4 椎葉村における観光・交流を活用した地域振興の基本方針
これまで整理してきた内容を総合的に検討し、本村における観光・交流の目標、考え方、基本方針などについて提案する。
(1)観光振興を活用した地域振興の目標と基本方針
ア 基本目標:観光振興による地域の活性化
本村が観光・交流の振興による地域活性化で究極的に目指すものは、「村民が活き活きと暮らせる村」である。それは、村民が日常生活を楽しみながら、仕事や地域社会での役割を担い、また、村の方向性である「かて〜りの里」にもあるように、助け合いながら安心して暮らせる地域社会を意味する。
また、村民がこれまで受け継いできた、自然との共生、歴史・民俗文化などは、村民の生活と密接な関わりを持っていることから、椎葉固有の風土や文化として保持していくことも重要である。
このような活き活きとした暮らしの中には、都市で触れることのできないおもしろさや癒しが含まれており、結果として、観光・交流の資源として活用することができる。また、このような活性化に向けた活動を通して形成される「椎葉ファン」は、椎葉の応援団となり、さらに村民と一緒になって盛り上げていく。
このように、椎葉・都市間における観光と交流の相互的な拡充を図っていくことを基本目標とする。
図表5−34 地域活性化と観光・交流の関係
(拡大画面:126KB) |
|
イ 短期的目標:観光入り込みと宿泊客の増加
本村の魅力を都市住民に知ってもらうためには、まず、椎葉情報を都市住民に向けて発信しなければならない。そして、来てくれた人に満足してもらうための食堂、土産物店、トイレ、休憩所などの基本的な施設の整備や、村の美化、景観への配慮なども必要となってくる。(I)
これらは、近隣の観光地も一緒に巡る周遊観光客や、トンネルの開通などにより増加が見込まれるドライブ客などによる「立ち寄り観光」へ対応しており、椎葉独自の観光・交流スタイルを確立するまでの当面の稼ぎ頭として、早急に整備していく必要があるだろう。
→マスツーリズムヘの対応
名所旧跡巡りや特定の観光施設への訪問などを主に目的とした、従来型の観光のタイプ。主要観光施設と土産物店のみに立ち寄る観光客が多く、団体客も多い。(図表5−36参照)
|
|
|
ウ 長期的目標:体験型観光の導入による椎葉型観光の実現
こうした基本的条件のもと、交流イベントなどを実施することにより、訪れた都市住民は椎葉の良さを肌で実感することになり、さらに椎葉への興味もわいてくる。また、村民にとっても都市住民との交流によって、普段とは違った刺激を受けることができる。(II)
都市住民との交流促進にむけ、もっと椎葉の良いところを知ってもらうためには、地域の魅力を発掘し、どう活かせるか、誰が何をできるかといったことを村民自身が検討していく必要がある。
このように地域資源に付加価値を付け、魅力を高めていくことで、椎葉らしい観光・交流のかたちが形成されていくものと思われる。(III)
→オルタナティブツーリズムヘの対応
マス・ツーリズムに代わるタイプで、体験したり、学んだりすることを目的とした観光。一箇所に比較的長く滞在し、地元住民との交流も活発。(図表5−36参照)
|
|
|
図表5−35 椎葉の目指す観光・交流のメカニズム
(拡大画面:120KB) |
|
図表5−36 |
マス・ツーリズムとオルタナティブ・ツーリズムとの特性比較 |
区分 |
マス・ツーリズム |
オルタナティブ・ツーリズム |
ユーザー像 |
各種団体客、高齢者 非リピート利用 |
個人、家族、小グループ、若者 リピート利用 |
旅行形態 |
広域流動、温泉宿泊、季節選択 /ドライブ、日帰り・週末立ち寄り客 |
目的地滞在、活動メニュー中心 エコ・ツーリズム、グリーン・ツーリズム、フォーク・ツーリズム、ヘリテージ・ツーリズム |
地元との関係 |
観光客と観光地、一方通行 |
都市・農村交流、双方向 |
主導原理 |
希少性/経済原則 ニーズオリエンテッド |
余剰性/生活文化 シーズオリエンテッド |
提供体制 |
観光業の枠組み 地元観光業、観光エージェント |
地元ぐるみの枠組み 村民、農林業、観光業、行政 |
物産との連携 |
おみやげ物的位置づけ |
地元の環境・産業を学ぶ、生産を体験する、生活に活かす |
|
図表5−37 椎葉観光における市場区分
分類 |
ターゲット |
アクテビティ |
地域 |
特徴 |
マス・ツーリズム |
週末 立ち寄り型 観光 |
家族連れ、 小グループ カップル |
ドライブ、釣り バーベキュ 散策、食事 |
宮崎県 熊本県 |
日帰り型 |
広域流動 宿泊型 観光 |
団体 高齢者グループ 修学旅行 |
鶴富屋敷等の見物 紅葉狩り 物産購入 宿泊 |
大都市圏 福岡など九州大 都市圏 |
1、2泊型 3泊以上型 村外宿泊 |
オルタナティヴ
・ツーリズム |
趣味 志向型 観光 |
祭り 民俗 ラリー 陶芸等愛好家 |
祭り見物 民俗研究 カーレース 釣り イノシシ料理 |
全国ネットワーク |
目的型 宿泊型 |
体験型 観光 |
家族連れ、課外 体験学習 |
そば打ち トレッキング 焼き畑 |
九州全域の都市部 |
複数体験 リピート型 |
|
エ 基本方針
基本目標の実現に向けて、次のような方針で椎葉の観光・交流を展開していく。
(1)椎葉のホンモノを守り、活かす
「ホンモノ」とは、生きたもの、生のもの、ありのままのものといえ、本村が永い間培ってきた、自然・生活文化・歴史・人間味などを指す。これらを大切に受け継いでいくとともに、うまく活用したプログラムや情報発信を展開する。
(2)住民による観光振興「椎葉力、椎葉ファンづくり」
地域の魅力の掘り起こしや、プログラムの企画や実施など、椎葉村民が活発に都市住民と交流できるような仕組みを確立する。交流を通して椎葉ファン、サポーターを一人でも多く増やし、彼らを巻き込んで一緒に本村を盛り上げていく。
(3)既存観光資源の活用
既存の観光資源の活用方法を見直し、滞在型、体験型観光へ対応を考慮しながら、全体的に再構築する。
(4)受け入れ体制づくり
本村に合った無理のない体制を整え、体験型観光を推進していく。ガイドの養成やもてなし方講座など、村民の学習体制も充実させていく。また、来村者に快適に過ごしてもらうために、立ち寄り型観光に対応した最低限の施設整備や景観の保全も進めていく。
(5)周辺地域との連携とイメージ形成
同一イメージを持つ周辺地域と一体となった広報・宣伝活動を展開し、共同による体験ツアーの実施や、観光関連施設の相互補完を進めていく。
図表5−38 基本方針イメージ
(拡大画面:81KB) |
|
|