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2. 今後の地域活性化の全国的な動向
 本節は、今後の地域活性化に関しての全国的なテーマの方向性を整理し、本研究における今後の大学等と地域の連携・協働による取組の方向性を検討する素材と指針を得る。
 本節の提起全体は、各種情報源による課題・テーマの指摘から、特に今回の日立市をめぐる「地域と大学などとの連携・協働の今後のあり方」を検討立案する上で、事業化の切り口や接点を持つと評価したものに焦点を当てて整理した。したがって、その他の活性化の課題については取り上げていない。
 なお、地域活性化の全国的なテーマ動向については、下記のテーマ分野を設定し整理した。
 
(1) 地域経済・社会活性化に関連する各種事業の育成
(2) 市民の健康づくりや医療・介護基盤の充実
(3) 子育てや子供の健全育成の推進
(4) 環境保全・省資源の生活、産業づくり
(5) 生涯にわたって参加利用できる教育・学習環境づくり
 
 以下、各分野別に主なテーマ動向について整理する。
 
(1)地域経済・社会活性化に関連する各種事業の育成
 各地の多くの産業都市は、製造業等の不振による持続的な人口の自然減と社会減を抱えており、新たな雇用機会の創出と、地域経済を再活性化する機動力としての新産業創出支援を積極的に行うことが、地域経済政策の緊急課題となっている。
 現在、わが国の地域経済振興のための中核的政策は、ア.環境資源、ヘルスケア、情報導信、ナノテクノロジー等、21世紀に高い成長性が見込まれる産業部門を戦略的・重点的に育成する政策、及び、イ.少子高齢化の進展と生活スタイルの多様化、民と公の協働化の強化に伴って成長が期待される、市民主体で行われる各種の生活支援活動の振興である。
 ア.については、既往産業の高付加価値部門への事業転換や、21世紀のキー産業となる成長分野に対する多角化支援が急務である一方、起業家精神を発揮した新技術・新経営ノウハウを基盤とするベンチャービジネス(サービスベンチャー含め)の創出や成長の支援を進めていく必要がある。
 また、イについては、特に高齢者介護やその予防事業、子育て文援事業、まちづくり、環境保全・省資源、各種の生活支援サービスに関連する分野において、地域生活課題に対応したコミュニティビジネスヘの市民意識の醸成や、参加支援方策の推進が求められている。
 また、持続的な事業性と地域社会貢献意欲の両方を追求する、市民起業というべきコミュニティビジネスも、広義の「仕事」機会創出や事業収益創出を通し、地域経済社会を活性化する効果を産み出すことが期待されている。
 
(2)市民の健康づくりや医僚・介護基盤の充実
(1)市民各層の健康意識の普及や早期発見早期対応の実施推進
 市民に向けての健康管理に関する意識喚起、検診への参加拡充等に対する支援は、地域保健事業の大きな課題の一つである。地域保健の重点対象は各地域の特性によって異なるが、一般的には、独身・中高年層や中小規模企業の従業員層、子育て時期の母親世代、受験時期の青年層等が事業の重点対象として取り上げられている。
 また、生涯を通しての一貫した健康管理と効率的な保健医療サービス面からみて、地域保健、学校保健、企業保健等、市民の健康情報等を緊密に連携させるとともに、総合的な管理体制づくりの対応も必要である。
 
(2)「栄養や食事」に関する認識を高める教育の推進
 (1)の健康意識に関連して、特に「栄養や食事」という面からみての健康意識、行動スタイルに関する情報の普及啓発や教育が急務である。特に若年層において、食事の時間、回数、栄養バランスなど、健康に関する多くの問題が生じており、次世代に対する健康づくり教育として、家庭や地域、学校教育における食生活に関する改善運動の強化が必要である。
 
(3)在宅介護、地域での相互支援体制の充実
 介護保険導入によって介護の社会化が浸透しつつあるが、介護サービスを活用しての在宅介護力を充実させていくことが必要である。
 また、介護保険の導入等によって、関連サービスの供給体制が複雑化しており、利用の仕方がわからない人が多くなっているなど、情報提供機会の増大や利用を支援する体制の充実が課題となっている。
 一方、地域の一人暮しの高齢者や高齢夫婦世帯、障害者等に対して安心で安全な地域生活を提供するため、地域住民によるボランティア、専門機関、事業者との協働による「面的な相互支援・見守り体制」を充実強化していくことが課題である。
 
(4)学生の実習の受け入れ機関の職員サイドにおける実習指導者教育の推進
 実学教育の充実や実習の重視に伴い、受入れ側における実習生に対する指導の充実が求められている。現在、特に実習成果の評価に関するノウハウが十分ではないことから、実習指導者への研修実施やマニュアルづくりが求められている。
 
(3)子育て支援や子供の健全育成の推進
 親・保護者、子供をめぐる課題は、国の厚生労働白書等にも政策課題の目標として掲げられているとおり、「子育て支援」、「子供の健全育成、児童虐待防止」、「家庭におけるDV(ドメスティックバイオレンス)の防止」等が緊急の課題である。
 現在、市民活動や公共政策で進められている方策やアプローチを大別すると、(1)子育てに関する親や保護者に対する支援、(2)子供自身に対する支援、(3)家庭への支援(親や保護者、子供に対する支援)、(4)地域における支援(個人、家庭、地域一体の支援)に分類される。
 
