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(6)まとめ
 自治体組織は、様々な政策を営む過程の束であると同時に、その過程を規定する構造でもある。この個別の政策過程と全体としての組織構造との連関を分析することが、本研究の主要な課題であった。
 組織内部の政策過程として4つの類型を抽出することができた。これらは、政策課題が主として、組織内部で認識されるか、それとも外部の主体によって認識され伝えられるのか、また、その主体が行政的な主体であるのか、または政治的な主体であるのかによって、区分することができた。このような情報源の性質が、他の案の作成や合意調達の障害、さらには、対応策の選択などに影響し、大きな群を形成していることが分かった。
 また、各々の地方自治体が、どのような政策課題を対応の必要な重要なものとして認識するのか、課題のフィルターについての分析も行った。この分析においては、これらの重要な課題の選択は、地方自治体の社会経済的なニーズを直接に反映するものではなく、これらに加えて組織の権力構造が左右していることが示された。自治体における課題の認識は、影響力の分布といった組織構造によって規定される社会過程なのである。
 最初に提示した、組織規模と組織能力及び政策過程の関係については、この分析を通じて、以下の3点を指摘することができる。
 第一に、組織の規模が拡大するにつれて、課題設定や対応策の策定といった前段階の過程に対する対応力が増大する。組織規模の拡大は、杜会経済的な課題を適切に把握する認識能力を拡大するとともに、これに対する解決案を作成する問題解決能力を向上させるのである。小さな自治体においては、このような地域の課題の認識や、これに対する個別の解決策の形成といった対応力が弱い。
 第二に、地方自治体の組織の規模が拡大するほど、より多くのアクターが決定に関与してくる。また、組織の規模が拡大するほど、これらのアクターの活動に対する評価が高い。組織規模の拡大は、アクターが多元化するだけではなく、個々のアクターの活動能力も拡大する。規模の拡大は、より高い活動力を持ったより多くのアクターが、政策過程へと関与する方向へと作用する。すなわち、組織規模の拡大は、組織内部の政策過程の多元化を促す。より多くのアクターが、一つの政策決定に関与し、その潜在的な多様性が増大するのである。
 しかしながら第三に、組織の規模が拡大すると、特定のアクターに影響力が集中し、不均等な分布になる傾向がある。他方、そのアクター間の能力に関しては逆に均一化するという傾向が見られる。組織規模の拡大は、決定に参与するアクターの数を増大させるにもかかわらず、この過程を律するため特定のアクターに、その多くの場合は、首長に、権力が集中する傾向がある。
 以上の命題は、次のように集約することができる。すなわち、組織の規模の拡大は、組織の対応能力を向上させる。特に、課題認識や対応策の設定という地域独自の対応を行うために不可欠な能力が向上する。さらに、組織規模の拡大は、政策過程を多元化する。より高い能力を持ったより多くのアクターが、政策過程を織りなすことになる。しかしながら、このような多元化した過程を制御するために、首長のリーダーシップが必要とされるようになる。対応能力の拡大は、組織内部のリーダーシップの確立とセットにならない限り、十分に機能しないのである。







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