅力を口コミ等によってPRしてもらう、広報としての役割も期待する。
 
(3)椎葉ファン
 椎葉出身者や来村経験者を中心に例えば椎葉通信などのニューズレターをメイルなどで配信し、その人たちへの情報提供とともに、口コミによる情報伝達を図っていく。
 村内では、新たな人材の発掘、育成を進め、観光や物産を柱とした活性化に向けても、そこにかかわる村民の、一人一人の顔がみえるような仕組や活動、サービスや情報提供がなされていく必要がある。
 例えば地域内部の先導的なムーブメントとして、椎葉村民の人材データベースを作りながら、“造る人”、“案内する人”、“もてなしの人”などの分野ごとに各100人の達人の登録を目標とし、各分野ごとの活動を拡充したり、村全体での横断的な提案、連携を委員会などのかたちで吸い上げていく。
 また、そこに広報・宣伝など効果的な行政の支援を入れ住民活動をサポートしていく。
 
イ 新しい観光の育成
 これまでの祭りや神楽などに代表される本村の観光から、山村地域の環境や生活に根ざした本村の潜在的な地域資源を活かした体験型観光を立ち上げ、新たな柱として育成していく。
 そのため、地域資源の発見に加え、紹介や案内などを担う人の資源化を進めながら、モデル体験メニューの実施などから導入を図っていく。具体的な体験として以下のメニューが考えられる。
 
* 山村生活体験:郷土料理、農作業、集落散策等
* 自然体験:ハイキング、野生生物に出会うツアー、九州で雪山体験等
* 林業体験、ワーキングホリデー(西米良村との連携)
* 夏休み自然体験ステイ
* 農家民宿
  
 
 立ち上げ段階の対象マーケットとして、九州地域の小・中学校の課外活動や総合学習の場としての利用を中心に具体化していく。そのため、活動プログラムや受け入れ体制の充実を図っていく。
 
ウ 観光基盤の整備、改善
 地域間で互いに協力・補完しあうことにより、イメージアップや無駄や不足のない体制が可能である。このため、村外の広域的な連携が見込める「ひむか神話街道」の整備等において、広域的な地域間連携による環境基盤の整備・改善を図り、特徴ある地域形成を目指していく。
 
図表5−39 環境基盤の整備・改善の内容
区分 内容
広域流動軸 ○熊本、阿蘇、高千穂方面からのアクセス
国道265号+国道57、325、218号
○宮崎、西都、西米良、南郷方面からのアクセス
国道265、265BP号、国道219号
○日向、諸塚方面からのアクセス国道327号
○人吉、水上方面からのアクセス
国道265号+388、219号
○その他
椎矢峠越えルートなどの整備
沿道の観光基盤施設整備 ○駐車施設の整備
○ゲート、サインの整備
○情報基盤の整備
○情報提供拠点
○トイレ、休憩施設などの整備
観光拠点の整備 ○上椎葉地区
○十根川地区
○尾前地区
○矢立・大河内地区
 
エ 立ち寄り型観光の拡充
 これまで週末などを中心に、近在からの利用が多かった立ち寄り型観光を見直し、幹線道路の整備による効果をいかしながら、その利用の質的、量的な拡大を図っていく。
 幹線道路沿いの駐車・休憩場所の確保や、ゲートエリアや分岐点でのサインの整備など必要な基盤施設の整備、充実を図る。特に、トンネル開通による新しいルートを使ってアクセスする立ち寄り客への対応整備に重点を置く。
 平家本陣の情報拠点化、道の駅的拡充可能性を検討し、総合的な情報発信拠点としての再整備と運営体制の強化を図っていく。
 通過型から立ち寄り型に移行するため、4つの拠点地区を中心とした散策マップの作成、配布を行っていくとともに、各拠点の散策ルートの整備、及び地区の景観や新たな活動メニューなどの魅力づくりを進め、滞留時間の拡大を実現していく。
 特に、十根川地区の充実(3〜4時間の滞在に対応)をモデル的に推進し、重伝建集落と巨木を巡る散策コースや、サービス拠点としての「大神館」の活用とあわせ、全体的な雰囲気づくりを行うとともに、玄関口となる「平家本陣」でのインフォメーション機能との連携を強化する。
 
オ 広域流動観光の受けとめ
 本村を中心とした広域観光流動の構造をみると、阿蘇地域を中心に年間100万人単位での流動があり、これらの一部を受け入れる条件を整備することにより、通年型観光への移行やグループ、団体観光の定着を一定程度、実現する。
 そのため、県が進める「ひむか神話街道」のストーリー展開の中で、「椎葉」をアピールし、例えば、モニターツアーの企画・実施や旅行誌(「るるぶ」等)への特集掲載などによる誘致を働きかけていく。
 特に、宿泊需要を受け止めるためには、ニーズに対応した現状の宿泊施設のサービスや施設の見直しや改善、さらには宿泊情報の積極的な提供なども行っていく必要がある。
 
カ 新たな「事(ムーブメント)づくり」と情報の交流
 「ひむか神話街道」による広域イメージの展開とあわせ、例えば源流の里“椎葉村”イメージの発信による単独イメージ戦略の構築に向け、本村の湧水を提供するサービスを具体化し、椎葉ファン倶楽部の会員の特典などと関連づけた展開を具体化する。
 さらには、本村の特色を出していくため、観光と物産の接点である「食」の魅力づくりを重視し、地元食材を使った料理会の開催による福岡の有名シェフ、料理人との連携なども具体化していく。
 情報の受発信による交流拡大のツールとして、インターネット上で地域のポータルサイトを運営し、個別情報の提供を拡充するとともに、椎葉村掲示板の運営などにより口コミ情報を含む相互的な情報交流の輪を拡げていく。さらには、村内での移動や活動を支援しうる携帯電話への位置情報や地域情報の提供も検討を進める。







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