(1)親や保護者に対する支援
 「若い親への子育て教育(家族関係の希薄化による育児不安等への対応)」、「子育て支援者の育成」、「保護者による高い保育支援ニーズ(延長保育等)への対応」、「民間活力を活用した保育施設の充実」等の課題があげられる。各地域ではこれらの課題に関する継続的な施策推進を図るとともに、全国的な政策転換の基本線を踏まえた地域政策の新展開も必要となってきている。
 国の家庭支援や子育て支援政策においては、特に平成14(2002)年度に大きな転換がみられ、仕事を抱える母親に対する家庭との両立支援、という従来の観点からの支援策に加え、働く場、家庭の場での男女の共同参画、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)をいっそう強力に推進する施策が展開されている。
 
(2)子供自身に対する支援
 両親や保護者の就労スタイルの多様化により、家庭において子供と保護者との交流やふれあいが確保しにくい家庭の増加、遊び方を知らない子供の増加、早期発見や予防がしにくい新しいタイプの犯罪(一例をあ研げれば、携帯電話の普及によって新たに増加してきた犯罪)に巻き込まれる危険性が高まってきていること等、子供を取り巻く環境や行動の変化に関する課題への対処が必要になっている。
 特に、子供は学習や遊びを通して「ともに生きる」力をつけることから、「子供の健全育成のための場や機会づくり、居場所づくりの推進」や「子供に上手な遊び方を教える場作りの充実」、「子供の教育や遊びに地域が積極的にかかわる機会や場の充実」等が必要になっている。
 
(3)家庭への支援(親や保護者、子供に対する支援)
 家庭に対する意識の変化等を背景として、家族関係が多様化する中で離婚等も増えてきており、従来の家庭支援の範囲だけでは対応しきれない状況が発生してきている。これに対応した親や子供の生活再設計や、子供の健全育成環境の整備が求められている。
 また、児童虐待問題への対応は、全国的な近年の最大のテーマの一つであり、親等からの自己申告も増加しており、児童虐待の発生・通報に対して地域が一体となっての受入れ体制づくりが急務となっている。また、「非行や不登校等」への相談やフォローアップ対応については、市民各層や学生のボランテイア参加等(例えば、メンタルフレンド事業)の充実が要請されている。
 
(4)地域における支援(個人、家庭、地域一体の支援)
 子供の健全育成に関連する専門機関・部所は「保健」「福祉」「教育」行政の分野にまたがっていることから、保健や児童相談等の専門関連機関の役割に関する相互理解・交流や連携・協働を図ることが求められている。
 
(4)環境保全・省資源の生活、産業づくり
 このテーマ分野での目指す目標は3つである。第一の目標は、地球規模の環境問題を背景に、再利用されないゴミの発生を最大限抑制した「エコタウン」づくりを市民や企業、行政が連携・協働して進めることである。
 第二に、地域環境問題の解消のため、市民やNPO団体等による「リユース・リサイクル・リデュース(ごみの再利用、再資源化、減少)」の3Rに関する各種情報提供や意識啓発活動、事業化の取組を積極的に支援することである。
 第三に自助努方には制約がある中小規模の企業が、競争力を維持しつつ自社の「環境管理」を実施することができるよう、自治体が積極的に企業の取組を支援助長することである。
 
(5)生涯にわたって参加利用できる教育・学習環境づくり
 生涯学習は「生涯の各ライフステージに応じた課題やステージ共通の課題に適応するために学習する」ことである。大別して(1)文化教養等に関する学習、(2)キャリア再設計に役立つ職業能力向上や資格取得のための学習、仕事の実務能力向上に直接役立つ学習、(3)シニア層(60歳以上。特に定年退職後)を中心とする第二の仕事(ボランティア活動やコミュニティビジネス含めて)への参加や起業化のための学習、(4)ライフステージを横断して関わる多様な日常生活課題に対応するための学習(健康・介護、子育て、食生活、環境・消費者問題、防災・防犯等を含む)があり、いずれも市民各層の強い利用ニーズがある。
 今後、生涯学習機会の充実や推進については、市民各層の生活スタイルと直面する課題の多様化を背景とし、実生活に即したメニューの構成や内容の多様化、参加しやすい環境づくりや支援体制の充実が求められている。
 これらの生涯学習の課題・テーマについては、地域において既に実績を積み重ねてきている各種組織の参加とともに、大学等の高等教育機関等との新たな連携・協働の摸索を通し、新規開発や参加をいっそう支援し助長することが求められている。
 また、学習内容によっては、参加しやすい小学校区等の小地域エリアでの開催や、全市を対象としての広がりのある圏域設定、市民ニーズや課題に応じた多様な学習内容の開発、参加しやすいメディアツール開発を進めることなど、現状や課題に応じての対応が求められている。







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