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あとがき
 本年度は、まず、幼児用標準ダミーの詳細仕様を決め、3.5才用幼児ダミーを設計・試作した。つぎに、性能の異なる幾つかの試験用胴衣を、幼児ダミーと被験者に着用させ、各種の性能試験を実施し、両試験結果は近似していることが分かった。
 まず、幼児被験者による性能試験においては、幼児ダミーの寸法等に近い女子幼児4名及び男子幼児2名を選び、それぞれに、4種類の幼児用救命胴衣を着用させ、飛び込み試験、復正試験及び浮遊姿勢の測定を行った。
 試作した幼児ダミーに対しては、被験者の試験に使用したものと同じ救命胴衣を着せ、幼児ダミー各部の関節が固定とフリーの両状態で、ISOによる幼児ダミーによる救命胴衣の性能試験方法に準じて試験した。
 幼児被験者と幼児ダミーによる性能試験の結果を比較すると、浮遊姿勢、復正性能については、いずれの救命胴衣も、幼児ダミーと被験者の試験結果は、ほぼ同様の値・傾向を示した。ただし、幼児ダミーの各関節、特に頚部関節の固定状態により、試験結果に差異が生じた。一般に、浮遊姿勢、復正性能は、頭部が空を仰ぐ後屈状態では良く、逆の前屈状態では悪い。
 関節を固定しない状態での幼児ダミーによる試験は、被験者が意識して身体をコントロールしない状態又は無意識状態に近いと考えられる。意識がある場合、顔面が少しでも水面に触れると、頭部を後方に曲げ、後傾のより安全な浮遊状態になることが予想される。小型船舶用救命胴衣の場合、被験者が必ずしも無意識であることを想定していないことから、幼児ダミー頭部等の動きは一定の角度に制限してもよいと考えられるが、詳細は次年度、検討する予定である。
 
 最後に、幼児ダミーによる水中性能評価方法(案)を検討した。
 今回の幼児ダミーによる試験は、ISO 12402個人用浮遊具のパート9の幼児用ダミーを用いた場合の水中性能試験方法に準拠して実施した。その結果、被験者による水中性能試験の結果とほぼ同様の値・傾向が得られ、さらに、幼児被験者では困難な飛び込み試験等を幼児ダミーで実施することにより、救命胴衣の性能がより詳細に評価できることが分かったので、本試験方法をもとにして、幼児ダミーによる救命胴衣性能評価方法(案)を作成した。
 
 次年度は、幼児ダミーの改良策を検討の後、より小さいダミーを試作し、ダミー関節や水着着用による影響も含め、性能試験と解析を実施し、より詳細に幼児ダミーによる幼児用救命胴衣の性能評価方法につき検討する予定である。
 
委員長 長田修







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