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5. 今後の課題・対応方向
 今後の課題・対応方向は、次の3つである。第一は、上述の「勤労者向けのサテライト・カレッジ」のカリキュラムについて、より実務的な内容の充実に努め、勤労者にとって魅力的な内容のものにすることである。第二は、「受講生の固定化と新規開拓」のバランスをとりつつ、より広範な市民層の新規参加の掘り起しとそれに対応したコンテンツ開発を拡充することである。第三は、都立国分寺高校や早稲田実業高校との連携・協働事業を模索していくことである。これらの点は特に国分寺市行政からの要請が強い。
 
6. 各連携・協働事業の概要
(1)市民大学講座
昭和57(1982)年から、国分寺市教育委員会と大学の共催で開催している。平成13(2001)年度に「20周年」を迎えた。
講師料は市が予算執行で確保している。
大学は、講座の企画立案、講師人選を分担。ほとんど本学の教員が担当しているが、その年度のテーマによっては外部講師の比率が高くなる。
受講生は受講料を市生涯学習推進課に納める。
現在受講生はリピーターが半分と多い。欅友会(きょゆうかい)の方が主体(全体の半分を占める)。
例年申込者は150名程度だが、平成14(2002)年度は220名と好調で、従来とは異なるたな層を堀り起こすことができた。
   →受講者にアンケートを実施しており、この回答内容に「教養的なテーマも取り上げてほしい」というものがあった。これを活かして企画立案した成果。
大学で企画した案を市に提案した際に「テーマが固い」との意見が出たこともある。市議会でもその旨の意見が出たことがある。他大学にはエクステンションセンターが活発になってきたところもあり、これらの例では一般に教養的なものが多い。
企画は、学長が任命する2年間の任期の委員からなる「生涯学習推進委員会」が立案。教員と職員から構成。講師依頼に対して、教員によっては「分野が違う」等の理由で辞退する方もいる。講師になる方を委員になっていただくと後で講師に頼みやすいということはある。
毎週土曜日開講。
 
◎今後の方針
これまで、専門と教養に分けて実施、コンピュータ講座等試行錯誤してきたが今後当面は市との枠組みで実施していく。
市民のニーズの把握については、現状では受講生に対するアンケートしか実施していないので受講していない人のニーズは把握できていない。
   
市としては「市民ニーズに応えているか」が常に評価の基本。
毎年の受講申し込みの推移をみると変動がある。少ない年はテーマが固いテーマの年。講座編成の仕方による。参加者層は分化している。これを反映した講座編成が求められる。
 
(1)欅友会(きょゆうかい)について:市民大学講座の卒業生の会
市民大学講座が開講している期間(9〜12月)以外の期間に自主的に学習計画を組んで学習している。
現在180名程度の方が参加。毎年参加者を募集。
世話人(男性が多い)がしっかりしているので実施できている事業。会場は大学が無料で貸与している。また講師の紹介も大学が相談にのりサポートしている。8割は本学の教員。
国分寺市内には企業退職後在住している方も多いのでこの層が中心メンバーになりやすいという土壌がある。
 
(2)武蔵村山キャンパス公開講座
教室、体育館とグラウンドを保有していることから、市に申し入れ、2年前から市の要請により開講。主催は本学。市が後援。土曜日開催で全2回。1回あたり100人が受講していて反応はよい。
共催方式にできないか市とは話し合いをしてきてはいるのだが。当面は現状のままで実施していくこととなっている。
市の広報では募集について広報していただいている。
 
(2)市民サテライト・カレッジ
地元駅であるJR国分寺駅前(駅ビル8階)に開講している。
平成14(2002)年6〜7月に開講。毎週火曜日19〜21時
経緯は、国分寺市から大学に打診があったこと。市民大学講座が土曜日開講のため勤労者が参加しにくく、勤労者の参加しやすい講座開設がねらい。*国分寺市生涯学習推進計画で「勤労世代向けのサテライト版」を提起した。
受講料3千円。
受講生は、勤労者が2〜30%。市民大学講座を受講した人(半分)、60歳代の人が多い。→この点は当初のねらいとはずれていた。勤労者の参加をより図るにはもっと実務的なテーマが求められているようだ。
現役世代を参加させるには(1)資格取得、(2)今の仕事に役立つかのいずれかがないと無理。
定員は70名。受講応募者は市外在住25人、市内在住31人だった。男性41人、女性は15人
出席率は60%。
広報:新聞折込7万軒に配布、ミニコミ誌(アサヒタウン)に掲載を計画したが未実施。市報、新聞2紙多摩版に記載した。
一度受講した方には次年度もDMを送付している。
 
次年度以降の企画方向
本学は経済、経営、法律、コミュニケーションの文系大学であり、そのノウハウをどう活かして、より実務的な内容の講座編成ができるかがポイントとなる。
市からは、サテライト・カレッジに関して、TACを活用し開講回数を増やして、(1)専門的なコース(法律経済の現代分析)、(2)教養的なコース(文化・芸術)に分けて開講したらどうだろうか」との意見を提出したが、最終的には市の財政事情により2コース設置は見送られた。TACを活かした内容は平成15(2003)年度の「市民大学講座」に反映させることになった。
 
