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序章 調査研究の概要
1 背景と目的
 朝日町(以下、本町という)は、いにしえの頃から丹南地方の中心地として栄えたところで、かなりの数の縄文・弥生土器や石器類が発掘され、弥生・古墳時代のものと思われる墳墓の古墳約200基が散在する。飛鳥・奈良時代に「越の大徳」と呼ばれる泰澄大師によって開かれた越知山・朝日観音などをはじめとする神社仏閣や、南北朝から戦国時代にかけての城跡などの史跡が多く残っている。民俗芸能としては「願人坊踊」が伝承されている一方、伝承されてはいないものの、織田信長等の武士が愛した幸若舞発祥の地としても知られている。現代においても、福井県の出先機関が置かれ、丹生郡の中心的な地域である。
 こうした歴史ある本町では、農林業生産組織を基本として、伝統的に“地域自治a”が活発であった。しかし、高度経済成長をへて家庭は経済的に豊かになり、核家族化の進展による世帯分離、高学歴化、自家用車の普及などが進んだ。特に自家用車の普及は、福井市・鯖江市・武生市のベッドタウン化という職住分離、行動範囲・交友範囲の拡大を招き、人々は職場を同じくするもの同士や気のあう仲間と交わることが多くなった。
 
 一方、1995年1月の阪神・淡路大震災以降、非営利活動団体やボランティア団体をはじめとする営利を目的としない市民の主体的な社会参加活動の存在と、その重要性が広く認められるようになった。人々の価値観が変化に富み、公的サービスに対するニーズも今後ますます多様化するなかで、個別的かつ柔軟に対応できる市民活動は、社会の新しい主体として期待されている。特に、1998年3月に制定された特定非営利活動促進法(NPO法)に基づく認証を受けたNPO法人数は、2003年2月には1万を超えようとしている。
 
 そのような中、本町は平成13年3月に基本構想と基本計画から成る「第4次朝日町総合計画」を策定し、基本計画の中で21世紀のまちづくりを実践するための主要な施策として、重点的に推進していこうとする3つの重点プロジェクト、
(1)時代をリードする産業の育成プロジェクト
(2)成熟型社会のコミュニティづくりプロジェクト
(3)あさひ文化の継承と育成プロジェクト
を設定した。
 本調査研究は、これら3つの重点プロジェクトについて、本町の実情にあった計画づくりの枠組みを明らかにすることを目的とする。
 
a 本調査研究では、後述のように、コミュニティの概念を拡大して扱うため、従来の血縁・地縁などを通じて共同体意識を持って共同生活を営む社会集団という意味でのコミュニティに対しては、“地域自治”という言葉を用いるようにした。
 
2 調査研究の視点
 3つの重点プロジェクトは、すべて住民の生活や結びつき、取り組みに関わるものばかりである。本来、それぞれのプロジェクトは、住民の生活や結びつき、取り組みだけに閉じるものばかりではない。しかるに、本調査研究においては、この共通部分に着目し、ここからそれぞれのプロジェクトの実施計画の枠組みを明らかにすることとした。
 
 また、従来「コミュニティ」という用語は、血縁・地縁などを通じて共同体意識を持って共同生活を営む社会集団として解釈されてきた。しかし、自家用車の普及、高度情報通信技術の発展による行動範囲・交友範囲の拡大、価値観の多様化などに伴い、従来のコミュニティに対する所属意識は相対的に薄らぐ傾向にあり、趣味・趣向を同じくするもの同士の集まりや、スポーツ活動団体、ボランティア団体などの存在感が高まってきていると考えられる。近年、後者の集まりについてもコミュニティと呼ぶ例が見られるようになってきたことや、「第4次朝日町総合計画」にあるようにそれぞれが『果たすまちづくりへの役割を再考しつつ、本町の実情にあった活動を促進していかなければならない』ものであることから、本調査研究では「コミュニティ」を広義の意味で、すなわち従来の意味に加え、趣味・趣向を同じくするもの同士の集まりなどを含んだ社会集団に対して用いるものとした。また、「第4次朝日町総合計画」では、前者を「地域コミュニティ」、後者を「テーマコミュニティ」と呼称しているが、混乱を避けるため、本調査研究では前者を「地域自治」、後者を「グループやサークルなどの活動」のように表記した。
 
3 調査研究の体系
 図表序−1の通りである。
図表序−1 調査研究体系図
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4 調査研究報告書の構成
第1章 調査研究の背景と朝日町の現状
 本町の置かれている状況をいっそう理解するため、全国的あるいは全県的な社会経済情勢の整理を行い、本町の地域特性を、既存の統計資料分析および地域自治活動、産業、文化活動等の実態に詳しい方々へのインタビュー調査などから明らかにした。
 
第2章 新しいコミュニティ活動等に関する住民の意向
 住民の生活、地域自治活動や、グループやサークルなどでの活動の内容・実情、住民の希望や要望などを把握することを目的として、平成14年9月下旬から10月上旬にかけて住民意向に関するアンケート調査を実施した。ここでは、その分析結果を整理した。
 
第3章 計画課題の抽出
 第1章、第2章で得られた本町の現状および住民に関する事実・考察を基に、朝日町の課題を抽出・整理した。
 
第4章 新しいコミュニティ形成と人材活用に関する考え方
 前章で抽出された課題に対して、3つの重点プロジェクト別に今後の方針を示し、先進事例を念頭に置きつつ、検討すべき施策を提案した。
 
第5章 今後の課題
 本調査研究の範囲では、十分に明らかになっていないものの、今後本町が事業を計画・実施していく上で、さらなる検討や留意すべき点などを整理した。
 
5 調査研究の体制
(1)実施主体
 本調査研究は、福井県朝日町と財団法人地方自治研究機構との共同調査として実施した。
 
(2)実施体制
 実施にあたっては有識者による調査研究委員会を設置し、検討を行うものとした。
 また、委員会の下に事務局を設け、委員会での審議・検討結果を踏まえ、本調査研究の具体的な推進に必要な事務、調査、調整を行った。
 







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