(3)国分寺市委託特別科目聴講生制度
大学と市が学費を折半して負担し実施している。
定員10名。
申込者数は減少傾向であり予算確保面でも定員分確保は対応しにくくなってきている。現在は6人分の予算を計上している。発足のきっかけは市民からの要望。
聴講生の障害は、年間継続して聴講出席する要件(なかなか続かない)。
 
(4)葵友会(きゆうかい)オープンカレッジ(平成14(2002)年度で第9回目)
本学の卒業生の同窓会が主催するオープンカレッジ(都心開催)。一般参加も可能。
企画は大学が実施。
卒業生の団体では年会費を徴収しており会員の参加の魅力づけとして「卒業生の団体が集まる機会」の一環として創設した。
 
(5)特別企画講義(大学独自の取組)
専任教員が企画し、テーマにふさわしい第一線の研究者、企業人、専門家を講師として迎えて行う授業で一般の市民にも無料開放している。平成14(2002)年度は休止したが、例年、大学の独自事業として実施している。毎年市民の申し込み延べ人数は50〜60人程度。60〜70歳の仕事をしていない余裕のある層。
開講期間は4月〜1月の1年間または半年。毎年年間1、2教科。
平成14(2002)年度は代わりに以下の「特別講義」を開講。(通年毎週1回講義、半年毎週1回)
 
1. 「経営者の役割」
2. 「近現代日本女性史」
3. 「現代政治と天皇」
 
(6)高校と大学との連携・協働事業
平成13(2001)年度から、高校からの申し入れにより実施。
平成13(2001)年度から都立国分寺高校、平成14(2002)年度から上野原高校(山梨県)。上野原高校では高校の単位も認めている。
両校とも科目試験を受けて科目単位は取得できるから、本校に入学すれば履修科目に認められる。
平成13(2001)年度は、高校生に大学の講座(高校生対象)を受講してもらう事業を8月に4日間実施。70人程度の高校生が参加した。
 
(7)保護者の授業公開
実施したが実際の授業参加は7名と少数にとどまった。
 
(8)シニア研究生
大学卒業して30年経ち一線を退かれた方対象に「これまでやってきたことにテーマを決めてじっくり勉強してまとめたい」という人の大学院の受け皿。
口述試験と書類審査が試験。
平成14(2002)年度はじめて、3名が入学。学生の刺激にもなっている。
 
(9)インターンシップ
東京都の消費者センターに学生が行った事例の他、全学部で実施している。
 
(10)TAC(多摩アカデミック・コンソーシアム。5大学の協力機構。)
東京経済大学、国際基督教大学、国立音楽大学、津田塾大学、武蔵野美術大学で組織化している。
市では、どのレベルで動きがあるのかまでは把握していない。
 
(11)学術・文化・産業ネットワーク多摩
本学は参加している一方、国分寺市は参加していない。本学も大学生をボランティアとして小中学校に行かせて授業の支援をする事業を企画しており国分寺市に提案する予定。
中央大学が小中学校への学生ボランティア(授業補助)制度を作って学校に募集した。本市内7つの小学校が手を挙げたが、学生側のオファがなかった。
 
*市としても、よりメリットが分かれば今後参加に踏み出せる。
 
*(12)今後の大学と地域との連携・協働の課題
早実高校とは平成15(2003)年度、年間2〜3度の公開講座を予定。外部からの提案にまだ十分対応できないから時間をくれと要請されている。生徒に地元商店街のホームページ作成を依頼できないか市から企画提案している。
国分寺高校の場合は、進学重視の単位制高校に転換したため、地域との連携・協働事業に余力あるか市としては不安である。
東京外国語大学(府中市に立地。本市からは交通の便が悪い)から「なにかやれることはありますか」と打診があったので、「本市は東京経済大学とサテライトカレッジを実施。交通機関が便利なところで講座を設定していただければ違うでしよう」と回答させてもらった。
 
*(1)東京経済大学との連携・協働について
本市と東京経済大、欅友会(きょゆうかい)で文部科学省の「大学と自治体と市民連携」の委託事業の募集に応募したが落選した。「学術・文化・産業ネットワーク多摩」は当選したと聞いている。
大学はまだ守りの姿勢が堅い部分があり、市サイドから積極的に働きかけていきたい。本市の場合は、東京経済大学が新しい分野の学部を開拓しているので、この動きを市民大学講座に組み込んでいただければありがたいと考える。
学生の卒業論文等地域の問題を足で稼いで取り組んだ成果もあると思われる。これらの成果を情報として流してほしい。
市民向けに大学が資格取得講座をすることがどうなのかについては判断がつきかねる。
   (例)パソコン技術習得講座、簿記3級資格取得講座







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